本記事はGoogle Workspace Updatesブログ( https://workspaceupdates.googleblog.com/ )の記事を元に、日本のGoogle WorkspaceユーザーおよびGoogle Workspaceに興味がある方々に向けて、2025年12月9日に公開された情報を分かりやすく解説したものです。
金融機関をはじめ、厳格な規制の下で業務を行う組織にとって、コミュニケーションの記録・保管は避けて通れない課題です。
SEC(米国証券取引委員会)やFINRA(米国金融業規制機構)、そして日本の金融商品取引法など、多くの規制当局は、ブローカーやディーラーといった特定従業員のすべてのやり取りを記録し、改ざんできない状態で保存することを義務付けています。
これまで、Google Meetでこれらの要件を満たすためには、チャットや画面共有といった便利な機能を無効化せざるを得ないケースがありました。
「コンプライアンスを守るか、業務効率を取るか」。
この二者択一のジレンマを解消する、画期的なソリューションがついに登場しました。
2025年12月9日、Googleは「Google Meetコンプライアンス録画(Compliance Recording)」機能を発表しました。
管理者が特定のユーザー(規制対象ユーザー)に対してこの機能を有効にすると、そのユーザーが参加するすべての会議が自動的に録画・文字起こしされ、改ざん不可能な形式で安全に保管されます。
ユーザーは特別な操作を意識することなく、Google Meetの豊富なコラボレーション機能をフル活用できるようになります。
今回は、この新機能がビジネスにどのようなインパクトを与えるのか、その仕組みとメリットを詳しく解説します。
何が変わるのか?「規制対象ユーザー」の会議を全自動で記録
今回のアップデートの核心は、管理者が指定した特定のユーザー(規制対象ユーザー)が会議に参加した瞬間、システムが自動的に録画と文字起こしを開始し、それをコンプライアンス要件に準拠した場所に保存する仕組みです。
対象となるユーザー:
登録ブローカー/ディーラー
コンプライアンス担当者
その他、規制要件により監視が必要な従業員
保存の仕組み:
録画データと文字起こしデータは、Google Cloud Storage(GCS)のバケットに保存されます。
重要なのは、これが「WORM(Write Once, Read Many:一度書き込んだら変更不可)」準拠のストレージに保存される点です。適切な保持ポリシーを設定することで、データの改ざんや削除を確実に防ぎ、規制当局からの監査要求に即座に対応できる「不変の記録(Immutable records)」として機能します。
導入の3つのメリット
厳格な規制要件への完全準拠
FINRA Rule 3170やCFTC 17 CFR 1.31、MiFID IIといった国際的な金融規制はもちろん、医療や公共部門など、記録保持が求められるあらゆる業界の要件を満たすことができます。コラボレーション機能の制限解除
これまでは、記録漏れを防ぐために、チャットや画面共有機能を一律で禁止するといった運用でしのがざるを得ませんでした。
しかし、この新機能を使えば、規制対象ユーザーがどの会議に参加しても、システムが裏側で確実に記録を取ってくれます。
そのため、チャットや画面共有といったGoogle Meetの便利な機能を制限する必要がなくなり、従業員は生産性を落とすことなく業務に取り組めます。ユーザー体験を損なわない透明性
録画は自動で開始され、参加者が停止することはできません。
しかし、参加者全員に対して「コンプライアンスバッジ」が表示され、録画されていることが明確に通知されます。
これにより、プライバシーへの配慮とコンプライアンス遵守の透明性を両立しています。
機能の仕組みと注意点
自動開始と強制力:
規制対象ユーザーが会議に参加すると、録画は自動的に開始されます。参加者がこれを無効にすることはできません。視認性(バッジ):
会議画面には常に「コンプライアンスバッジ」が表示され、録画中であることを示します。データの保存先と共有:
ここが通常の録画機能と大きく異なる点です。
生成された録画や文字起こしデータは、参加者には共有されません。カレンダーの予定に添付されたり、メールで通知されたりすることもありません。これらはあくまで「コンプライアンス保管用」として、管理者が管理するストレージに直送されます。
(※ユーザーが個人的な振り返りのために録画が必要な場合は、別途手動で通常の録画を行う必要があります)制限事項:
録画は最大8時間までです。
ブレイクアウトルーム(小会議室)での会話は、規制対象ユーザーが参加していても記録されません。
音声のみの記録も可能:
管理者は、ビデオ(映像)を含めて記録するか、音声のみを記録するかを選択できます。
導入方法と対象プラン
管理者の方へ:
この機能はデフォルトではオフになっています。
管理コンソールから、規制対象となるユーザーが含まれる組織部門(OU)または構成グループに対して設定を有効にする必要があります。
対象プラン:
この機能を利用するには、以下のいずれかのアドオンライセンスが必要です。
Google Workspace Assured Controls
Assured Controls Plus
これらは、高度なセキュリティとコンプライアンス機能を提供するアドオンです。
展開スケジュール:
本機能はすでに利用可能です(Available now)。
まとめ:コンプライアンスは「足かせ」から「基盤」へ
これまで、コンプライアンス対応は「何かを禁止する」「不便になる」というイメージが強かったかもしれません。
しかし、今回のGoogle Meetコンプライアンス録画機能は、テクノロジーの力でその常識を覆しました。
「全自動で確実に記録する」という強固な基盤があるからこそ、従業員は安心してツールを使いこなし、自由にコラボレーションできるのです。
金融機関に限らず、説明責任や透明性が求められるすべての組織にとって、この機能は強力な武器となるはずです。
Assured Controlsアドオンをご利用の組織は、ぜひ導入を検討してみてください。
