いよいよ個人事業主としての一歩を踏み出す準備期間。
期待に胸を膨らませる一方で、思いがけず収入が発生して「あれ、これってどうすれば?」と戸惑っていませんか。
「開業届はまだ出していないし、開業日もこれから決めるのに、この売上は申告が必要なの?」。
そんな疑問や不安を抱えている未来の事業主のあなたへ。
この記事では、開業準備期間に発生した収入と、すでにかかっている経費の正しい処理方法を、専門的な言葉を避け、分かりやすく解説していきます。
この記事を読み終える頃には、税務に関する不安が解消され、自信を持って事業のスタートラインに立つことができるでしょう。
開業日より前の売上、申告は必要?基本の考え方
結論からお伝えすると、開業届を提出する前の売上であっても、申告は必要です。日本の所得税法では、個人の所得に対して課税されるのが原則であり、その所得を得たのが開業日の前か後かは関係ありません。収入が発生した時点で、それはあなたの所得の一部となるのです。
ここで重要になるのが、「開業日とは何か」そして「その収入がどの所得区分に該当するのか」という2つのポイントです。
税務上の「開業日」とは
まず、「開業日」はあなたが「今日から事業を始めます」と決めて、税務署に提出する「開業届」に記載する日付のことを指します。自分で自由に設定できますが、一般的には店舗をオープンした日、Webサイトを公開した日、最初の取引があった日などを設定するケースが多いです。この日付が、税務上の事業開始日として扱われます。
所得の種類:「事業所得」か「雑所得」か
次に、開業日前に得た収入がどの所得に分類されるかという問題です。これには主に「事業所得」と「雑所得」の2つの可能性があります。
- 事業所得: 農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で、対価を得て継続的に行うものから生じる所得。
- 雑所得: 他の9種類の所得(給与所得、事業所得、不動産所得など)のいずれにも当てはまらない所得。公的年金や、単発の講演料、副業の収入などがこれにあたります。
開業準備期間の収入がどちらに分類されるかは、その収入の性質によって判断されます。もし、その収入がこれから始めようとしている事業に直接関連し、今後も継続して発生する見込みのものであれば「事業所得」と見なされる可能性が高いです。一方で、事業とは直接関係のない単発の仕事で得た収入であれば「雑所得」として扱われます。次のセクションで、この判断基準についてさらに詳しく見ていきましょう。
「事業所得」と「雑所得」具体的な判断基準と違い
開業準備期間の収入を「事業所得」と「雑所得」のどちらで申告するかは、税金の計算方法、特に青色申告の適用可否に大きく影響するため非常に重要です。ここでは、具体的な判断基準とそれぞれの違いを解説します。
判断の鍵は「継続性」と「事業関連性」
税務署がどちらの所得かを判断する際の最も大きなポイントは、その活動に「事業性」があるかどうかです。事業性とは、簡単に言えば「儲けるために、繰り返し、継続的に、独立して行っているか」ということです。
- 継続性・反復性: その収入は、一度きりのものでしょうか?それとも、今後も同じような形で収入を得ていく予定がありますか?例えば、Webデザイナーが開業準備中に練習として1件だけ案件をこなした場合でも、今後デザイナーとして活動していくのであれば、それは事業の一環と見なされやすいです。
- 事業関連性: その収入は、あなたが開業しようとしている事業と直接関係がありますか?例えば、飲食店を開業する準備中に、知り合いに頼まれて1日だけ料理教室の講師をした場合の収入は、飲食店の経営という本業とは少し性質が異なるため、雑所得と判断される可能性があります。
具体例で考える所得区分
いくつか具体例を挙げてみましょう。
<事業所得になりやすいケース>
- Webライターとして開業予定の人が、準備期間中にクラウドソーシングで複数の記事作成案件を請け負った。
- ハンドメイド作家として開業予定の人が、試作品をネットショップで販売し、継続的に売上が発生した。
- コンサルタントとして独立予定の人が、開業前からクライアントと契約し、アドバイス料を受け取った。
<雑所得になりやすいケース>
- 開業資金の足しにするため、不用品をフリマアプリで売却して得た収入(生活用動産の売却は非課税ですが、営利目的の転売などは課税対象)。
- 開業準備とは全く関係のない、単発のアンケートモニターや懸賞で得た収入。
- 会社員が開業準備を進めている期間の、勤務先からの給与(これは「給与所得」です)。
最終的にどちらで申告するかは自分で判断しますが、迷った場合は税務署や税理士に相談することをおすすめします。一般的には、これから行う事業のプレオープン的な活動から得た収入は「事業所得」として申告する方が、後述する経費の扱いや青色申告の観点から有利になることが多いです。
見逃し厳禁!開業準備にかかった「開業費」の正しい処理方法
開業日前の売上について解説してきましたが、同時に重要なのが「経費」の扱いです。事業を開始するためにかかった費用は、「開業費」として資産計上し、将来の利益と相殺することができます。これにより節税効果が生まれるため、領収書やレシートは1枚も無駄にせず保管しておきましょう。
何が「開業費」になるのか?
開業費とは、「事業を開始するまでの間に、開業準備のために特別に支出する費用」を指します。具体的には、以下のようなものが該当します。
- 打ち合わせのための飲食代、交通費
- 事業に関する書籍の購入費、セミナーや研修の参加費
- 名刺やチラシ、印鑑などの作成費用
- Webサイトの制作費用(サーバー代、ドメイン代など)
- 市場調査にかかった費用
- 事務所を借りる際の礼金や仲介手数料(敷金・保証金は含まれません)
- 開業日前に購入した事務用品費や消耗品費
これらの費用が発生した日付は、開業日よりも前であることがポイントです。いつからという明確な定めはありませんが、一般常識の範囲内で、開業の数ヶ月前から1年程度前のものが認められることが多いです。
10万円以上の備品は「減価償却資産」
注意点として、パソコンやデスク、カメラなど、1つ(または1セット)あたりの取得価額が10万円以上のものは「開業費」には含められません。これらは「減価償却資産」として別途計上し、耐用年数に応じて数年間にわたって経費化(減価償却)していく必要があります。
「開業費」と「減価償却資産」、言葉を聞いただけでも少し難しく感じますよね。しかし、これらの経費を漏れなく計上することが、事業を軌道に乗せるための重要な第一歩です。領収書には何に使った費用かメモを残しておくなど、後から見返しても分かるように整理しておく工夫が大切です。こういった細かな作業も、会計ソフトなどを活用するとスムーズに進められます。
開業届の提出から確定申告まで!具体的な手続きの流れ
開業日前の売上と経費の扱いを理解したら、いよいよ具体的な手続きに進みましょう。ここでは、開業届の提出から確定申告までの流れを解説します。
開業届の提出タイミングと開業日の設定
「個人事業の開業・廃業等届出書」(通称:開業届)は、原則として事業を開始した日から1ヶ月以内に、納税地を管轄する税務署に提出します。この「事業を開始した日」=「開業日」は、あなたが自由に決めることができます。売上が初めて発生した日、事務所を契約した日、事業用のWebサイトを公開した日など、実態に合わせて設定しましょう。
もし開業日前に売上が発生している場合、その売上が事業所得に該当するなら、最初の売上が発生した日を開業日に設定するのも一つの方法です。これにより、その売上を事業所得として明確に位置づけることができます。
しかし、「開業届の書き方が分からない」「平日に税務署に行く時間がない」といった理由で、提出をためらってしまう方も少なくありません。実は、これらの手続きは非常に面倒に感じるものですが、今は便利なサービスがあります。
手軽に、そしてミスなく開業準備を進めたい方には、無料で使えるツールの活用がおすすめです。例えば、会計ソフトで有名なマネーフォワードが提供するサービスを使えば、質問に答えていくだけで簡単かつ正確に開業書類を作成できます。詳しい手順やメリットについては、こちらのガイド記事で徹底解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
【開業準備ガイド】個人事業主になるには?無料の「マネーフォワード クラウド開業届」で書類作成から提出まで完全サポート!
青色申告承認申請書も忘れずに
開業届と合わせて提出したいのが「所得税の青色申告承認申請書」です。これを提出することで、最大65万円の特別控除や、赤字を3年間繰り越せるなど、税制上の大きなメリットがある「青色申告」が可能になります。この申請書も、開業日から2ヶ月以内に提出する必要があるため、開業届と同時に提出するのが最も効率的です。
これらの書類作成は、初めての方にとっては一つの大きなハードルです。そこでおすすめしたいのが、マネーフォワード クラウド開業届です。このサービスは、開業届だけでなく、青色申告承認申請書も無料で、しかもスマホやPCから数分で作成できます。役所に出向く必要もなく、郵送や電子申請(e-Tax)で提出が完了するため、忙しい開業準備の合間に手続きを進めることができます。
確定申告で売上と経費を申告
開業した年の翌年(2月16日〜3月15日)には、確定申告が必要です。この際に、開業日前に発生した事業所得(または雑所得)と、開業費を含めた経費をまとめて申告します。
- 事業所得の場合: 確定申告書(青色申告決算書または収支内訳書)の収入金額に、開業日前の売上も含めて記載します。経費には、開業費の償却費やその他の経費を計上します。
- 雑所得の場合: 確定申告書の雑所得(業務・その他)の欄に、収入と必要経費を記載します。
※この記事は2026年2月時点の情報に基づいています。最新の税制については国税庁のWebサイト等でご確認ください。
まとめ:安心して事業をスタートするために
今回は、開業準備期間に発生した売上と経費の処理方法について解説しました。最後に、重要なポイントを振り返ってみましょう。
- 開業日前の売上も申告が必要。
- 収入の性質によって「事業所得」か「雑所得」か判断する。
- 開業準備にかかった費用は「開業費」として漏れなく計上する。
- 開業届と青色申告承認申請書は、便利なツールを使って早めに提出する。
– これから行う事業に関連する収入なら「事業所得」として申告するのが一般的。
– 領収書やレシートは必ず保管しておくことが節税の第一歩。
開業準備は、やるべきことが多く不安に感じることもあるかもしれません。特に税金に関する手続きは、複雑で難解に思えるでしょう。しかし、一つひとつのルールを正しく理解し、便利なサービスを上手に活用すれば、決して難しいものではありません。
面倒な書類作成はスマートに終わらせて、あなたの貴重な時間とエネルギーは、事業そのものを成長させるために使いましょう。そのための最適なツールとして、改めてマネーフォワード クラウド開業届の利用を強くおすすめします。無料で始められるので、まずはその手軽さを体験してみてください。あなたの事業が素晴らしいスタートを切れるよう、心から応援しています。
