プロジェクト管理ツール「Backlog」への課題登録、手作業で行っていませんか。
GitLabでマージリクエストが作成されるたびに。
あるいは、Slackで開発依頼のメッセージが投稿されるたびに。
担当者が手動でBacklogを開き、情報をコピー&ペーストして課題を作成する…。
このような定型業務は、積み重なると多くの時間を奪い、本来集中すべきコア業務の妨げになります。
もし、これらの作業をすべて自動化できるとしたら、あなたのチームの生産性はどれほど向上するでしょうか。
本記事では、iPaaS(Integration Platform as a Service)ツールである「n8n」を活用し、GitLabやSlackと連携してBacklogの課題追加を自動化する具体的なワークフローを、設定手順から詳しく解説します。
この記事を読み終える頃には、あなたのチームから面倒な手作業がなくなり、より創造的な業務に集中できる環境が整っているはずです。
なぜBacklogの課題追加自動化にn8nが最適なのか?
数ある自動化ツールの中で、なぜn8nがBacklogの課題追加自動化、特に開発チームのワークフローと相性が良いのでしょうか。その理由は、n8nが持つ「柔軟な連携性」「直感的な操作性」「優れたコストパフォーマンス」の3つの特徴に集約されます。2026年2月時点の情報を基に、その具体的なメリットを掘り下げていきましょう。
API中心の設計による高い連携性
n8nの最大の強みは、標準で数百種類以上のアプリケーションと連携できる豊富なノード(連携機能の単位)を備えている点です。しかし、本当に注目すべきは「HTTP Request」ノードの存在です。これは、APIが公開されているサービスであれば、実質的にほぼすべてのサービスと連携できることを意味します。
Backlog、GitLab、Slackは、いずれも豊富な機能を持つAPIを公開しています。これにより、n8nを介してこれらのツールの機能を自由に組み合わせることが可能になります。例えば、以下のような連携が実現できます。
- GitLabの特定リポジトリでマージリクエストが作成されたら、その情報を取得する
- 取得したマージリクエストの情報を基に、Backlogの特定プロジェクトに課題を自動で作成する
- 課題作成が完了したら、Slackの指定チャンネルに通知メッセージを投稿する
このように、各ツールのAPIをn8nがハブとなって繋ぎ合わせることで、シームレスな自動化ワークフローを構築できるのです。
ノーコードで複雑な条件分岐も実現できるビジュアルワークフロー
「API連携」と聞くと、プログラミングの専門知識が必要だと感じるかもしれません。しかし、n8nはGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)上でノードを繋ぎ合わせていくだけで、直感的にワークフローを構築できます。
さらに、n8nは単純な連携だけでなく、「IF」ノードや「Switch」ノードといったロジック系のノードが充実しており、複雑な条件分岐をノーコードで実装できます。例えば、以下のような細かい制御が可能です。
- GitLabのマージリクエストに「bug」というラベルが付いている場合のみ、Backlogの種別を「バグ」として課題を作成する
- Slackのメッセージに「至急」というキーワードが含まれていれば、Backlog課題の優先度を「高」に設定する
- 課題の担当者を、マージリクエストの作成者やSlackの投稿者に応じて動的に割り当てる
このような柔軟な条件分岐により、単なる情報連携にとどまらず、チームの運用ルールに合わせたインテリジェントな自動化が実現できます。
コストを抑えてスモールスタートできる料金体系
n8nは、クラウド版とセルフホスト版の2種類が提供されています。クラウド版は、サインアップ後すぐに利用を開始でき、インフラの管理を気にする必要がありません。一方、セルフホスト版は、自身のサーバーやクラウド環境にn8nをインストールして利用する形態で、ソースコードが公開されているため無料で始めることも可能です。
特に開発チームにとっては、検証目的で手軽に試せるセルフホスト版の存在は大きなメリットです。まずは小規模なワークフローから試し、その効果を実感した上で本格的な導入(クラウド版への移行や、より高性能なサーバーでのセルフホスト)を検討するという進め方ができます。このスモールスタートが可能なコストパフォーマンスの高さも、n8nが多くの開発者に選ばれる理由の一つです。
【実践編】GitLabのマージリクエストをトリガーにBacklog課題を自動作成する
ここからは、最も代表的なユースケースである「GitLabのマージリクエスト作成をトリガーとしたBacklog課題の自動作成」ワークフローを構築する手順を具体的に解説します。このワークフローを実装するだけで、MR作成後の課題起票漏れや、手作業による情報入力ミスを完全に撲滅できます。
ワークフローの全体像
今回構築するワークフローの流れは非常にシンプルです。
- GitLab: 開発者がマージリクエストを作成(または更新)する。
- Webhook: GitLabがそのイベント情報をn8nに送信する。
- n8n: 受け取った情報を整形し、BacklogのAPIを利用して課題を作成する。
- Backlog: MRに対応する課題が自動的に登録される。
この一連の流れを、n8nのビジュアルエディタ上で3つのノードを繋ぐだけで実現します。
Step 1: n8nでWebhookノードを設定する
まず、n8nのワークフローを開始するためのトリガーを設定します。今回は外部サービス(GitLab)からの情報を受け取るため、「Webhook」ノードを使用します。
- n8nのキャンバスで「+」ボタンをクリックし、「Webhook」ノードを追加します。
- Webhookノードの設定画面が表示されたら、「Webhook URLs」の「Test」タブにあるURLをコピーします。これがGitLabからの情報を受け取るための専用URLになります。
- 「Listen For Test Event」ボタンをクリックし、n8nをデータ待機状態にします。
次に、GitLab側でこのWebhook URLを設定します。
- GitLabの対象プロジェクトに移動し、「Settings」 > 「Webhooks」を開きます。
- 「URL」フィールドに、先ほどn8nでコピーしたテスト用URLを貼り付けます。
- 「Trigger」セクションで、「Merge request events」にチェックを入れます。
- 「Add webhook」ボタンをクリックして保存します。
- 保存後、「Test」ボタンから「Merge request events」を選択してテストイベントを送信します。
n8nの画面に戻り、「Webhook」ノードに緑色のチェックマークが付けば、GitLabからのデータ受信に成功です。ノードをクリックすると、MRのタイトル、作成者、ブランチ名など、詳細な情報がJSON形式で取得できていることを確認できます。
Step 2: HTTP RequestノードでBacklogに課題を作成する
次に、受け取った情報を使ってBacklogに課題を作成します。Backlogには専用のn8nノードもありますが、ここではより汎用性の高い「HTTP Request」ノードを使った方法を紹介します。これにより、カスタムフィールドへの値設定など、より高度な操作にも対応しやすくなります。
- Webhookノードの後に「+」ボタンから「HTTP Request」ノードを追加します。
- 以下の通りに設定を行います。
- Method: POST
- URL: `https://あなたのBacklogスペースID>.backlog.jp/api/v2/issues`
- Authentication: Generic Credential Type
- Credential for Generic Auth: 新規にBacklog API用の認証情報を作成します。
- Name: Backlog API Keyなど分かりやすい名前
- Value: `apiKey={{ $secret.backlogApiKey }}` の形式で設定。`backlogApiKey`の部分には、Backlogの個人設定で発行したAPIキーを登録します。
- Send Query Parameters: ON
- Parameters:
- Name: `apiKey`
- Value: ここに再度APIキーを入力します。(認証情報で設定したものと同じ)
- Body Content Type: Form URL Encoded
- Body Parameters: ここで課題の内容を設定します。n8nの強力な機能である「Expression」を使い、前のノード(Webhook)から受け取った値を動的に埋め込みます。
- Name: `projectId` / Value: `12345` (BacklogのプロジェクトID)
- Name: `summary` / Value (Expression): `{{ $(‘Webhook’).item.json.body.object_attributes.title }}` (MRのタイトル)
- Name: `description` / Value (Expression): `GitLab MR: {{ $(‘Webhook’).item.json.body.object_attributes.url }}` (MRのURLを含む説明文)
- Name: `issueTypeId` / Value: `54321` (Backlogの種別ID)
- Name: `priorityId` / Value: `3` (優先度ID: 中)
これで設定は完了です。ワークフローを実行すると、GitLabで新しいMRが作成されるたびに、その情報が自動的にBacklogの課題として登録されます。
【応用編】Slackの特定メッセージからBacklog課題を起票する
次に、チーム内のコミュニケーションツールであるSlackと連携し、特定のメッセージからBacklog課題を作成する、よりインタラクティブなワークフローを紹介します。これにより、「Slackで依頼されたけど、課題化を忘れていた」といったミスを防ぎ、依頼からタスク管理までをスムーズに繋げます。
ワークフローの全体像と2つのアプローチ
Slackからの課題起票には、主に2つのアプローチが考えられます。
- リアクショントリガー: 特定の絵文字(例::backlog:)がメッセージに付けられたら、そのメッセージを基に課題を作成する。
- スラッシュコマンドトリガー: `/backlog-issue` のようなカスタムコマンドを実行し、表示されるモーダル(入力フォーム)に内容を記入して課題を作成する。
今回は、より柔軟性が高く、担当者や期限などの情報も合わせて入力できる後者の「スラッシュコマンドトリガー」方式を解説します。
Step 1: Slackアプリの作成とn8nのトリガー設定
まず、Slackとn8nを連携させるための準備を行います。
- Slackアプリの作成: Slack APIサイトで新しいアプリを作成します。「From scratch」を選択し、アプリ名とワークスペースを決定します。
- n8nのトリガー設定:
- n8nで新規ワークフローを作成し、トリガーとして「Slack」ノードを追加します。
- 「Trigger On」で「Slash Command」を選択します。
- 「Credential for Slack」で、先ほど作成したSlackアプリの認証情報を設定します。(OAuth2.0を利用した接続設定が必要です)
- 認証情報が設定できたら、「Command」に任意のコマンド名(例: `backlog-issue`)を入力します。
- 表示される「Webhook URL」をコピーします。
- Slackアプリの設定:
- 作成したSlackアプリの管理画面に戻り、「Features」メニューから「Slash Commands」を選択します。
- 「Create New Command」ボタンをクリックし、n8nで設定したコマンド名と、コピーしたWebhook URL(Request URL)を入力して保存します。
- 次に、「Features」 > 「Interactivity & Shortcuts」を開き、Interactivityを「On」にします。Request URLには、スラッシュコマンドと同じn8nのWebhook URLを入力して保存します。
Step 2: n8nでモーダル表示と課題作成を実装する
ここからがn8nの真骨頂です。スラッシュコマンドが実行された後の処理を構築します。
- Slackノード(モーダル表示): トリガーの後に「Slack」ノードを追加します。
- Resource: `Message`
- Operation: `Open Modal`
- User ID (Expression): `{{ $json.body.user_id }}` (コマンドを実行したユーザーID)
- Trigger ID (Expression): `{{ $json.body.trigger_id }}`
- View (JSON): ここにモーダルのUIをJSON形式で記述します。件名、説明、担当者、期限日などの入力フィールドを定義します。
- Waitノード: Slackノードの後に「Wait」ノードを追加します。これにより、ユーザーがモーダルを送信するまでワークフローの実行を一時停止します。
- Resume: `On Webhook Call`
- 表示されるWebhook URLを、先ほどSlackアプリのInteractivityに設定したURLと同じものにします。(通常は同じURLが自動で引き継がれます)
- HTTP Requestノード(Backlog課題作成): Waitノードの後に「HTTP Request」ノードを追加します。設定内容はGitLab連携の際とほぼ同じですが、「Value」に設定する値が異なります。
- summary (Expression): `{{ $json.body.view.state.values.summary_block.summary_input.value }}` (モーダルの件名フィールドの値)
- description (Expression): `{{ $json.body.view.state.values.description_block.description_input.value }}` (モーダルの説明フィールドの値)
- Slackノード(完了通知): 最後に、課題作成が完了したことをユーザーに知らせるため、再度「Slack」ノードを追加します。
- Resource: `Message`
- Operation: `Post`
- Channel: `To User` > `User ID (Expression):` `{{ $(‘Slack Trigger’).item.json.body.user_id }}`
- Text: 「Backlogに課題を作成しました! URL: {{ $(‘HTTP Request’).item.json.body.url }}」のように、作成された課題のURLを含めて通知します。
このワークフローにより、Slackから離れることなく、数回のクリックと入力だけでBacklogの課題を正確に作成できる仕組みが完成します。
まとめ:自動化で開発チームの生産性を最大化しよう
本記事では、n8nを活用してGitLabやSlackとBacklogを連携させ、課題作成を自動化する具体的なワークフローを解説しました。これらのワークフローを導入することで、これまで手作業に費やしていた時間を削減し、開発者はコーディングや設計といった、より付加価値の高い業務に集中できるようになります。また、課題の起票漏れや転記ミスといったヒューマンエラーを防ぎ、プロジェクト管理の精度を向上させる効果も期待できます。
n8nの真価は、今回紹介した以外にも様々なツールと連携し、チーム独自の課題を解決するワークフローを無限に構築できる点にあります。n8nの機能や他のツールとの連携事例についてさらに詳しく知りたい方は、基本的な使い方から応用例までを網羅した「n8n完全ガイド記事」をぜひご覧ください。
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