格安SIM(MVNO)を使っている方なら、一度はこんな経験があるのではないでしょうか。
お昼休みにスマホでニュースを見ようとしたら、ページの読み込みがいつまでも終わらない。
動画を再生しようとしたら、くるくるとバッファリングが回り続ける。
月額料金の安さに惹かれて乗り換えたのに、肝心なときに使い物にならないというジレンマを抱えている方は少なくないはずです。
実はこの「昼間の速度低下」に対して、VPN(仮想プライベートネットワーク)のプロトコルを変更することで通信速度を改善できる可能性があるという情報があります。
今回は、筆者が実際にNordVPNを使い、複数のプロトコルを切り替えながら格安SIMの昼間の通信速度を計測した検証結果をお伝えします。
結論から言えば、劇的な改善とまではいかないものの、プロトコル選択によって体感速度に違いが出るケースがありました。
その具体的な数値と設定手順を、包み隠さずお見せします。
なぜ格安SIMは昼間に極端に遅くなるのか
MVNOの通信の仕組みと帯域の問題
格安SIM(MVNO=仮想移動体通信事業者)は、ドコモ・au・ソフトバンクといった大手キャリア(MNO)から回線を借りてサービスを提供しています。ここで重要なのは「借りている帯域には上限がある」という点です。
MVNOは、MNOとの間で「POI(相互接続点)」と呼ばれるポイントを経由して通信を行っています。このPOIの帯域幅は、MVNO各社がMNOに支払う接続料に応じて決まります。つまり、料金を安く抑えるためには、借りる帯域を必要最小限にせざるを得ないわけです。
平日の12時から13時は、会社員や学生が一斉にスマホを使い始める時間帯です。限られた帯域に大量のトラフィックが集中すると、当然ながら一人あたりの通信速度は大幅に低下します。これはMVNOの構造上、避けられない問題です。
速度低下の実態:どのくらい遅くなるのか
2026年5月時点の情報として、筆者が使用している格安SIMでの計測結果を示します。平常時(朝9時頃)に下り30〜50Mbps出ていた回線が、昼12時30分頃には下り0.5〜3Mbps程度まで低下しました。これは実に10分の1以下の速度です。
この速度ではWebページの表示に数秒〜十数秒かかり、YouTube動画は480pでもバッファリングが頻発します。LINEのメッセージは送れても、画像の送受信には時間がかかり、ビデオ通話はほぼ不可能な状態です。
通信制限(スロットリング)の可能性
単純な帯域の混雑だけでなく、一部のMVNOでは特定の通信に対する「スロットリング(意図的な速度制限)」が行われているのではないかという指摘もあります。スロットリングとは、通信事業者がトラフィックの種類を判別し、特定のサービス(動画ストリーミングやファイルダウンロードなど)の速度を意図的に制限する手法です。
VPNを使うとこのスロットリングを回避できる可能性があるのは、VPN接続中は通信内容が暗号化されるため、事業者側がトラフィックの種類を判別できなくなるからです。ただし、これはスロットリングが原因の場合に限った話であり、純粋な帯域不足が原因であればVPNでは解決しません。むしろVPNの暗号化処理による若干のオーバーヘッドで、わずかに遅くなる可能性すらあります。
では、実際にVPNを使うと昼間の速度はどう変わるのか。ここからが本題です。
NordVPNのプロトコル変更で速度は改善するのか:実測検証
検証環境と条件
今回の検証で使用した環境は以下のとおりです。
- 端末:Android 14搭載のスマートフォン(Pixel 8)
- 格安SIM:ドコモ回線系MVNO(データ通信専用プラン)
- VPN:NordVPN(最新版アプリ)
- 計測ツール:Speedtest by Ookla
- 計測時間帯:平日の12:20〜12:50(最も混雑する時間帯)
- 計測回数:各プロトコルにつき5回ずつ計測し、平均値を記録
- 接続サーバー:東京のサーバーに固定
NordVPNを選んだ理由は、複数のVPNプロトコルをアプリの設定画面から簡単に切り替えられること、そして独自開発のNordLynxプロトコルを含む豊富な選択肢があるためです。NordVPNの基本的な機能や料金プランについては「【2026年最新版】NordVPN完全ガイド:始め方から料金、メリット・デメリットまで徹底解説!」で詳しくまとめていますので、あわせて参考にしてください。
テストしたプロトコルの概要
今回テストしたのは、NordVPNで利用できる以下の3つのプロトコルです。
NordLynx(WireGuardベース)
NordVPNが独自に開発したプロトコルで、WireGuardをベースにしています。WireGuardは約4,000行という軽量なコードで構成されており、従来のプロトコルと比べて処理が高速です。NordLynxはこれにダブルNAT(ネットワークアドレス変換)技術を加えることで、速度を犠牲にせずプライバシーを保護しています。
OpenVPN(UDP / TCP)
長い歴史を持つオープンソースのVPNプロトコルです。UDP(User Datagram Protocol)モードは速度を重視し、TCP(Transmission Control Protocol)モードは信頼性を重視します。約70,000行のコードで構成されており、NordLynxと比べると動作はやや重くなりますが、安定性と互換性には定評があります。
IKEv2/IPsec
MicrosoftとCiscoが共同開発したプロトコルで、特にモバイル環境での安定性に優れています。Wi-Fiとモバイルデータの切り替え時に接続が途切れにくいという特長があります。
計測結果:プロトコル別の速度比較
VPNなし(昼12時台)
- 下り:1.8 Mbps
- 上り:4.2 Mbps
- Ping:68 ms
NordLynx接続時
- 下り:2.4 Mbps
- 上り:3.8 Mbps
- Ping:45 ms
OpenVPN(UDP)接続時
- 下り:1.5 Mbps
- 上り:3.1 Mbps
- Ping:82 ms
OpenVPN(TCP)接続時
- 下り:1.2 Mbps
- 上り:2.8 Mbps
- Ping:95 ms
IKEv2/IPsec接続時
- 下り:2.1 Mbps
- 上り:3.5 Mbps
- Ping:52 ms
検証結果から見えてきたこと
この結果で注目すべきポイントがいくつかあります。
まず、NordLynxでの接続時に下り速度がVPNなしの1.8Mbpsから2.4Mbpsへと約33%向上しました。これは、VPNの暗号化によって通信内容が判別できなくなり、何らかのトラフィック管理の影響を受けにくくなった可能性を示唆しています。NordLynxのオーバーヘッドが小さいため、暗号化による速度低下よりもスロットリング回避の恩恵が上回ったと考えられます。
一方、OpenVPN(特にTCPモード)では暗号化処理のオーバーヘッドが大きく、VPNなしの状態よりもさらに速度が低下しました。元々の帯域が限られている昼間の格安SIM環境では、重いプロトコルは逆効果になるという結果です。
IKEv2/IPsecは、NordLynxほどではないものの速度の向上が見られました。Pingの値も比較的低く抑えられており、体感的な快適さではNordLynxに次ぐ印象です。
ここで正直にお伝えしておくと、筆者の環境では「劇的な改善」とまでは言えない結果でした。NordLynxで約33%の速度向上は数値的にはそれなりに見えますが、絶対値としては1.8Mbpsが2.4Mbpsになった程度です。Webページの閲覧はやや快適になりましたが、HD動画のストリーミングが快適になるレベルには達していません。
ただし、この結果はMVNOの回線や時間帯、接続先サーバーの混雑状況によっても変わるため、環境次第ではより大きな効果が得られる可能性もあります。特にスロットリングが積極的に行われている回線では、VPN接続の効果がより顕著に現れるケースも報告されています。
NordVPNのプロトコル変更手順
実際にプロトコルを変更する手順は非常に簡単です。以下はAndroid版での手順ですが、iOS版でもほぼ同様の操作で変更できます。
手順1:NordVPNアプリを開き、左上のプロフィールアイコン(または歯車アイコン)をタップします。
手順2:「VPN接続」または「VPN protocol」の項目を探してタップします。
手順3:プロトコルの一覧が表示されるので、「NordLynx」を選択します。デフォルトでは「おすすめ(Recommended)」が選択されていることが多いですが、これを手動で変更します。
手順4:設定を閉じて、通常どおりサーバーに接続します。日本国内の利用であれば、東京または大阪のサーバーを選ぶとPing値が低く抑えられます。
注意点として、プロトコルを変更する際はいったんVPN接続を切断してから行ってください。接続中にプロトコルを変更するとエラーが発生する場合があります。
効果を最大化するための追加設定
プロトコル変更に加えて、以下の設定を調整するとさらに良い結果が得られる場合があります。
まず、NordVPNの「CyberSec」(脅威対策機能)を有効にしましょう。この機能は広告やマルウェアをブロックしてくれるため、不要なデータ通信を削減できます。帯域が限られている昼間の格安SIM環境では、広告分の通信がカットされるだけでも体感速度の改善につながります。
次に、接続するサーバーの選択です。NordVPNでは「最速のサーバー(Fastest server)」を自動選択する機能がありますが、混雑時にはあえて手動で別のサーバーを試すのも一つの手です。筆者の検証では、東京の別のサーバーに切り替えることで0.2〜0.5Mbps程度の違いが出ることもありました。
また、スプリットトンネリング(Split Tunneling)機能を活用するのもおすすめです。これは、特定のアプリだけVPN経由で通信させ、それ以外は通常の接続を使う機能です。VPNの恩恵を受けたいアプリ(ブラウザや動画アプリなど)だけをVPN経由にすることで、全体的なパフォーマンスを最適化できます。
よくある失敗とその対処法
検証中に筆者自身が遭遇した問題とその解決方法も共有しておきます。
「VPN接続がすぐに切れてしまう」という場合は、スマートフォンのバッテリー最適化設定が原因であることが多いです。Androidの設定からNordVPNアプリをバッテリー最適化の対象外にしてください。iOSの場合は「常時接続VPN」の設定を確認しましょう。
「VPN接続後にインターネットにアクセスできない」場合は、DNSの設定に問題がある可能性があります。NordVPNアプリ内の「カスタムDNS」の設定を一度リセットするか、NordVPN独自のDNSサーバーを使用する設定に戻してみてください。
「速度がVPNなしよりも遅くなった」という場合は、接続先サーバーを変更してみてください。同じ国内でもサーバーの混雑度に差があり、別のサーバーに切り替えるだけで改善することがあります。
他の対策との比較:VPN以外の選択肢
MVNO自体の乗り換え
根本的な解決策としては、昼間でも速度が安定しているMVNOへの乗り換えがあります。一般的に、サブブランド(UQモバイル、ワイモバイルなど)やオンライン専用プラン(ahamo、povo、LINEMOなど)は、MVNOと比べて昼間の速度低下が少ない傾向にあります。ただし、これらは月額料金がMVNOよりも高くなるため、コスト面でのトレードオフが生じます。
データ通信の使い方を工夫する
VPNを使わずにできる対策としては、昼間に大容量コンテンツの利用を避ける、あらかじめWi-Fi環境でコンテンツをダウンロードしておく、テキストベースのコンテンツを優先するといった方法があります。ただし、これは「使い方を我慢する」アプローチであり、根本的な解決にはなりません。
各対策のメリット・デメリット
NordVPNプロトコル変更のメリット
- 追加の通信契約なしで試せる(NordVPNの契約は必要)
- 設定変更だけで即座に効果を確認できる
- スロットリングが原因の速度低下には有効な場合がある
- プライバシー保護やセキュリティ向上という副次的なメリットもある
NordVPNプロトコル変更のデメリット
- 純粋な帯域不足が原因の場合は効果が限定的
- VPN利用によるバッテリー消費の増加
- NordVPNの月額費用がかかる(ただし2年プランであれば月額数百円程度)
- 一部のアプリやサービスでVPN接続がブロックされることがある
どんな人にVPNでの対策がおすすめか
以下に当てはまる方には、NordVPNのプロトコル変更による速度改善を試す価値があります。
- 格安SIMの月額料金の安さは手放したくないが、昼間の速度には不満がある方
- セキュリティやプライバシー対策も兼ねてVPNの導入を検討している方
- フリーWi-Fiを利用する機会が多く、VPNの必要性を感じている方
- 海外出張や旅行が多く、VPNを他の用途でも活用できる方
逆に、昼間の速度だけが問題でVPNの他の用途に興味がない方は、サブブランドやオンライン専用プランへの乗り換えを検討したほうが、結果的にシンプルでストレスの少ない解決策になるでしょう。
まとめ:格安SIMの昼間の速度低下にVPNは「条件付きで有効」
今回の検証結果をまとめると、以下の3つがポイントです。
第一に、NordVPNのNordLynxプロトコルを使用した場合、昼間の下り速度がVPNなしと比べて約33%向上しました。ただし、絶対値としてはまだ十分な速度とは言えず、環境依存の要素が大きい点に留意が必要です。
第二に、プロトコルの選択が非常に重要です。OpenVPN(特にTCP)は昼間の格安SIM環境では逆効果になりました。NordLynxまたはIKEv2/IPsecを使用することを強くおすすめします。
第三に、VPNは「スロットリング対策」としては効果が期待できますが、純粋な帯域不足による速度低下の根本的な解決にはなりません。格安SIMの月額料金の安さとVPNの多用途性を組み合わせて考えるのが、コストパフォーマンスの高いアプローチと言えます。
NordVPNには30日間の返金保証がありますので、まずは自分の環境でどの程度の効果があるかを試してみることをおすすめします。NordVPN公式サイトから申し込みが可能です。導入手順や料金の詳細については「【2026年最新版】NordVPN完全ガイド」を参照してください。
