最近、フードデリバリーに関するニュースが増えてきていますが、2017年に大手金融機関「モルガン・スタンレー」のリサーチ部門から驚きの調査結果が出てきました。
「オンラインデリバリーに対する消費者の需要は急速に伸びている。(中略)2022年までに、フードデリバリーは市場全体の11%を占めるようになる (現在は6%)」(出典元)
2017年から2022年までの約5年でアメリカのフードデリバリー市場は6%から11%へ約2倍の成長を見込んでいます。
フードデリバリーのシェアが年々拡大していることがわかる調査結果です。
アメリカの調査結果ではありますが、日本にはまったくあてはまらないと言い切れません。
以前フードデリバリーに関する記事「これからの日本のフードデリバリー市場で注目すべき4つのキーポイント」で触れましたが、現在の日本は飲食業界の中で、飲食店のレストラン売上は減少している一方で、フードデリバリーの売上は横ばいか微増しており、飲食の売上の中でフードデリバリーのシェアが伸びている状況です。
最近では、日本にも2016年に進出してきたことで話題になった「UBER eats」をはじめ、IT企業がフードデリバリーサービスに進出するケースが増えてきています。
アメリカでは、あのAmazonも「Amazon restaurants」というフードデリバリーサービスを展開。他にも、日本にも進出しているスマホ決済のIT企業Squareが「Caviar」、ソフトバンクが出資している「DoorDash」など、多くのフードデリバリーサービスが凌ぎを削っています。
日本ではUBER eats以外のサービスはまだ未上陸ですが、今後続々と日本でも同様のサービスを展開してくる、または、日本の企業が新しくフードデリバリーサービスを立ち上げるケースなど、フードデリバリーサービスは日本でも今後増えてくる可能性は高いと思っています。
レストランの料理をフードデリバリーで届けてもらうという体験はまだまだ一般的ではありませんが、これからフードデリバリーのシェアは増加していき、フードデリバリーサービスによって、自宅やオフィス、パーティー会場など、飲食店・レストラン以外でレストランの料理を食べる機会は増えていくでしょう。
今回は、私がなぜそう思うのか、フードデリバリーに関する考えについてをまとめたいと思います。
フードデリバリーの定義によって、対象範囲が様々になってしまうので、今回はレストランや飲食店の料理を宅配するサービスを対象として書きます。
日本のフードデリバリーサービスのおさらい
日本で利用ができる主要なフードデリバリーサービスを整理しておきます。
・出前館(フードデリバリーサービス最大手)
・ごちクル(大手)
・楽天デリバリー(楽天が展開)
・UBER eats(2016年に日本に進出)
UBER eats以外は、今までフードデリバリーの主流であったピザ、寿司などの宅配をはじめ、ファミレス、カレーなど大手チェーンの飲食店を中心に宅配サービスを展開しています。
一方で、UBER eatsは個人経営の飲食店の登録が多い傾向にあります。が、2017年にはマクドナルドも参加店舗になるなど、個人経営の飲食店に特化するわけではなく、幅広くカバーしています。
今後のフードデリバリーサービスのキーワード
今後のフードデリバリーサービスのキーワードは、ずばり「今まで宅配をしていなかった飲食店の料理が宅配で食べれるようになる」です。
UBER eatsが人気を集めているのも、今まで宅配をしていなかった飲食店の宅配を代行することによって、ユーザーにとって今までにない価値を提供したことにあります。
楽天デリバリーも、2018年2月に新しいサービス「楽天デリバリープレミアム」を発表し、今まで宅配をしていなかった飲食店から、牛丼の松屋や吉野家、回転寿司のスシロー、日高屋など人気チェーンのデリバリーをカバーするようになりました。楽天デリバリーとの違いがわかりにくいですが。
現時点では、フードデリバリーサービスに参加している飲食店は、従来の宅配サービス、大手のチェーン飲食店がほとんどですが、UBER eatsなどのフードデリバリーサービスが今後増えていけば、様々な飲食店がフードデリバリーサービスに参加していくことになるでしょう。
ユーザーにとっても、フードデリバリーの注文ができる飲食店が多様化して増えることは、利便性や満足度の向上に間違いなくつながります。
なぜフードデリバリーが伸びているのか
最近の人気のあるフードデリバリーサービスの特徴は、主に2つ。
①今まで宅配サービスをしていなかった飲食店、レストランの料理をデリバリーしている
②スマホから簡単に注文、配達状況もGPSでリアルタイムに把握できる
背景にあるのは、スマートフォンの技術発達と多くの人に普及している点が大きいでしょう。
スマートフォンによって、料理を届けてもらいたいユーザー、飲食店、配達員の3者を以前よりも効率よくつなぐことができるようになったからです。
ピザ、寿司、といった定番のデリバリー料理以外に、多種多様な料理がデリバリーされる供給の増加にあわせて、需要が喚起され、フードデリバリーは伸びています。
今までお店に出向かないと食べれなかった料理が、多少の時間と手数料を差し出せば、移動せずに届けてくれる。忙しい人をはじめ、ありがたく利用する人は少なくないと思います。
飲食店にとってのメリット、デメリット
フードデリバリーは、消費するユーザーにとっては、飲食の選択肢が増えるのでメリットが多いと思いますが、一方で飲食店にとってのフードデリバリーのメリット、デメリットは何があるのでしょうか。
ざっと整理すると以下の通り。
<メリット>
・売上アップ
・資源の有効活用(従業員、キッチン設備、など)
・広告宣伝(デリバリーを利用してもらうことで実店舗へ来店するかも、など)
<デメリット>
・コストアップ(サービス利用料がかかる、など)
・店舗の内装や接客サービスなどの付加価値は効果がなく、料理の味や見た目だけで他店舗と競争しないといけない
単純に考えるのであれば、フードデリバリーは実店舗の席数に左右されないので、店舗のキッチンの生産能力が対応できる限り、注文が多ければ売上は増えます。
各フードデリバリーサービスの利用料、手数料によりますが、ある程度の注文があれば、売上アップのメリットが享受できる設計になっているはずなので、コストアップのデメリットはあまり心配するものではないと思います。
フードデリバリーを導入すれば、すべての飲食店は売上が上がるのか?
一見すると、フードデリバリーの導入は、飲食店にとってもメリットが多いように思えますが、あたりまえですが、うまくいく飲食店と、うまくいかない飲食店があると思っています。
先ほど挙げたデメリットの2点目が重要なポイントで、フードデリバリーは料理の宅配のため、お客様の元へは料理しか届きません。つまり、料理だけでお客様に満足してもらう必要があり、かつ、他店舗と料理だけで勝負をしないといけないのです。
これが何を意味するのか。
あなたが飲食店のコックだとして、あなたが作る自慢の料理が、同じフードデリバリーサービスを通じて注文ができる吉野家の牛丼や、ココイチのカレー、はたまた、スシローの寿司、クアアイナのハンバーガー、などよりも、注文してくれたお客様を満足させることができ、リピーターになってくれるのか。
なかなかハードル高いですよね。
飲食店の魅力といっても様々です。
料理が美味しいお店もあれば、安くてうまいコスパが魅力のお店もあります。料理はそこそこだけど接客サービスが抜群に良いお店もあります。高級感あふれる内装とサービスでラグジュアリーな体験が魅力のお店もあるでしょう。
要は、料理だけでフードデリバリーサービスの激しい勝負で勝ち残れる飲食店は大きく売上を伸ばすことができますし、逆に、普段料理以外の要素で集客しているお店がフードデリバリーを始めてもうまくいかない可能性が高いといえます。
フードデリバリー業界で勝負しないといけないのは、今まで宅配を本業としてきたピザ、寿司、新たに参入してきた牛丼屋、中華、回転寿司など人気チェーンが相手になりますし、料理に自信のある名店や個人経営の飲食店などもライバルになるのです。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
私は飲食店(現在はケータリング専門店)を経営している身でもあるので、飲食店の販路が増えるフードデリバリーサービスの拡大の流れはとても嬉しく思う一方で、それは実店舗の飲食店で食事をする機会が減ることでもあるので複雑な心境でもあります。
フードデリバリーサービスに参入する飲食店の立場で考えると、大手チェーンと勝負するのはキツイだろうな〜と思う一方で、
フードデリバリーサービスの利用者の立場で考えると、お気に入りのレストランのメニューがお店までわざわざ行かなくても食べれるようになるのは、便利だし、選択肢が広がることはとても良い方向性だと思っています。
これから、日本のフードデリバリー市場がどう変化して行くのか、今後もウォッチしていきたいと思います。
日本のフードデリバリー市場で注目すべきポイントをまとめた記事です。
これからの日本のフードデリバリー市場で注目すべき4つのキーポイント
フードデリバリー業界の人手不足について。
今後市場拡大が注目されるフードデリバリー(宅配)業界も人手不足。活路は飲食店舗の省人化にある。
フードデリバリー市場では、フードトラックも注目です。
毎年右肩上がりに増えている「フードトラック(キッチンカー・移動販売車)」の現状と将来性を考える
以上、「これからの飲食業界はフードデリバリーが注目!アメリカでは2022年までにフードデリバリー市場規模が2倍になる?!」でした。
それではまた!