「万が一、会社が訴訟に巻き込まれたら、必要なメールやファイルを証拠としてすぐに見つけ出せるだろうか?」
「従業員の退職後、その人がやり取りしていた重要な情報が失われてしまうのではないか心配…」
「業界の規制で、特定のコミュニケーション記録を長期間保持することが義務付けられているんだけど…」
企業活動においては、日々膨大な量の電子データが生成・交換されています。
これらを適切に管理し、法的要件やコンプライアンス上の義務を果たすことは、企業規模を問わずますます重要になっています。
私のお客様からも、「データガバナンスの体制をどう整えれば良いか」「eDiscovery(電子情報開示)に備えるには?」といったご相談は後を絶ちません。
Google Workspaceには、こうした課題に対応するための専門的なツールとして「Google Vault(グーグル ヴォールト)」が用意されています(特定の有料プランに付属)。
私も、特に規制の厳しい業界のお客様や、内部統制、情報ガバナンスを重視される企業様には、Vaultの導入と適切な設定を強くお勧めしています。
これは単なるデータ保存機能ではなく、企業を守るための「備え」なのです。
この記事では、Google Vaultとは何か、その主要な機能とビジネスにおける具体的な活用法、そして導入・運用にあたってのポイントを、2025年5月現在の情報に基づき詳しく解説します。
【最重要注意点】Google Vaultの利用には、対応するGoogle Workspaceエディション(通常はBusiness Plus以上)の契約が必要です。機能や仕様は変更される可能性があります。この記事は一般的な情報提供であり、法的な助言ではありません。具体的な法的対応やコンプライアンスに関する判断は、必ず弁護士や専門家にご相談ください。最新情報はGoogle Workspaceヘルプセンター等でご確認ください。
Google Vaultとは? 「バックアップ」との決定的な違いを理解する
Google Vaultは、Google Workspace向けの情報ガバナンスおよび電子情報開示(eDiscovery)ツールです。その主な目的は、組織のデータを法的要件や社内ポリシーに基づいて「保持」し、必要に応じて「検索」「書き出し」することにあります。
ここで非常に重要なのは、Vaultは「日常的な運用バックアップ」とは目的が異なるという点です。
- バックアップ: 主にシステム障害やユーザーの誤操作によるデータ損失から「復旧(リストア)」することが目的。比較的短期間のデータを、元の状態に戻しやすく保持します。
- Google Vault: 主に法的・コンプライアンス要件に基づき、データを長期間(場合によっては無期限に)「保持(アーカイブ)」し、訴訟や監査の際に「検索・証拠開示」することが目的。個々のファイルを簡単に元の場所に戻す機能は限定的です。
この違いを理解することが、Vaultを正しく活用する第一歩です。
Vaultの5大機能徹底解説
Vaultは、主に以下の5つの強力な機能を提供します。
- データ保持 (Retention):組織のポリシーや法的要件に基づき、Gmailのメール、Googleドライブのファイル(共有ドライブ含む)、Google Chatのメッセージ、Google Meetの録画データなどを、指定した期間(例: 7年間、無期限など)自動的に保持します。ユーザーがこれらのデータを削除しても、設定された保持期間内であればVault内にはデータが残り続けます。デフォルトの保持ルールに加え、特定の組織部門や期間、キーワードなどに応じたカスタム保持ルールも設定可能です。
- 訴訟ホールド (Litigation Holds / リーガルホールド):特定の訴訟、調査、監査などに関連する可能性のあるデータを、通常の保持ルールとは独立して、無期限または指定された期間、削除・変更から保護します。特定のユーザー、組織部門、共有ドライブ、期間、キーワードなどを対象にホールドを設定できます。これにより、証拠隠滅のリスクを防ぎます。
- 高度な検索 (Search):Vaultに保持・ホールドされている広範なデータ(メール、ファイル、チャット履歴など)に対して、キーワード、日付範囲、ユーザー、組織部門、ラベル、ファイルタイプといった多様な条件を組み合わせて、高度な検索を実行できます。検索演算子(AND, OR, NOTなど)も利用可能です。
- 書き出し (Export):検索結果やホールド対象のデータを、法的手続きや監査で利用可能な標準形式(例: メールのPST/MBOX形式、ファイルのネイティブ形式、メタデータを含むXML/CSV形式など)で書き出すことができます。書き出し処理の進捗も管理でき、完了するとダウンロード可能です。
- 監査レポート (Audit Reports):Vault内で行われた全ての操作(管理者による保持ルールの変更、検索の実行、データの書き出し、ホールドの設定など)が記録されます。これにより、「誰が、いつ、どのデータに対して、何をしたか」を追跡でき、Vaultの適切な利用と説明責任を担保します。
Vaultで管理できるデータと対応プラン
対象データ(2025年5月時点の代表例):
- Gmailのメール
- Googleドライブのファイル(マイドライブ、共有ドライブ内のファイル。Googleドキュメント形式だけでなく、PDF、Officeファイルなども対象)
- Google Chatのメッセージ(履歴がオンになっているダイレクトメッセージおよびスペース内のメッセージ)
- Google Meetの録画データと関連データ(チャット、Q&A、アンケートの記録など)
- Googleグループの投稿
- Google Voiceのデータ(テキストメッセージ、ボイスメール、通話履歴など、契約プランと設定による)
※対象サービスは拡大・変更される可能性があるため、必ず最新情報をGoogleの公式ドキュメントでご確認ください。
Vaultが利用できる主なGoogle Workspaceプラン:
- Business Plus
- Enterprise Standard / Enterprise Plus
- (その他、一部の旧G Suite Businessエディションや特定の教育機関向け、非営利団体向けエディションなど。詳細は要確認)
Business StarterおよびBusiness Standardプランでは、通常Vaultは利用できません。Vaultの機能が必要な場合は、これらの上位プランへのアップグレードまたは新規契約が必要です。
【管理者向け】Vault運用開始の基本ステップ
Vaultの運用を開始するための、管理者が行うべき基本的なステップの概要です。(アクセスは vault.google.com
から)
- Vaultへのアクセス権限の確認・設定: 特権管理者以外がVaultを操作する場合、適切なVault権限(例: Vault管理者、Vault閲覧者など)を付与します。
- デフォルト保持ルールの設定: まず、組織全体に適用される基本的なデータ保持期間を設定します(例: Gmailのメールは7年間保持など)。対象サービスごとに設定可能です。
- カスタム保持ルールの設定(必要な場合): 特定の組織部門や期間、キーワードに基づいて、デフォルトルールを上書きするカスタムルールを設定します(例: 役員のメールは無期限保持、特定のプロジェクト関連ファイルは10年保持など)。
- 訴訟ホールドの作成(必要発生時): 法的な案件が発生したら、速やかに「案件」を作成し、関連するデータに対して「ホールド」を設定します。
- 定期的な監査レポートの確認: Vaultの利用状況や設定変更履歴を定期的に確認し、意図しない操作がないか監視します。
これらの設定は、組織の法務・コンプライアンス担当者と十分に協議の上、慎重に行う必要があります。設定方法の詳細は、必ずGoogle Workspaceヘルプセンターを参照してください。
Vaultを効果的に活用するための組織的ポイント
- 明確な情報ガバナンスポリシーの策定: どのようなデータを、どれくらいの期間、なぜ保持するのか(あるいは削除するのか)、組織としての方針を明確に定めます。これがVaultのルール設定の基礎となります。
- 法務・コンプライアンス部門との連携: Vaultの運用はIT部門だけでなく、法務・コンプライアンス部門との密な連携が不可欠です。
- 役割分担の明確化: 誰がVaultの管理者で、誰が検索や書き出しの権限を持つのか、役割と責任を明確にします。
- 定期的なポリシーとルールの見直し: 法規制の変更やビジネスの変化に合わせて、保持ポリシーやVaultの設定を定期的に見直しましょう。
- 関係者へのトレーニング: Vaultの検索や書き出しを行う担当者には、適切な操作トレーニングが必要です。
中小企業でもVaultは必要? その判断基準と現実的な運用
「Vaultなんて、うちのような中小企業には関係ない大企業向けの機能でしょう?」そう思われるかもしれません。しかし、私は必ずしもそうではないと考えています。
- 判断基準は「業種」と「扱う情報」、そして「将来のリスク認識」: 例えば、顧客の個人情報やマイナンバー、あるいは重要な設計情報や契約書などを日常的に扱っている場合、万が一の法的紛争や調査に備える必要性は、企業規模に関わらず存在します。特に、近年は中小企業でも従業員との労務問題や、取引先との契約トラブルに関する相談が増えていると聞きます。
- 「万が一」への備えとしての価値: Vaultは「転ばぬ先の杖」です。何も問題が起きなければ、そのありがたみは分かりにくいかもしれません。しかし、いざという時に「あの時のメールが見つからない」「削除されてしまった」では済まされない事態も起こり得ます。そのリスクを低減するための「保険」として、Vaultの価値を評価することが重要です。
- 「バックアップ」との違いを正しく理解し、過度な期待はしない: Vaultは日常的なファイル復元ツールではありません。あくまで情報ガバナンスとeDiscoveryが主目的です。「間違ってファイルを消しちゃったからVaultで戻そう」という使い方は、想定されていません。私のお客様には、Vaultの目的をしっかり説明し、運用バックアップの必要性も合わせてお伝えするようにしています。(バックアップはこちらの記事も参照)
- Business Plus以上へのアップグレード判断材料として: もし、自社にとってVaultが提供するデータ保持や検索・証拠開示機能が、潜在的なリスクやコンプライアンス要件を満たす上で「不可欠」あるいは「非常に重要」と判断できるなら、それはBusiness Plus以上のプランを選択する強い動機となり得ます。他の機能(大容量ストレージ、高度なMeet機能など)と合わせて費用対効果を検討しましょう。
私がお手伝いしたある中小企業様では、業界特有の記録保持義務に対応するため、また将来的な事業承継時の情報整理も視野に入れ、Business PlusとVaultを導入されました。当初は「使いこなせるか…」と不安そうでしたが、保持ルールをシンプルに設定し、まずは「データが守られている安心感」を得ることから始め、徐々に活用範囲を広げていらっしゃいます。
まとめ:Google Vaultで、プロアクティブな情報ガバナンスと法的リスク管理を
Google Vaultは、Google Workspaceのデータを活用して、企業のコンプライアンス遵守、eDiscovery対応、そして情報ガバナンス体制の強化を実現するための、非常に強力なツールです。
特に法的要件が厳しい業界や、内部統制を重視する企業にとっては、不可欠な機能と言えるでしょう。自社のリスクとニーズを慎重に評価し、適切なプランとVaultの活用を検討することで、将来にわたるビジネスの安定と信頼性を高めることができます。
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この記事が、あなたの会社の情報ガバナンス体制と法的リスク管理の強化、そしてGoogle Vaultの理解と活用検討の一助となれば幸いです。