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公務員でも開業届は出せる?副業禁止規定との兼ね合いと例外ケースを解説

「将来のために、少しでも収入の柱を増やしたい。」

「公務員という安定した立場は守りつつ、自分のスキルや興味を活かせることはないだろうか。」

そのように考え、副業や起業に関心を持つ公務員の方は少なくありません。

しかし、同時に「公務員は副業禁止」という大きな壁が立ちはだかります。

最近では「開業届」という言葉を耳にする機会も増えましたが、提出したら職場にバレてしまうのではないか、そもそも自分は提出して良いものなのか、と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、公務員の副業規定の基本から、例外的に認められるケース、そして「開業届」を提出するメリットや注意点について、専門的かつ分かりやすく解説します。

あなたの抱える疑問や不安を解消し、堅実に未来への一歩を踏み出すための知識がここにあります。

そもそも公務員の副業はなぜ禁止されているのか?

多くの方がご存知の通り、公務員の副業は法律で厳しく制限されています。しかし、なぜそこまで厳しく禁止されているのでしょうか。その背景には、公務員という立場の特殊性と、国民からの信頼を維持するための重要な原則が存在します。まずはその根本的な理由を理解することから始めましょう。

根拠となる法律と3つの原則

公務員の副業禁止の根拠は、主に以下の法律に定められています。

  • 国家公務員法(第103条・第104条)
  • 地方公務員法(第38条)

これらの法律では、営利企業の役員を兼ねることや、自ら営利企業を営むこと(自営業)が原則として禁止されています。この規定の背景には、守るべき3つの基本原則があります。

  1. 信用失墜行為の禁止
    公務員は、全体の奉仕者であり、その立場を利用して特定の企業の利益を図ったり、公務の品位を汚すような行動をとったりしてはなりません。副業の内容によっては、国民からの信頼を損なう可能性があるため、制限されています。
  2. 守秘義務
    職務上知り得た秘密を漏らしてはならないという義務です。副業先で、意図せずとも職務上の情報を利用してしまうリスクを防ぐ目的があります。
  3. 職務専念の義務
    勤務時間中は、自身の職務に集中しなければなりません。副業に没頭するあまり、本業のパフォーマンスが低下したり、疲労で職務に支障をきたしたりすることを防ぐための原則です。

つまり、「副業をしてお金を稼ぐこと」自体が悪いのではなく、これらの原則に違反するリスクがあるために、一律に制限がかけられているのです。逆に言えば、これらの原則に抵触しない範囲であれば、副業が認められる可能性も出てきます。

「副業」と「事業」の違い

ここで少し言葉の整理をしておきましょう。一般的に「副業」と聞くと、アルバイトやパートのような「雇用されて給与を得る」形態をイメージしがちです。法律で特に厳しく制限されているのは、このような他社に雇用されるケースや、自ら営利企業を経営するケースです。

一方で、この記事のテーマである「開業届」は、「事業」を始める際に提出する書類です。「事業」とは、継続的・独立的に行われる仕事のことを指し、不動産賃貸や農業、執筆活動などが該当します。これらによって得られる所得は「給与所得」ではなく、「事業所得」や「不動産所得」として扱われます。

公務員の副業規定を考える上では、この「雇用されて給与を得る」のか、「独立して事業を行い事業所得などを得る」のか、という違いを理解しておくことが非常に重要になります。

公務員でも許可される副業と開業届が必要なケース

原則として副業が禁止されている公務員ですが、全てのケースで一切認められないわけではありません。一定の条件下では、許可を得て副業を行うことが可能です。そして、その副業が「事業」とみなされる規模になったとき、「開業届」の提出が現実的な選択肢として浮上します。

許可されやすい副業の具体例

2025年12月時点の情報として、一般的に公務員でも許可を得やすいとされる副業には以下のようなものがあります。これらは、前述した3つの原則(信用失墜行為の禁止、守秘義務、職務専念の義務)に違反する可能性が低いと判断されやすいためです。

  • 不動産投資: 親から相続した土地や建物を貸し出すなど。ただし、一定規模を超えると事業とみなされ、許可が必要になります。
  • 農業: 実家が農家で、休日に手伝う程度であれば問題ないとされることが多いです。これも規模によります。
  • 講演・執筆活動: 職務に関連する専門知識を活かした講演や、書籍の執筆。ただし、事前に許可を得るのが一般的です。
  • 小規模な太陽光発電: 自宅の屋根に設置するレベルであれば認められやすいですが、大規模な土地で行う場合は事業と判断されます。
  • 株式やFXなどの投資: これらは「副業」ではなく「資産運用」とみなされるため、職務専念の義務に違反しない範囲であれば問題ありません。

「事業的規模」と判断される基準とは?

上記の副業も、規模が大きくなると「事業」とみなされ、話が変わってきます。特に不動産投資においては、「5棟10室基準」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、独立した家屋であれば5棟以上、アパートやマンションであれば10室以上を貸し付けている場合、「事業的規模」として扱われるという一つの目安です。

農業であれば、明らかに自家消費の範囲を超えて、継続的に市場へ出荷し利益を得ている場合などが該当します。このように「事業」として行っていると判断された場合、そこから得られる所得は「事業所得」や「不動産所得」として確定申告が必要になります。

「開業届」を出すと何が変わるのか?

確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。そして、開業届を提出する最大のメリットは、「青色申告」を選択できるようになることです。

青色申告には、以下のような税制上の大きな優遇措置があります。

  • 最大65万円の青色申告特別控除: 所得から最大65万円を差し引くことができ、所得税や住民税を大幅に節約できます。
  • 赤字の3年間繰越控除: 事業で赤字が出た場合、その赤字を翌年以降3年間にわたって黒字と相殺できます。
  • 家族への給与を経費にできる: 生計を共にする家族に支払った給与を、経費として計上できます(青色事業専従者給与)。

例えば、不動産所得が100万円あった場合、白色申告ではほぼ100万円に対して税金がかかりますが、青色申告(65万円控除)なら35万円に対しての課税で済みます。これは非常に大きな差です。

つまり、許可された範囲の副業であっても、それが事業的規模に達し、「事業所得」や「不動産所得」として申告する必要があるなら、開業届を提出して青色申告を選ぶ方が断然有利になるのです。

開業届を提出する具体的な手順と注意点

「青色申告のメリットは分かったけど、実際に開業届を出すのはハードルが高そう…」「何より、提出したら職場にバレるんじゃないの?」という不安が一番大きいのではないでしょうか。ここでは、開業届の提出に関する具体的な疑問にお答えします。

開業届の提出は「義務」なのか?

所得税法上、新たに事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき事業を開始した者は、「1月以内に」開業届を税務署に提出しなければならない、と定められています。ただし、提出しなかった場合の罰則規定は特にありません。そのため、実態としては「義務ではあるが、罰則はない」という少し曖昧な位置づけです。

しかし、前述の通り、青色申告を行うためには「青色申告承認申請書」を提出する必要があり、これは通常、開業届と一緒に提出します。節税メリットを享受したいのであれば、開業届の提出は必須と言えるでしょう。

開業届を提出すると職場にバレる?

これが最も気になる点だと思います。結論から言うと、税務署に開業届を提出したという情報が、直接職場に通知されることは原則としてありません。税務署には守秘義務があり、本人の同意なく個人情報を第三者に提供することはないからです。

では、なぜ「副業がバレる」という話が後を絶たないのでしょうか。その主な原因は「住民税」にあります。副業で所得が増えると、その分住民税の額も上がります。給与から天引きされる住民税の額が前年より不自然に増えていると、経理担当者に疑問に思われる可能性があるのです。

これを避けるため、確定申告の際に、副業分の住民税の徴収方法を「普通徴収(自分で納付)」に選択するという対策があります。これにより、副業分の住民税の通知が自宅に届くようになり、会社に知られるリスクを低減できます。(ただし、自治体によっては特別徴収を強く推奨しており、普通徴収への切り替えが難しい場合もあるため、事前にお住まいの市区町村に確認することをお勧めします。)

書類作成は難しい?無料で簡単にできる方法

いざ開業届を出そうと決めても、役所に提出する書類と聞くと、何だか難しくて面倒に感じますよね。書き方を間違えたらどうしよう、と不安になるのも当然です。

しかし、今はとても便利なサービスがあります。例えば「マネーフォワード クラウド開業届」は、会計ソフトで有名なマネーフォワードが提供する無料のサービスです。画面のガイドに従って質問に答えていくだけで、開業届はもちろん、青色申告承認申請書などの必要書類一式を自動で作成してくれます。

専門知識は一切不要で、スマホやPCから5分程度で入力は完了。完成した書類はPDFでダウンロードして印刷し、マイナンバーカードと本人確認書類のコピーを添付して郵送するだけです。これなら、忙しい仕事の合間でも、誰にも知られずに準備を進めることができます。

個人事業主としての一歩をどう踏み出せば良いか、その全体像や具体的な手続きについては、こちらのガイド記事で詳しく解説しています。開業準備のロードマップとして、ぜひご活用ください。
【開業準備ガイド】個人事業主になるには?無料の「マネーフォワード クラウド開業届」で書類作成から提出まで完全サポート!

もし副業がバレたら?リスクと対処法

適切な手続きを踏むことの重要性を強調してきましたが、万が一、許可なく副業を行っていることが発覚した場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。最悪の事態を避けるためにも、リスクと正しい対処法を理解しておくことは不可欠です。

懲戒処分の種類と内容

公務員の懲戒処分は、その内容の重さに応じて、主に以下の4段階に分かれています。

  • 戒告(かいこく): 口頭での厳重注意。将来を戒めるもので、給与などへの直接的な影響はありませんが、人事評価には記録されます。
  • 減給: 一定期間、給与の一部が減額されます。
  • 停職: 一定期間、職務に従事することができなくなり、その間の給与は支払われません。
  • 免職: 最も重い処分で、公務員としての身分を失います。

副業の内容や本業への影響度、悪質性などによって、どの処分が下されるかが決まります。すぐに免職になるケースは稀ですが、信用失墜行為につながるような副業(例えば、利害関係のある企業からの報酬など)や、職務専念義務に著しく違反していると判断された場合は、重い処分が下される可能性も十分にあります。

副業がバレる典型的なパターン

では、どのような経緯で副業が発覚するのでしょうか。前述した「住民税の変動」以外にも、以下のようなケースが考えられます。

  • 第三者からの密告: 副業について同僚や友人に話してしまったり、SNSで発信してしまったりしたことがきっかけで、内部・外部から通報されるケースです。特にSNSでの発信は、誰が見ているかわからないため非常に危険です。
  • 本業でのミスや態度の変化: 副業の疲れから、本業でミスが増えたり、遅刻や欠勤がちになったりすると、上司から事情聴取され、結果的に発覚することがあります。
  • メディアへの露出: 副業が軌道に乗り、雑誌やウェブサイトで取り上げられたことで身元が特定されるケースもあります。

これらのパターンを見ると、意図せず情報が漏れてしまうリスクが身近に潜んでいることがわかります。

最も確実なリスクヘッジは「正直な相談」

ここまでリスクについて解説してきましたが、最も確実な防御策は、許可が必要な規模の副業を始める前に、正直に職場へ相談し、然るべき許可を得ることです。もちろん、相談には勇気がいるでしょう。しかし、後ろめたさを感じながら事業を行う精神的な負担は想像以上に大きいものです。

公務員の服務規程に詳しい人事課などに、「こういう内容の副業を考えているが、規定上問題ないか」「許可を得るにはどのような手続きが必要か」と事前に相談することで、後々の大きなトラブルを防ぐことができます。正直に相談し、ルールに則って行動することが、結果的にあなた自身とあなたのキャリアを守ることに繋がるのです。

まとめ:不安を解消し、堅実な第一歩を踏み出そう

この記事では、公務員の副業と開業届をテーマに、法律上の規定から具体的な手続き、そしてリスク管理までを解説してきました。

重要なポイントをもう一度おさらいしましょう。

  • 公務員の副業は3つの原則(信用失墜行為の禁止、守秘義務、職務専念の義務)に抵触しないことが大前提。
  • 不動産投資や農業など、許可されやすい副業でも「事業的規模」になれば確定申告が必要
  • その際、開業届を提出して「青色申告」を選べば、大きな節税メリットがある。
  • 税務署に開業届を出したことが直接職場に伝わることはないが、住民税などから発覚するリスクには対策が必要。
  • 最大のリスクヘッジは、正直に職場へ相談し、ルールに則って行動すること

「将来のために何か始めたい」という気持ちは、とても尊いものです。しかし、その一歩を不安なまま踏み出すのは得策ではありません。正しい知識を身につけ、適切な手順を踏むことで、あなたは公務員という安定した基盤を守りながら、新たな可能性の扉を開くことができるのです。

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