「同人誌の売上が増えてきたけど、このままでいいのかな?」
「漫画家として本格的に活動したいけど、何から始めればいいんだろう?」
趣味で始めた創作活動が軌道に乗り始めると、多くの同人作家さんや漫画家さんがこのような疑問を抱えます。
この記事では、そんなあなたのために、趣味の創作活動を「事業」へとステップアップさせる最適なタイミングと、そのために必要な「開業届」の書き方について、わかりやすく解説していきます。
開業届と聞くと少し難しそうに感じるかもしれませんが、実はあなたの創作活動を力強く後押ししてくれる、たくさんのメリットがあるんです。
節税効果はもちろん、社会的信用度が上がることで、活動の幅がぐっと広がる可能性も秘めています。
この記事を読めば、あなたが次のステップへ進むべきかどうかの判断基準が明確になり、未来の活動への不安を解消できるはずです。
趣味から事業へ!同人作家・漫画家が開業を考えるべき3つのタイミング
創作活動の収益が少しずつ出始めると、「いつから事業として申告すべきか」という問題に直面します。明確な法律上の線引きはありませんが、税務上の観点や作家としてのキャリアプランを考えると、いくつかの重要なタイミングが存在します。ここでは、あなたが個人事業主として開業届を提出するべき3つの目安について解説します。
タイミング1:年間の「所得」が48万円を超えそうなとき
まず最も重要な基準が、税金に関わる「所得」の金額です。ここで言う所得とは、売上(頒布価格×頒布数、原稿料など)から経費(印刷代、画材費、イベント参加費など)を差し引いた金額のことを指します。
すべての納税者には「基礎控除」として48万円が認められており、所得がこの金額以下であれば所得税はかからず、確定申告の義務も原則ありません。(※2025年12月時点の情報です。住民税の申告は別途必要になる場合があります。)
しかし、所得が48万円を超えると確定申告が必要になります。このとき、あなたの活動が「事業」とみなされるかどうかが重要になります。
- 雑所得:一回限りの原稿料や、継続性のない散発的な収入。
- 事業所得:継続的・反復的に行われ、営利を目的とした活動から得られる収入。
定期的にイベントに参加して同人誌を頒布したり、継続的に仕事の依頼を受けたりしている場合、それは「事業」と見なされる可能性が非常に高いです。事業所得として申告する場合、開業届を提出し、後述する「青色申告」を行うことで、大きな節税メリットを受けられます。所得が48万円を超えそうになったら、それは間違いなく開業を検討すべき最初のサインです。
タイミング2:年間売上が1000万円を超えたとき(消費税)
少し先の話かもしれませんが、非常に重要なのが「消費税」の問題です。作家活動での課税売上が年間1000万円を超えると、その2年後から「課税事業者」となり、消費税を納める義務が発生します。(インボイス制度の登録状況によってタイミングは異なります)
例えば、2025年の売上が1000万円を超えた場合、2027年から消費税の納税義務者となります。このタイミングで慌てないためにも、売上が数百万円規模になり、1000万円という数字が現実的な目標として見えてきた段階で、税理士に相談することも含めて事業化の準備を進めておくのが賢明です。
開業届を提出し、日頃から経理をきちんと管理する癖をつけておくことで、将来的な税務処理にもスムーズに対応できるようになります。
タイミング3:「作家」として本気で活動したいと思ったとき
金額的な基準だけでなく、あなた自身の「意志」も非常に重要なタイミングです。「趣味の延長」ではなく「プロの作家」として活動していきたい、という強い気持ちが生まれたときこそ、開業の絶好機です。
開業届を提出し、「屋号」(サークル名やペンネームを屋号にできます)を持つことで、以下のようなメリットがあります。
- 社会的信用の向上:屋号付きの銀行口座を開設でき、取引先からの信頼度が上がります。金融機関からの融資(ローン)を受ける際にも有利になることがあります。
- 意識の変化:自分は個人事業主であるという自覚が芽生え、創作活動やお金の管理に対する意識がよりプロフェッショナルになります。
- 活動の幅の拡大:法人との取引がスムーズになったり、アシスタントを雇用しやすくなったりと、作家としての活動規模を拡大しやすくなります。
創作活動を一生の仕事にしたい。そう考え始めたのであれば、ぜひ前向きに開業を検討してみてください。
知らないと損!同人作家・漫画家が個人事業主になるメリット・デメリット
開業届を出すことは、単に税務署に書類を一枚提出する以上の意味を持ちます。特にクリエイターにとって、その恩恵は計り知れません。ここでは、個人事業主になることで得られる具体的なメリットと、知っておくべきデメリットを天秤にかけ、あなたがどうすべきかを判断する材料を提供します。
大きな節税効果も!開業届を出す5つのメリット
- 青色申告による最大65万円の特別控除
これが最大のメリットと言っても過言ではありません。開業届と同時に「青色申告承認申請書」を提出することで、所得から最大65万円(電子申告の場合)を差し引くことができます。例えば、課税所得が300万円の場合、所得税率が10%だとすると、単純計算で6.5万円も税金が安くなります。これは、新しい画材を買ったり、次の作品の取材旅行に行ったりできるほどのインパクトがあります。 - 赤字を3年間繰り越せる(純損失の繰越控除)
創作活動は、年によって収入の波が大きいもの。ある年は大きなヒットに恵まれたけれど、翌年は制作に集中して赤字になってしまう、ということも珍しくありません。青色申告なら、その年の赤字を翌年以降3年間にわたって黒字と相殺できます。これにより、豐作の年の税負担を軽減でき、安定した作家活動の基盤を築けます。 - 経費として認められる範囲が広がる
自宅で作業をしている場合、家賃や電気代、インターネット通信費の一部を「家事按分」という形で経費に計上できます。例えば、「仕事部屋が家全体の25%を占めている」なら、家賃の25%を経費にできるのです。これは白色申告でも可能ですが、青色申告の方が税務署からの信頼性が高く、按分比率の根拠を明確にしておけば認められやすい傾向にあります。取材のための書籍代や旅行費、仕事仲間との打ち合わせ飲食費なども、事業に関連するものであれば経費として計上できます。 - 屋号で銀行口座が開設できる
「サークル名義」や「作家名義」で事業用の銀行口座を作ることができます。これにより、プライベートの支出と事業の支出を明確に区別でき、お金の流れが非常に分かりやすくなります。確定申告の際の計算も楽になり、どんぶり勘定を防ぐことができます。 - 社会的信用度がアップする
「個人事業主」という肩書は、社会的信用の証です。クレジットカードの審査や賃貸物件の契約、各種ローンを組む際に有利に働くことがあります。また、企業と直接仕事を請け負う際に、開業していることが信頼につながり、取引がスムーズに進むケースも多いです。
知っておきたい3つのデメリット
- 帳簿付けの手間が増える
特に青色申告(65万円控除)を行う場合、「複式簿記」という正規の簿記原則に従った帳簿付けが必要になります。会計知識がないと少し難しく感じるかもしれません。しかし、现在は便利なクラウド会計ソフトが多数あり、日々の取引を入力するだけで自動的に複式簿記の帳簿を作成してくれます。 - 失業保険(雇用保険)の対象外になる
会社員を辞めて専業の作家になる場合、個人事業主は雇用されているわけではないので、失業しても失업保険を受け取ることはできません。その代わり、個人事業主は「小規模企業共済」などの制度を利用して、自分で退職金やセーフティネットを準備することになります。 - 健康保険の扶養から外れる場合がある
家族の健康保険の被扶養者になっている場合、個人事業主としての所得が増えると扶養から外れ、自分で国民健康保険に加入する必要が出てきます。扶養を抜けなければならない所得の基準は健康保険組合によって異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
これらのデメリットは、事前の準備やツールの活用で十分カバーできるものがほとんどです。メリットの大きさを考えれば、開業に踏み切る価値は十分にあると言えるでしょう。
【記入例付き】マネーフォワード クラウド開業届なら5分で完了!開業届の書き方
「よし、開業しよう!」と決心したものの、書類作成はなんだか面倒に感じますよね。しかし、心配は無用です。現在では、質問に答えていくだけで誰でも簡単に開業届が作成できる素晴らしい無料サービスがあります。ここでは、同人作家さん・漫画家さん向けの具体的な記入例を交えながら、提出までの流れを解説します。
開業届の項目別・記入例
t
開業届(正式名称:個人事業の開業・廃業等届出書)の主な項目と、作家活動に即した記入のポイントを見ていきましょう。
- 納税地:通常は住民票のある「住所地」を選択します。
- 上記以外の住所地・事業所等:自宅以外にアトリエや事務所を借りている場合は、その住所を記入します。
- 氏名・生年月日・個人番号:ご自身の情報を正確に記入します。マイナンバーが必要です。
- 職業:活動内容に合わせて「漫画家」「文筆業」「イラストレーター」「美術家」などと記入します。一つに絞れない場合は、主なものを最初に書きましょう。
- 屋号:あなたのビジネスの名前です。サークル名やペンネーム、事務所名など、好きな名前を設定できます。空欄でも構いませんが、屋号で銀行口座を作りたい場合は必ず記入しましょう。
- 所得の種類:「事業(農業)所得」の「事業所得」にチェックを入れます。
- 開業日:開業した日を記入します。日付は自由に決められますが、届出を出す日や、初めて売上が発生した日などを記載するのが一般的です.
- 事業の概要:ここが一番のポイントです。あなたの活動内容を具体的に、かつ分かりやすく記入します。
(記入例)
・漫画、イラストレーションの制作、販売
・同人誌の企画、制作、執筆、出版及び販売
・インターネットを利用したデジタルコンテンツの配信・文章、小説の執筆
- 青色申告承認申請書:「有」にチェックを入れることを強く推奨します。これを提出することで、前述の最大65万円控除などのメリットが受けられます。開業届と同時に提出するのが最も簡単で確実です。
最強の味方!「マネーフォワード クラウド開業届」がおすすめな理由
これらの項目を一つ一つ手書きで埋めていくのは、正直なところ少し骨が折れます。間違えてしまった場合、訂正も面倒です。
そこでおすすめしたいのが、マネーフォワード クラウド開業届です。このサービスは、なんと完全無料で利用でき、以下のような圧倒的なメリットがあります。
- 知識ゼロでもOK:画面の質問に答えていくだけで、必要な情報が自動的に入力され、完璧な開業届が完成します。
- 同時提出が楽々:節税の鍵となる「青色申告承認申請書」も、開業届と同時に作成できます。出し忘れの心配がありません。
- 提出までを完全サポート:作成した書類はPDFでダウンロード可能。マイナンバーカードがあれば電子申請もできますし、印刷して郵送する場合も、宛名ラベルまで自動で生成してくれるので、封筒に貼ってポストに入れるだけです。
「何から手をつければいいか分からない」という方でも、このツールを使えば5分から10分程度で全ての書類作成が完了します。個人事業主になるための第一歩として、これ以上ないほど心強いパートナーです。
マネーフォワード クラウド開業届の詳しい使い方や、個人事業主になるための準備全体を網羅した完全ガイドは、こちらの記事「【開業準備ガイド】個人事業主になるには?無料の「マネーフォワード クラウド開業届」で書類作成から提出まで完全サポート!」で詳しく解説しています。ぜひ合わせてご覧ください。
まとめ:開業届は、創作活動を加速させる翼になる
今回は、同人作家・漫画家さんが趣味から事業へとステップアップするタイミングと、その際に必要な開業届の提出について解説しました。
所得が48万円を超えそうなとき、そして何より「作家として生きていく」と心に決めたときが、開業のベストタイミングです。
開業届を提出し、青色申告を始めることで、最大65万円の所得控除や赤字の繰越など、金銭的なメリットを享受できるだけでなく、屋号での活動による信用の向上という、創作活動の幅を広げるための大きな武器を手に入れることができます。
「手続きが難しそう」という不安は、便利な無料ツールが解決してくれます。まずは一歩、踏み出してみませんか?
ご紹介したマネーフォワード クラウド開業届を使えば、驚くほど簡単に、あなたの新しいスタートに必要な書類を準備できます。まずは無料で書類作成を試してみて、事業主になる自分を具体的にイメージしてみるのも良いでしょう。
この記事が、あなたの創作活動がさらに飛躍するための一助となれば幸いです。応援しています!
