業務で利用するSaaS(Software as a Service)が増えるたびに、IDとパスワードの管理が煩雑になっていませんか。
社員は複数の認証情報を覚えなければならず、IT管理者は入退社時のアカウント発行・停止作業に追われる。
こうした課題は、多くの企業が日常的に利用しているGoogle Workspaceを活用することで、スマートに解決できるかもしれません。
それが「シングルサインオン(SSO)」の導入です。
この記事では、Google WorkspaceをIdP(IDプロバイダー)として利用し、様々なSaaSアプリケーションへのSSOを実現するための具体的な方法と、そのメリットを詳しく解説します。
セキュリティを強化し、従業員の生産性を向上させる第一歩を、この記事から始めましょう。
そもそもシングルサインオン(SSO)とは?その重要性とメリット
シングルサインオン(Single Sign-On、SSO)とは、一度の認証で、連携している複数のアプリケーションやサービスにログインできるようにする仕組みです。ユーザーは、一つのIDとパスワード(または多要素認証)で認証を済ませれば、その後は個別のサービスで再度ログイン操作を行う必要がなくなります。
この仕組みは、認証情報を管理する「IdP(Identity Provider)」と、IdPの認証情報を信頼してログインを許可する「SP(Service Provider)」の2つの要素で成り立っています。今回のケースでは、Google WorkspaceがIdPの役割を担い、SlackやSalesforceといったSaaSがSPとなります。
現代のビジネス環境では、SaaSの利用が当たり前になりました。マーケティング、営業、開発、経理など、部門ごとに特化したツールを導入することで業務効率は向上しますが、その一方で管理すべきアカウントは増え続けます。この「SaaSサイロ化」が、セキュリティリスクと管理コストの増大という新たな課題を生んでいるのです。SSOは、この課題に対する最も効果的な解決策の一つとして、その重要性を増しています。
SSOがもたらす3つの主要なメリット
SSOを導入することで、企業は主に3つの大きなメリットを享受できます。
- ユーザーの利便性向上: 従業員は、複数のパスワードを記憶・管理する負担から解放されます。サービスごとに異なるパスワードを使い回すといった危険な行為も減り、ログインがスムーズになることで、本来の業務に集中できる時間が増えます。
- 管理者の負担軽減: IT管理者は、従業員の入社、異動、退職に伴うアカウント管理を一元化できます。IdPであるGoogle Workspace上でアカウントを無効にするだけで、連携している全てのSaaSへのアクセス権を即座に停止できるため、セキュリティインシデントのリスクを大幅に低減できます。
- セキュリティの強化: SSOは、認証の入り口を一つに集約します。これにより、Google Workspaceが提供する強固なセキュリティ機能(多要素認証、不審なログインの検知、パスワードポリシーの強制など)を、連携する全てのSaaSに適用できるようになります。これは、個々のサービスに依存したセキュリティ対策よりもはるかに高いレベルの保護を実現します。
これらのメリットを最大限に引き出すためには、信頼性が高く、機能豊富なIdPを選ぶことが極めて重要です。
Google WorkspaceがIdPとして選ばれる理由
数あるIdPソリューションの中でも、なぜ多くの企業がGoogle Workspaceを選ぶのでしょうか。その理由は、単にSSO機能があるというだけではありません。多くの企業にとって、Google Workspaceは既にビジネスの中心にあるツールであり、それを基盤にすることで、追加コストや学習コストを抑えながら、スムーズに高度なセキュリティ環境を構築できるからです。
導入済みのインフラを最大限に活用
最大の理由は、多くの企業が既にGmail、Googleドライブ、Googleカレンダーなどを日常的に利用している点です。つまり、従業員はGoogleアカウントでのログインに慣れており、管理者はGoogle Workspaceの管理コンソールでのユーザー管理に習熟しています。この既存のインフラと運用フローをそのまま活かせるため、SSO導入のハードルが劇的に下がります。新たなIdP専用サービスを契約する場合と比較して、コスト面でも運用面でも圧倒的に有利です。
Googleの堅牢なセキュリティ基盤
Google WorkspaceをIdPに設定するということは、Googleが誇る世界トップクラスのセキュリティ基盤の上に自社の認証システムを構築することを意味します。具体的には、以下のような高度なセキュリティ機能を活用できます。
- 多要素認証(MFA): スマートフォンへのプッシュ通知、セキュリティキー、認証システムアプリなど、多様な認証方法を必須化できます。
- コンテキストアウェアアクセス: ユーザーの場所、デバイスのセキュリティ状態、IPアドレスなどに基づいてアクセスを動的に制御し、リスクの高い状況からのアクセスをブロックします。
- 高度な保護機能プログラム: フィッシングなどの標的型攻撃のリスクが高いユーザー(経営層など)に対して、最高レベルの保護を適用できます。
特に、機密情報を多く扱う企業であれば、データの保持と電子情報開示(eDiscovery)が可能な「Vault」や、高度な端末管理機能が含まれるBusiness Plus以上のプランを選択することで、コンプライアンス要件にも対応した強固なガバナンス体制を築けます。
豊富な対応アプリと柔軟な連携方式
Google Workspaceは、数百もの主要なSaaSアプリケーションと「事前統合」されています。Slack、Zoom、Asana、Salesforceといった定番ツールであれば、管理コンソールのカタログから選んで数クリックするだけで、簡単にSSOの設定が完了します。
また、カタログにない独自の社内システムやマイナーなSaaSであっても、「SAML 2.0」や「OpenID Connect (OIDC)」といった標準プロトコルに対応していれば、「カスタムアプリ」として柔軟に連携させることが可能です。この拡張性の高さが、Google WorkspaceをIdPとして長期的に活用していく上での大きな強みとなります。
【実践】Google WorkspaceでSSOを設定する基本ステップ
ここからは、実際にGoogle Workspaceの管理コンソールを使ってSSOを設定する基本的な手順を解説します。2026年3月時点の情報に基づいています。今回は、事前統合済みのアプリと、カスタムSAMLアプリの2パターンを見ていきましょう。
注意: 設定作業は、影響範囲を理解している管理者のみが行ってください。最初は特定のテストユーザーのみに設定を適用し、動作確認が完了してから全社展開することを強く推奨します。
ステップ1: 管理コンソールでの事前準備
まず、Google Workspaceの管理者アカウントで「Google管理コンソール」にログインします。左側のメニューから [アプリ] > [ウェブアプリとモバイルアプリ] を選択します。ここが、SaaSアプリとの連携設定を行う中心的な場所となります。
ステップ2: 事前統合済みSaaSアプリの追加(例: Slack)
- [アプリを追加] をクリックし、[SAML アプリを検索] を選択します。
- 検索バーに「Slack」と入力し、表示されたアプリをクリックします。
- IdP情報(SSO の URL、エンティティ ID)が表示されます。この画面を開いたまま、別タブでSlackの管理画面を開きます。
- Slack側でSSO設定画面に移動し、Googleから提供されたIdP情報をコピー&ペーストします。逆に、Slack側で表示されるACS URLなどの情報をGoogleの画面に入力する必要がある場合もあります。
- 両方の設定が完了したら、Googleの管理コンソールに戻り、ユーザーへのアクセス権を設定します。[組織部門] や [グループ] 単位で「オン」にすることで、特定の従業員だけがSSOを利用できるように制御できます。
多くの事前統合アプリでは、詳細な設定ガイドが用意されているため、それに従うことでスムーズに設定を進められます。
ステップ3: カスタムSAMLアプリの設定
事前統合されていないアプリケーションを連携させる場合は、手動で設定を行います。
- [アプリを追加] をクリックし、[カスタム SAML アプリを追加] を選択します。
- アプリ名(例: 社内経費精算システム)を入力し、[続行] をクリックします。
- [IdP メタデータをダウンロード] するか、表示された「SSO の URL」「エンティティ ID」をコピーし、連携したいSaaS(SP)のSAML設定画面にこれらの情報を入力します。証明書もダウンロードしてアップロードします。
- 次に、SaaS側から提供される「ACS URL(Assertion Consumer Service URL)」と「エンティティ ID(Audience URI)」を取得し、Googleのカスタムアプリ設定画面の対応するフィールドに入力します。
- [続行] をクリックし、属性マッピング(例: GoogleのメールアドレスをSaaSのユーザー名として使用する設定)を行い、最後にユーザーへのアクセス権を設定して完了です。
カスタムアプリの設定は少し複雑ですが、この機能により、ほとんどのSAML対応サービスと連携できるため、非常に強力です。
SSO導入を成功させるためのポイントと注意点
技術的な設定を完了させるだけでは、SSO導入が成功したとは言えません。その効果を最大限に引き出し、安全に運用するためには、いくつかの重要なポイントがあります。
社内への丁寧な周知とトレーニング
従業員にとって、ログイン方法の変更は日々の業務に直接影響します。なぜSSOを導入するのか(利便性向上とセキュリティ強化)、具体的に何がどう変わるのかを事前に丁寧に説明しましょう。簡単なマニュアルを用意したり、説明会を実施したりすることで、導入後の問い合わせを減らし、スムーズな移行を促進できます。
段階的な導入(スモールスタート)
全社・全部門で一斉に導入するのではなく、まずはIT部門や特定のチームなど、小規模な範囲で試験的に導入することを推奨します。そこで発生した問題点や改善点を洗い出し、運用を安定させてから対象範囲を広げていくことで、大規模なトラブルを未然に防ぐことができます。
適切な権限管理と棚卸し
SSOは認証を楽にしますが、誰がどのアプリにアクセスできるかという「認可」の管理は別途重要です。Google Workspaceの「グループ」機能を活用し、「営業部グループ」「開発部グループ」のように役割ごとにアクセス権を付与しましょう。これにより、異動や退職時の権限変更が容易になり、不要なアクセス権を与え続けるリスクをなくせます。
SSO導入は、既存のGoogle Workspaceの運用を見直す絶好の機会でもあります。例えば、これから本格的にGoogle Workspaceの活用を進める、あるいはセキュリティ強化のためにプランのアップグレードを検討している企業も多いでしょう。その際、少しでもコストを抑えたいと考えるのは当然です。実は、Google Workspaceには新規契約やプラン変更時に利用できる割引プロモーションコードが存在します。詳細は以下の記事で詳しく解説していますので、導入・更新を検討中の方はぜひご確認ください。
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まとめ
本記事では、Google WorkspaceをIdPとして活用し、SaaSへのシングルサインオン(SSO)を導入する方法とそのメリットについて解説しました。SSOの導入は、もはや大企業だけのものではありません。むしろ、限られたリソースで高い生産性とセキュリティを両立させたい中小企業にこそ、大きな恩恵をもたらします。
要点をまとめると以下の通りです。
- SSOは、ユーザーの利便性向上、管理者の負担軽減、そしてセキュリティ強化を同時に実現する。
- 多くの企業が導入済みのGoogle WorkspaceをIdPとして活用すれば、低コストかつスムーズにSSOを導入できる。
- 事前統合アプリとカスタムSAMLアプリ設定を使い分けることで、ほとんどのSaaSと連携可能。
- 導入成功には、技術的な設定だけでなく、社内への周知や段階的な展開が不可欠。
増え続けるアカウント管理に悩まされているなら、まずは社内で利用しているSaaSの中から一つ選び、Google WorkspaceとのSSO連携を試してみてはいかがでしょうか。その一歩が、会社全体のデジタルトランスフォーメーションを加速させるきっかけになるはずです。
そして、Google Workspaceの導入やアップグレードでコストメリットを最大限に享受したい方は、プロモーションコードの活用も忘れずに検討しましょう。
