この情報は、2025年6月9日のGoogle Workspace アップデートブログからのものです。
ビジネスにおけるコミュニケーションにおいて、動画の力はますます重要になっています。
社内研修、製品デモ、新しい取り組みの発表など、動画は情報をより魅力的で分かりやすく伝えるための強力なツールです。
しかし、高品質な動画を制作するには、専門的な知識、高価な機材、そして何より多くの時間とコストが必要でした。
特に、人物が登場し、メッセージを語る動画を制作するのは、多くの企業にとって大きなハードルでした。
そんな動画制作の常識を覆す、画期的なアップデートが発表されました。
Googleの新しい動画制作ツール「Google Vids」内で、AIがビデオクリップを自動生成する機能が、さらに進化しました。
先月発表された「Veo 2」モデルに続き、この度、より高品質で、かつリアルな音声付きの8秒間のビデオクリップを生成できる最新モデル「Veo 3」が登場しました!
これにより、あなたが入力したテキスト(プロンプト)に基づいて、AIがまるで俳優のようにメッセージを語る人物の動画を、わずか数秒で作り出すことが可能になります。
新機能の概要:テキストプロンプトから「話す動画」を生成するVeo 3
今回のアップデートは、Google VidsのAIビデオ生成能力を新たな次元へと引き上げるものです。これまで、Veo 2では高品質な「無音」のビデオクリップを生成できましたが、最新のVeo 3では、その映像にリアルな音声とセリフが加わります。
利用方法は非常にシンプルです:
Google Vidsを開きます。
Vidsエディタの右サイドバーにある「動画を生成」アイコンに移動します。
モデルとして「Veo 3」を選択します。
テキストボックスに、生成したい動画のシナリオやセリフを含むプロンプトを入力し、「作成」をクリックします。
プレビューが表示され、「挿入」を選択すると、生成されたビデオクリップがあなたのVidsプロジェクトに直接追加されます。
具体的な活用例とプロンプトのサンプル:
安全研修ビデオ:
プロンプト例: 「鮮やかな緑色のネオンカラーの安全ベストを黒いTシャツの上に着た作業員が、企業の安全研修ビデオのイントロを話している。彼の作業用トラックは、住宅街の路肩に停まっている。彼はカメラに直接向かって、『フィールド技術者トレーニングへようこそ。このコースでは、当社のネットワークインフラで安全に作業するためのスキルを身につけていただきます。』と語りかける。」
製品デモ:
プロンプト例: 「山の夕暮れのキャンプ場で、ソーラー懐中電灯を持った広報担当者が、『こんにちは。シンバル・アウトドア・グッズの新しいソーラー懐中電灯でよくある問題を解決する方法をご紹介します。』と話す。」
社員向けアナウンス:
プロンプト例: 「オフィスの敷地内を歩く同僚たちが、シンバル銀行が社員向けに開始する新しい教育費補助制度について、いかに興奮しているかを語り合っている。」
これらの例が示すように、Veo 3は単に映像を生成するだけでなく、プロンプトに含まれるセリフを自然な音声で語る人物を生成し、背景や状況もリアルに再現します。
生成される動画の仕様:
長さ: 8秒
解像度: 720p
フレームレート: 24fps
アスペクト比: 16:9(横長)
日本のビジネスシーンにもたらすインパクト:動画制作の常識が変わる
この「話す動画」をAIが自動生成する機能は、日本の企業や組織におけるコミュニケーションとコンテンツ制作のあり方を根本から変える可能性を秘めています。
1. 圧倒的なコストと時間の削減
これまで、人物が登場する動画を制作するには、俳優や社員への出演依頼、撮影場所の確保、撮影クルーの手配、ナレーターへの依頼、編集作業など、多大なコストと時間が必要でした。Veo 3は、これらのプロセスを「テキスト入力」だけで完結させます。
人件費・制作費の削減: 俳優やナレーターが不要になるため、制作コストを劇的に削減できます。
制作期間の短縮: アイデアが浮かんでから動画が完成するまでの時間が、数日から数時間、場合によっては数分にまで短縮されます。これにより、よりタイムリーな情報発信が可能になります。
2. 社内コミュニケーションの活性化と質の向上
経営層からのメッセージ: CEOや役員からのメッセージを、Veo 3で生成したバーチャルなスポークスパーソンに語らせることで、より親しみやすく、一貫性のあるトーンで全社に伝えることができます。
HR(人事)からのお知らせ: 新しい福利厚生制度の案内や、社内規定の変更点などを、分かりやすい短い動画で説明することで、社員の理解度を高めます。
部署間の情報共有: 新しい業務プロセスの紹介や、プロジェクトの進捗報告などを、担当者が顔出しすることなく、簡潔な動画で共有できます。
3. マーケティング・営業活動の強化
SNS向けショート動画の量産: 新製品の特長やキャンペーン情報を、様々なパターンの短い動画で素早く生成し、SNSで展開することで、マーケティングの試行錯誤を加速できます。
FAQコンテンツの動画化: 「よくある質問」に対して、AIが生成した人物が回答する動画シリーズを作成することで、顧客サポートの効率化と顧客満足度の向上に繋がります。
営業資料のパーソナライズ: 特定の顧客向けの提案に、その顧客の業界や課題に合わせた短い紹介動画を添えるといった、パーソナライズされた営業活動が可能になります。
4. 研修・教育コンテンツの革新
eラーニング教材の作成: 専門的な知識やソフトウェアの操作方法などを、Veo 3で生成した講師が説明する短い動画モジュールを組み合わせることで、低コストで効果的なeラーニングコンテンツを構築できます。
多言語対応の可能性: 将来的に多言語対応が進めば、同じ内容の研修ビデオを、異なる言語を話すAI講師で簡単に作成できるようになり、グローバルな人材育成に貢献します。
留意事項と現在の制約:日本語対応への期待
この画期的な機能ですが、現時点ではいくつかの重要な留意事項があります。
AI機能は現在英語のみ対応: 最も重要な点として、現時点ではVidsのAI機能(「Help me create」や、このVeo 3による動画生成など)は英語のみに対応しています。日本語のプロンプトを入力したり、日本語を話す動画を生成したりすることはできません。日本のユーザーにとってはこれが最大の制約となりますが、GoogleのAI技術の急速な進化を考えれば、将来的な日本語対応への期待が高まります。
音声なしでの利用も可能: 生成された動画の音声が不要な場合は、Vidsにビデオクリップを挿入した後、フローティングツールバーのサウンドアイコンをクリックし、「ミュート」ボックスをオンにすることで、簡単に音声を消すことができます。これにより、高品質な「無音」のビデオクリップとして活用することも可能です。
1日あたりの利用制限: この機能には、1日あたりの生成回数に制限が設けられています。詳細はVids ヘルプセンターをご確認ください。
利用開始までのガイド:管理者とエンドユーザー向け
管理者向け情報:
この機能自体に対する管理者コントロールはありません。Google Vidsは組織でデフォルトで有効になっており、必要に応じて組織単位で無効にすることができます。
詳細はGoogle Workspace 管理ヘルプ: ユーザーの Vids を有効または無効にする をご参照ください。
エンドユーザー向け情報:
アクセス権: Google Workspaceアカウントをお持ちであれば誰でも、Vidsで作成された動画の閲覧や共同編集が可能です。ただし、動画の新規作成やコピーは、特定のGoogle Workspaceエディションをご利用のお客様に限られます。
利用方法: ご自身の契約プランが対象であれば、特別な設定なしでGoogle Vidsにアクセスし、Veo 3の機能を試すことができます。
展開スケジュールと利用可能な対象
この新機能は、2025年6月9日より、段階的に展開が開始されます。
迅速リリース(Rapid Release)ドメインおよび計画的リリース(Scheduled Release)ドメイン: 2025年6月9日から、最大15日間かけて順次利用可能になります。
利用可能なGoogle Workspaceエディションは以下の通りです。
Business Starter**, Standard, Plus
Enterprise Starter**, Standard, Plus
Essentials, Enterprise Essentials, Enterprise Essentials Plus
Nonprofits**
Google AI Pro および Ultra
Gemini Business*, Gemini Enterprise*, Gemini Education, または Gemini Education Premium アドオンをご利用のお客様
重要な注記:
*2025年1月15日をもって、Gemini BusinessおよびGemini Enterpriseアドオンの販売は終了しています。
期間限定で、少なくとも2026年5月31日までは、Business Starter, Enterprise Starter, NonprofitsのアカウントでもVidsの生成AI機能にアクセスできます。 これは、これらのプランをご利用の皆様にとって、最新のAI機能を試す絶好の機会となります。
まとめ:動画コミュニケーションの民主化へ
Google Vidsに搭載されたVeo 3は、動画制作の専門知識やリソースがない人でも、誰もが簡単に、そして迅速に、メッセージを伝えるための「話す動画」を制作できる未来を提示しています。これは、まさに「動画コミュニケーションの民主化」と言えるでしょう。
現時点では英語のみの対応という制約はありますが、この技術が秘める可能性は計り知れません。社内外のコミュニケーション、マーケティング、教育など、あらゆる分野で、よりパーソナルで、より効果的な情報伝達が、これまで考えられなかったほどの低コストとスピードで実現します。
ぜひこの機会に、Google VidsとVeo 3が切り拓く新しいコミュニケーションの形を体験してみてください。あなたのアイデアが、数分後には人々を惹きつけるビデオコンテンツとして生まれ変わるかもしれません。