この情報は、Google Workspace アップデートブログ (2025年6月10日投稿) からのものです。
お客様アンケート、従業員満足度調査、イベント後のフィードバック収集など、Google Formsは私たちのビジネスや組織運営において、貴重な「声」を集めるための不可欠なツールです。
選択式の回答は自動でグラフ化され、傾向を把握しやすい一方で、最も価値あるインサイトが眠っている「自由記述欄」の分析は、常に大きな課題でした。
「数十、数百件の自由記述回答にすべて目を通す時間がない…」
「一つ一つの意見は貴重だが、全体の傾向を掴むのが難しい」
「結局、最初の数件を読んで、分かった気になってしまう」
そんな経験、ありませんか?
この、多くの担当者が抱える悩みを解決するため、GoogleのAIアシスタント「Gemini」が、ついにGoogle Formsにも搭載されました!
本日より、Google Formsに集まった自由記述(短文回答・段落回答)の回答を、GeminiがAIの力で自動的に要約してくれる機能が利用可能になります。
新機能の概要:AIが「声の山」から「宝の地図」を作成
これまでも、Google ドキュメントやスプレッドシートなどのサイドパネルで、Geminiがコンテンツの要約や分析、生成を支援してくれましたが、その強力な機能がGoogle Formsへと拡張されます。
今回のアップデートの核心は、AIがフォームの文脈を理解した上で、自由記述回答の要約を生成してくれる点です。
具体的に何をしてくれるのか?
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文脈を理解した要約: Geminiは、単に回答のテキストを並べて要約するのではありません。フォームの**「タイトル」「説明」「質問文」、そして集まった「回答」**のすべてを文脈として総合的に理解します。これにより、質問の意図に沿った、より的確な要約が生成されます。
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主要なテーマと要点の抽出: 膨大な回答の中から、頻出する意見や共通するテーマ、注目すべき重要なポイント(Key takeaways)を自動で抽出し、簡潔なサマリーとして提示してくれます。
これにより、これまで何時間もかかっていた手作業でのテキスト分析が、ボタン一つで完了します。担当者は、AIが作成してくれた「宝の地図(要約)」を基に、より深い分析や次のアクションの検討という、本来注力すべき業務に集中できるようになります。
なぜこれが重要なのか?日本のビジネスシーンにおける絶大な効果
この一見シンプルな「要約機能」は、日本の多様なビジネスや組織活動の現場において、計り知れないインパクトをもたらします。
1. 顧客の声(VoC)分析を、誰でも・すぐに
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製品・サービス改善のヒントを即座に発見: お客様アンケートの「ご意見・ご要望」欄に寄せられた多数の声を、Geminiが瞬時に要約。「操作が分かりにくい」「この機能が欲しい」といった共通のテーマを素早く把握し、製品開発やサービス改善の具体的なアクションに繋げられます。
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顧客満足度の定点観測: 定期的に実施する顧客満足度調査の自由記述部分を効率的に分析することで、顧客が何に満足し、何に不満を感じているのか、その変化を時系列で追いやすくなります。
2. 従業員エンゲージメントの向上
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社員の本音を迅速に経営へ: 従業員意識調査や、社内制度に関する意見募集などで集まった自由記述の「生の声」を、人事担当者が効率的に分析できます。「コミュニケーション不足」「評価制度への不満」といった組織課題の傾向を素早く捉え、具体的な改善策を経営層に提言しやすくなります。
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風通しの良い組織文化の醸成: 従業員からのフィードバックが、迅速に分析され、何らかのアクションに繋がっていることが示されれば、「自分の声は届いている」という実感が高まり、エンゲージメントの向上に繋がります。
3. イベント・セミナー運営の質の向上
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次回の企画への即時反映: イベントやセミナー後に実施するアンケートの「感想」欄をGeminiで要約。「このセッションが有益だった」「会場のWi-Fiが不安定だった」といったポジティブ・ネガティブ両面の意見をすぐに把握し、次回のイベント企画や運営改善に具体的に活かすことができます。
4. 教育現場での活用
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授業改善のヒントを発見: 授業の感想を生徒に自由記述で求めた際、その回答を要約することで、「説明が早すぎる」「この部分が特に面白かった」といった全体的な傾向を把握し、次の授業の進め方や内容の改善に役立てられます。
使い方と便利な機能:3ステップで要約完了
この強力な機能を利用するのに、複雑な操作は一切必要ありません。
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Google Formsの「回答」タブを開きます。
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要約したい自由記述の質問項目に、3件以上の回答が集まっていると、**「回答を要約」**というボタンが表示されます。
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このボタンをクリックするだけで、Geminiが要約の生成を開始します。
さらに、生成された要約をより便利に活用するための機能も用意されています。
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再試行(Retry): 生成された要約がしっくりこない場合、「再試行」ボタンをクリックすると、Geminiが再度要約を生成します。同じ回答でも、異なる視点や切り口の要約が得られる場合があります。
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コピー(Copy): 生成された要約に満足したら、「コピー」ボタンをクリック。要約内容をクリップボードにコピーし、そのままレポート文書や報告メール、プレゼンテーションスライドなどに簡単に貼り付けることができます。
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更新(Refresh): 要約を生成した後に新しい回答が追加された場合、「更新」ボタンをクリックするだけで、最新の回答を含めた形で要約を再生成してくれます。
留意事項と現在の制約:日本語対応への期待
この画期的な機能ですが、現時点ではいくつかの重要な留意事項があります。
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現在、英語のみ対応: 最も重要な点として、この要約機能は現時点では英語のみに対応しています。日本語の回答を要約することはできません。日本のユーザーにとっては、まず英語でのアンケートなどで活用することが前提となりますが、今後の日本語対応に大いに期待したいところです。
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AIの性質を理解する: Geminiが生成する要約は非常に強力ですが、常に完璧とは限りません。あくまで全体の傾向を把握するための「たたき台」として活用し、最終的な判断や詳細な分析には、必要に応じて原文も参照することが重要です。
管理者・エンドユーザー向け情報
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管理者の方へ: ユーザーがこの機能を利用するには、組織で**「スマート機能とパーソナライゼーション」が有効になっている**必要があります。管理者は、管理コンソールからこの設定を確認・変更できます。
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エンドユーザーの皆様へ: 上記の管理者設定が有効であれば、特別な操作は不要です。自由記述の質問に3件以上の回答が集まると、自動的に「回答を要約」ボタンが表示されるようになります。
展開スケジュールと提供対象
展開スケジュール:
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迅速リリース(Rapid Release)ドメイン: 2025年6月10日より、最大15日間かけて順次展開されます。
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計画的リリース(Scheduled Release)ドメイン: 2025年6月26日より、最大15日間かけて順次展開されます。
利用可能なGoogle Workspaceエディション:
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Business StandardおよびPlus
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Enterprise StandardおよびPlus
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Gemini EducationまたはGemini Education Premiumアドオンをご利用のお客様
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Google AI ProおよびUltra
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以前にGemini BusinessまたはGemini Enterpriseアドオンを購入されたお客様
まとめ:声の価値を最大化し、意思決定を加速する
Google FormsへのGemini搭載は、これまで時間と手間の問題で見過ごされがちだった「自由記述」という宝の山の価値を、最大限に引き出すための強力なツールです。
顧客や従業員の「生の声」から、これまで以上に迅速に、そして簡単にインサイトを発見できるようになることで、組織の意思決定のスピードと質は格段に向上するでしょう。
今はまだ英語のみの対応ですが、この機能が日本語に対応した暁には、日本のあらゆるビジネスや組織活動において、コミュニケーションとデータ活用のあり方が大きく変わることは間違いありません。その日に向けて、今からこの革新的な機能の可能性に注目しておく価値は十分にあります。