出典: Google Workspace Updates Blog
元記事の投稿日: 2025年6月23日
GIGAスクール構想により、日本の教育現場ではデジタルツールの活用が急速に進んでいます。
中でもGoogle Classroomは、日々の授業や課題のやり取りに欠かせないプラットフォームとなりました。
しかしその一方で、多くの先生方が一つの課題に直面しています。
それは、生徒の成績や出欠を管理する「校務支援システム(SIS)」と、授業で使う「Google Classroom」のデータが分断されていることです。
Classroomで採点した小テストの結果を、また改めて校務支援システムに手入力する…。
この”二度手間”に、多くの時間が割かれているのが現状ではないでしょうか。
本日ご紹介するのは、こうした課題の解決に向けた、世界の教育DXの大きな一歩となるアップデートです。
何が変わった?韓国の主要SIS「STLink」との連携が実現
今回のアップデートで、Google Classroomは韓国の主要な生徒情報システム(SIS)である「Bubblecon STLink」との新たな連携機能をリリースしました。
これにより、これまで分断されていたClassroomとSISの間で、データの双方向のやり取りが可能になります。具体的には、以下の2つの大きな業務効率化が実現します。
1. ClassroomからSISへ:成績のエクスポート
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先生方は、Google Classroomの採点簿で付けた成績を、ボタン一つでSIS(STLink)にエクスポートできるようになります。
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これまで手作業で行っていた成績データの転記作業が不要になり、入力ミスを防ぎながら、通知表作成などにかかる時間を劇的に短縮できます。
2. SISからClassroomへ:クラス情報のインポート
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年度の初めや学期の開始時に最も手間のかかるクラス設定作業も、大幅に簡略化されます。SIS(STLink)に登録されている以下の情報を、Classroomに直接インポートできます。
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生徒の名簿
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共同担任の先生
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評価期間(例:1学期、2学期など)
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評価のカテゴリ(例:定期テスト、小テスト、提出物など)
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これにより、新年度のクラス作成や設定作業が数クリックで完了し、先生方はより早く新学期の準備を整えることができます。
この連携は「1®EdTech」が策定する「OneRoster」という国際的な技術標準規格に基づいて構築されています。これは、特定のシステムに依存せず、様々な教育プラットフォームが安全かつスムーズに連携するための重要な仕組みです。
日本の教育現場にとっての意味と将来への大きな期待
「韓国のシステムとの連携では、日本の私たちには関係ないのでは?」と感じるかもしれません。確かに、現時点で日本の多くの学校で利用されている校務支援システム(SIS)と直接連携できるわけではありません。
しかし、このニュースは日本の教育DXの未来を占う上で、非常に重要な意味を持っています。
1. Googleの「本気度」を示すグローバル戦略
今回のアップデートは、GoogleがClassroomを単なる授業支援ツールに留めず、各国の教育システムの根幹であるSISと連携させ、校務全体のハブとして機能させようとしている「本気度」の表れです。韓国を皮切りに、今後この動きは世界各国に広がっていくことが予想されます。
2. 日本の校務支援システムとの連携への期待
今回の韓国での事例は、将来的に日本の主要な校務支援システムとの連携が実現する可能性を強く示唆しています。もしこの連携が日本でも実現すれば、先生方の働き方は劇的に変わるでしょう。年度更新時の煩雑な名簿作成や、学期末の膨大な成績処理業務から解放され、その時間を子供たち一人ひとりと向き合ったり、より良い授業を創造したりするために使えるようになります。
3. データ標準化への後押し
今回の連携が「OneRoster」という国際標準に基づいている点も重要です。日本でも教育データの標準化が議論されていますが、こうした世界的な潮流は、国内のシステム開発ベンダーや教育委員会が標準規格に対応する後押しとなる可能性があります。
利用に必要な条件(参考情報)
なお、今回のSIS連携機能は、Google Workspaceのすべてプランで利用できるわけではありません。利用には、以下のいずれかのライセンスが必要です。
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Google Workspace for Education Plus
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Teaching and Learning Upgrade
これは、SIS連携のような高度な機能は、より付加価値の高い上位プランで提供されるというGoogleの方針を示しており、将来的な導入を検討する教育委員会や学校法人にとっては重要な参考情報となります。
まとめ
Google Classroomと韓国のSISとの連携は、単なる一国での機能追加ニュースではありません。それは、世界の教育現場が抱える共通の課題「分断されたデータの統合」に向けた、Googleの力強い回答です。
この流れは、やがて日本の教育現場にも大きな変革をもたらすでしょう。先生方がテクノロジーを「使う」負担から解放され、テクノロジーに「助けられる」未来。その実現に向けた重要な一歩として、今後のGoogleの動向から目が離せません。