本記事はGoogle Workspace Updatesブログ( https://workspaceupdates.googleblog.com/ )の記事を元に、日本のGoogle WorkspaceユーザーおよびGoogle Workspaceに興味がある方々に向けて、2025年12月16日に公開された情報を分かりやすく解説したものです。
全社員が参加するような大規模なライブストリーミングを実施する際、ネットワーク管理者にとって最大の懸念事項は何でしょうか?
「全員が一斉にアクセスして、社内ネットワークがパンクしないか」
「映像が止まってしまい、社長のスピーチが台無しにならないか」
こうした不安を抱えながら本番を迎えるのは、心臓に悪いものです。
Google Meetには、こうした大規模配信時のネットワーク負荷を劇的に軽減する「eCDN(エンタープライズ・コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)」機能があります。
視聴者同士でデータを共有し合う(ピアリング)ことで、外部回線への帯域消費を最大95%も削減できる強力な機能です。
しかし、このeCDNを導入する際、自社の複雑なネットワーク環境で本当にうまく動作するかを確認するのは難しく、ぶっつけ本番にならざるを得ないケースもありました。
そんな管理者の悩みを解決する、画期的な検証ツール「サイレントテストモード(Silent Test mode)」が発表されました。
実際のユーザー環境を使いながら、視聴体験には一切影響を与えずに、大規模なeCDNの動作テストを行える機能です。
今回は、この新機能がどのように安全なテストを実現するのか、その仕組みとメリットを詳しく解説します。
何が変わるのか?「裏側」だけでテスト走行
「サイレントテストモード」の最大の特徴は、視聴者が見ている映像には影響を与えずに、バックグラウンドでeCDNのシミュレーションを実行できる点です。
通常のライブ配信(eCDN有効時):
視聴者は、近くの他の視聴者(ピア)から映像データを受け取ったり、Googleサーバーから受け取ったりします。もしeCDNの設定が不適切だと、映像が乱れるリスクがあります。
サイレントテストモード有効時:
-
視聴体験(表):
視聴者の画面には、Googleのサーバーから直接配信された安定した映像が表示されます。つまり、テストが失敗しても、視聴者は何の影響も受けず、快適に視聴を続けられます。 -
eCDNシミュレーション(裏):
その裏側(バックグラウンド)で、端末同士はeCDNのネットワークを形成し、実際にピア同士でデータをやり取りします。
「誰と誰が繋がったか」「どれくらいの速度でデータ交換できたか」といったリアルなデータを収集し、もし設定に問題があればエラーとして記録します。
これにより、管理者は「本番の全社会議」という絶好の機会を利用して、リスクを負うことなく、大規模な負荷テストと設定のチューニングを行うことができるのです。
さらに高度な活用:ユーザー不在でもテスト可能
この機能の凄いところは、実際のライブ配信イベントを待たなくてもテストができる点です。
既存のエンドポイント管理システム(MDMなど)を使って、ユーザーのPC上でバックグラウンドスクリプトを実行させることで、ユーザーが会議に参加していなくても、eCDNの動作テストを行えます。
「深夜帯にテストを行いたい」
「来週のイベントに向けて、毎日少しずつ設定を変えてテストしたい」
こうした要望にも応えられるため、PDCAサイクルを高速に回して、最適なネットワーク設定を短期間で見つけ出すことが可能になります。
導入のメリット
-
リスクゼロでの検証
視聴体験を損なうことなく、本番環境での大規模テストが可能になります。 -
データに基づいた最適化
実際のユーザー端末、実際のネットワーク環境でのパフォーマンスデータが取れるため、机上の空論ではない、実効性のあるチューニングが可能です。 -
トラブルの未然防止
本番で「映像が止まる」という最悪の事態を防ぐため、事前に潜在的なボトルネックを洗い出すことができます。
利用手順と対象エディション
管理者の方へ:
この機能はデフォルトでは「オフ」になっています。
利用するには、まずGoogle MeetのeCDN初期設定を完了させた上で、管理コンソールからサイレントテストモードを有効にする必要があります。
展開スケジュール:
2025年12月15日より、即時リリースおよび計画的リリースドメインの両方で段階的に展開が始まっています(最大15日程度)。
対象エディション:
ライブストリーミングの主催およびeCDN機能が利用可能な、以下のエディションが対象です。
-
Enterprise Standard / Plus
-
Enterprise Essentials Plus
-
Education Plus
まとめ:自信を持って「本番」を迎えるために
大規模イベントの成功は、事前の準備で決まります。
「サイレントテストモード」は、ネットワーク管理者にとって、これ以上ない強力な準備ツールです。
安全な環境で徹底的にテストを行い、自信を持って最高品質のライブ配信を全社員に届けてください。