「PC全体の通信をVPN経由にしたくないけど、特定の作業だけIPアドレスを変えたい」。
「日本のサービスにアクセスしながら、同時に海外限定のサービスも利用したい」。
そんな風に考えたことはありませんか。
この記事では、普段お使いのPC(ホストOS)のIPアドレスはそのままに、仮想マシン(ゲストOS)上だけでNordVPNを動作させ、IPアドレスを賢く使い分ける方法を、具体的な設定手順とともに詳しく解説します。
この方法をマスターすれば、PC1台で複数のIPアドレスを同時に利用でき、開発作業の効率化や、より自由なインターネットサーフィンが実現可能です。
セキュリティを確保しつつ、通信パフォーマンスへの影響を最小限に抑える、そんな一石二鳥のテクニックをご紹介します。
なぜ仮想マシン上でNordVPNを使うのか?そのメリットを徹底解説
VPNをPC全体に導入するのではなく、あえて仮想マシンという区切られた環境でNordVPNを利用することには、多くのメリットが存在します。特に、セキュリティ、パフォーマンス、そして柔軟性の3つの観点から、この手法の有効性を掘り下げていきましょう。
メリット1: ホストOSとゲストOSでIPアドレスを完全に分離できる
最大のメリットは、IPアドレスの完全な分離です。ホストOS(普段使っているWindowsやmacOS)は日本のIPアドレスを維持したまま、VirtualBoxやVMwareなどで作成したゲストOS(仮想環境上のOS)だけをNordVPN経由で海外のIPアドレスにすることが可能です。
これにより、以下のような柔軟な使い方が実現します。
- 海外コンテンツへのアクセス: ホストOSで日本の動画配信サービスを楽しみながら、ゲストOSでは海外限定で配信されているスポーツ中継やドラマを視聴する。
- 開発・テスト環境としての利用: Web開発者が、海外からのアクセスで表示が崩れないか、特定の国からのアクセス制限が正しく機能しているかなどを、ホストOSの環境を汚さずにテストする。
- グローバルな情報収集: 特定の国でしか表示されない検索結果やニュースサイトにアクセスし、より多角的な情報を収集する。
このように、PC1台で「日本にいる自分」と「海外にいる自分」を同時に作り出すことができ、作業の幅が格段に広がります。物理的に2台のPCを用意する必要がなく、非常に効率的です。
メリット2: PC全体のパフォーマンス低下を回避
NordVPNのような高性能なVPNサービスでも、通信を暗号化するプロセスには少なからずCPUパワーを消費し、通信速度に影響を与える可能性があります。PC上のすべての通信をVPN経由にすると、Web会議やオンラインゲームなど、低遅延が求められるアプリケーションのパフォーマンスに影響が出てしまうことも考えられます。
しかし、仮想マシン上でのみVPNを利用すれば、その影響範囲をゲストOS内に限定できます。ホストOSでの作業はVPNを経由しないため、通信速度の低下は一切ありません。VPNを使いたい作業だけをゲストOSに集約することで、「必要な時だけ、必要な範囲で」VPNの恩恵を受けつつ、普段の作業の快適性は損なわないという、理想的な環境を構築できます。
メリット3: 用途に応じた複数の「VPN専用環境」を構築可能
仮想マシンは、その気になれば複数作成することができます。これを利用して、さらに高度なIPアドレスの使い分けが可能です。
- アメリカのサーバーに接続する仮想マシン
- イギリスのサーバーに接続する仮想マシン
- 韓国のサーバーに接続する仮想マシン
上記のように、国ごとに専用の仮想環境を用意しておけば、それぞれの国のサービスをシームレスに切り替えて利用できます。開発者であれば、リージョンごとの動作テストを効率的に行うことができますし、マーケターであれば各国の市場調査が捗るでしょう。
このように、仮想マシンとNordVPNの組み合わせは、単にIPアドレスを変更するだけでなく、用途別に最適化されたクリーンな作業環境を複数用意できるという、非常に強力なメリットを提供してくれるのです。
実践!VirtualBoxでNordVPN専用の仮想環境を構築する手順
それでは、実際に仮想環境を構築していきましょう。ここでは、無料で利用できる人気の仮想化ソフト「VirtualBox」を使った手順を解説します。基本的な流れは、仮想マシンを作成し、その中にOSをインストール、最後にNordVPNを設定するという3ステップです。(2026年1月時点の情報です)
Step 1: VirtualBoxとOSイメージの準備
まずは必要なソフトウェアを準備します。
- VirtualBoxのインストール: Oracleの公式サイトから、お使いのOS(Windows, macOS)に合ったVirtualBoxをダウンロードしてインストールします。特に設定を変更する必要はなく、指示通りに進めれば問題ありません。
- ゲストOSイメージのダウンロード: 次に、仮想マシン内にインストールするOSのイメージファイル(.iso)を用意します。Windowsのライセンスをお持ちでない場合は、「Linux Mint」や「Ubuntu」といった無料のLinuxディストリビューションがおすすめです。これらは動作が軽量で、NordVPNも公式にサポートしているため、今回の用途に最適です。各公式サイトからLTS(長期サポート版)をダウンロードしておきましょう。
Step 2: 仮想マシンの作成とネットワーク設定
VirtualBoxの準備ができたら、NordVPNを動かすための仮想マシンを作成します。
- VirtualBoxを起動し、「新規」ボタンをクリックします。
- 名前(例: NordVPN-VM)、OSの種類とバージョン(例: Linux, Ubuntu (64-bit))を選択します。
- メモリーサイズを割り当てます。Linux MintやUbuntuなら、2048MB(2GB)以上あれば快適に動作します。
- ハードディスクを作成します。「仮想ハードディスクを作成する」を選択し、可変サイズ(VDI)で25GB程度の容量を確保しておけば十分でしょう。
- 仮想マシンが作成できたら、設定画面を開き、最も重要なネットワーク設定を行います。
- 「ネットワーク」タブを選択し、「アダプター1」が有効になっていることを確認します。「割り当て」のドロップダウンメニューから「NAT」を選択してください。
この「NAT」設定がキーポイントです。これにより、ゲストOSはホストOSを介してインターネットに接続するようになります。ホストOSから見ると、ゲストOSは一つのアプリケーションのように振る舞うため、ゲストOS内でVPN接続を行っても、ホストOSの通信には一切影響が出ません。
Step 3: ゲストOS上へのNordVPNのインストールと接続
最後に、作成した仮想マシン上でNordVPNを設定します。
- 仮想マシンを起動し、先ほどダウンロードしたOSイメージを使ってOSをインストールします。画面の指示に従うだけで完了します。
- OSのインストール後、ターミナル(コマンド入力画面)を開きます。
- NordVPNの公式サイトにあるLinux向けセットアップ手順に従い、以下のコマンドを(一行ずつ)実行してNordVPNをインストールします。
sh <(curl -sSf https://downloads.nordcdn.com/apps/linux/install.sh) - インストールが完了したら、
nordvpn loginコマンドでアカウントにログインします。ブラウザが開き、認証が求められます。 - ログイン後、
nordvpn connectコマンドでVPNに接続します。特定の国に接続したい場合はnordvpn connect Japanやnordvpn connect United_Statesのように国名を指定します。 - 接続が完了したら、念のためターミナルで
curl ifconfig.meと入力し、表示されるIPアドレスがホストOSのものと異なっていることを確認しましょう。
これで、ホストOSとは完全に独立したNordVPN専用環境が完成しました。以降は、この仮想マシンを起動すれば、いつでも海外IPアドレスで安全なブラウジングが可能です。
VMware Workstation Playerの場合の設定方法と注意点
VirtualBoxと並んで人気のある仮想化ソフトが「VMware Workstation Player」です。非商用利用であれば無料で使え、安定性やパフォーマンスに定評があります。基本的な考え方はVirtualBoxと同じですが、いくつか異なる点や共通の注意点について解説します。
VMwareとVirtualBoxの基本的な違い
どちらも優れたソフトウェアですが、簡単な特徴の違いは以下の通りです。
- VirtualBox: 完全無料でオープンソース。個人利用や学習用途で手軽に始めたい場合に最適。機能も豊富。
- VMware Workstation Player: 企業向けの有償版で培われた技術がベースにあり、安定性やパフォーマンスが高いと評判。非商用なら無料。より本格的な利用を想定している場合におすすめ。
どちらを選んでも今回の目的は達成できますので、お好みで選んで問題ありません。
VMwareでのネットワーク設定のポイント
VMwareで仮想マシンを作成する手順はVirtualBoxとよく似ています。OSイメージを読み込ませて仮想マシンを作成した後、ネットワーク設定を確認します。
VirtualBoxの「NAT」に相当するのが、VMwareでは「NAT (共有ホスト IP アドレスを使用)」という設定です。仮想マシンの設定画面から「ネットワーク アダプタ」を選択し、このオプションが選ばれていることを確認してください。これにより、VirtualBoxと同様に、ゲストOSの通信がホストOSを経由する形となり、VPN接続をゲストOS内に閉じ込めることができます。
共通の注意点:VPNキルスイッチの重要性
仮想マシン環境でNordVPNを使う上で、必ず有効にしておきたいのが「キルスイッチ(Kill Switch)」機能です。
キルスイッチとは、何らかの理由でVPNサーバーとの接続が予期せず切断された場合に、インターネット接続自体を自動的にブロックしてくれる安全機能です。もしキルスイッチが無効になっていると、VPN切断時にゲストOSはホストOSの生のIPアドレスでインターネットに再接続してしまう可能性があります。これでは、IPアドレスを分離している意味がなくなってしまいます。
NordVPNのアプリケーションには、このキルスイッチ機能が標準で搭載されています。Linux版では、以下のコマンドで有効にできます。
nordvpn set killswitch on
この設定一つで、IPアドレスの漏洩リスクを劇的に減らすことができます。仮想マシン環境であっても、セキュリティ対策は万全にしておきましょう。
これからNordVPNを使い始める方や、キルスイッチをはじめとした便利な機能についてより深く知りたい方は、当サイトの完全ガイド「【2026年最新版】NordVPN完全ガイド:始め方から料金、メリット・デメリットまで徹底解説!」もぜひ参考にしてください。契約から基本的な使い方まで、網羅的に解説しています。
まとめ:仮想マシンとNordVPNで、より安全・柔軟なネット環境を
この記事では、VirtualBoxやVMwareといった仮想マシン上でNordVPNを動作させ、ホストOSとゲストOSでIPアドレスを使い分ける方法について解説しました。
この手法のポイントを改めてまとめます。
- IPアドレスの分離: ホストOSは日本のIP、ゲストOSは海外のIPといった使い分けがPC1台で可能になる。
- パフォーマンス維持: VPNの影響範囲を仮想マシン内に限定し、ホストOSの通信速度を損なわない。
- 柔軟な環境構築: ネットワーク設定で「NAT」を選ぶのが鍵。用途別に複数のVPN環境も作成できる。
- セキュリティの確保: 万が一のIP漏洩を防ぐため、「キルスイッチ」機能は必ずオンにしておく。
開発者や研究者、海外のコンテンツを楽しみたい方にとって、このテクニックは作業の可能性を大きく広げてくれるはずです。最初は少し難しく感じるかもしれませんが、一度環境を構築してしまえば、あとは仮想マシンを起動するだけで、いつでも安全で独立したインターネット環境が手に入ります。
この記事を読んで、仮想マシンとNordVPNの組み合わせを試してみたくなった方も多いのではないでしょうか。安全で快適なVPNサービスを利用すれば、インターネットの世界はさらに広がります。
ぜひこの機会に、あなただけの特別なインターネット環境を構築してみてください。
