こんにちは、小松由和(@komaty1210)です。
今回読んだのはこちらの本。
『あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』著:野口 真人
私たちの今の人生は、過去に自分がしてきた様々な選択によってできています。
今日のランチは何を食べるのか、どこに遊びに行くのか、といった日々の小さな選択から、
どの学校に行くのか、どんな仕事をするのか、誰と友達になるのか、どこに住むのか、といった、人生への影響度が高い選択まで。
そう考えると、選ぶことが人生と言っても過言ではありません。
私たちは常に自分の中で「最も価値がある≒最も得する」と思ったものを選んでいるはずです。
人生は「選択」、つまり「価値判断」の連続です。
だとすれば、後悔のない人生を送るためにできることはたったひとつ。
「正しい選択」をするために「正しい価値判断」をすること。
では、どうすれば、正しい価値判断ができて、正しい選択ができるようになるのでしょうか?
「Aを選んだけど、結果的にBを選んでおけばよかったな・・ということがよくある。。」
「この選択が正しいのどうか全然判断がつかない。。」
「今、手元にある100万円は何に使うのが一番最適なんだろうか。」
今回紹介する本は、そんなあなたの選択の悩みを解決する本。
大きな選択、重要な選択であればあるほど、知っておいて損はない知識だと思います。
著者は、企業の価値評価をする会社を立ち上げたファイナンスの第一人者。
「ピラミッドか、ヴェルサイユか、現金10億円、どれがほしいですか?」
最初の2つに10億円以上の資産価値があると知っていても、
ほとんどの人は、つい「現金」を選びたくなるはずだ。ファイナンス理論によれば、これほど愚かな選択はない。
難しい説明は少なめで、ノーベル賞理論をわかりやすい具体的な事例とともに、日々の生活や仕事に実践的に使える考え方を紹介してくれています。
ぜひ本書を読んで、ファイナンス理論を日々の選択に活用してみてください。
では、少し本の内容で気になったところをピックアップして紹介していきます。
『あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』の紹介
正しい選択をするために必要な5つのポイント
「昨日まで3000円で販売されていた服が、今日からセール対象になっていて1000円で販売されている。この服は買うべき?」
価格と価格を見比べている限り、正しい意思決定はできません。
3000円、2000円、1000円、どの価格で買うにしても、あるいは、まったく買わないにしろ、価格の変動だけを根拠にして判断することは、何も考えずに判断することと一緒です。
正しい選択をするためにはどんな情報が必要なのか?
先ほどの例で言えば、その服の正しい価値がわかればよい。
「価値」と「価格」を比較する視点が必要です。
モノの価値は、人や状況によって大きく異なります。
では、正しい価値判断は、どうやって判断すればよいのでしょうか?
本の内容を参考に、正しい価値判断をするために必要なことを、5つのポイントにまとめてみました。
①見かけの価格に騙されないこと
「銀座で飲むコーヒーはなぜ高いのか?」
銀座は地価が高いからという回答。たしかにこれな自然な回答に思える。コーヒー1杯の値段は、コーヒー豆の原価、人件費、家賃、光熱費といったコストの総和によって決まるというロジック。
このような価値の考え方を「コスト・アプローチ(原価法)」と呼ぶ。
コスト・アプローチは、最も身近でシンプルな価値の評価方法であるが、「120円のコーラ1缶の原価は5円らしいよ」といったケースから、不動産の新築と中古の販売価格の差のように、致命的な欠点として、時価がわからないということがある。
つまり、モノの価値はコストの積み上げだけでは、説明がつかない。
「銀座で飲むコーヒーはなぜ高いのか?」に対するファイナンス理論の答えは、「銀座では高いコーヒーでも売れるから」だ。
「物を買う」場合では、「安いから買う」という判断はコストアプローチの典型的な例だと思います。
いつもより大根が100円も安いから買っておこう。
いつもより靴下が500円も安いから買っておこう。
等々、価格の変動だけで判断すると、たいていの場合は「消費」「浪費」となってしまいます。
重要なのは、「自分にとって必要かどうか」「本当に欲しいのかどうか」「価格に見合ったリターンが見込めるかどうか」といった「投資」の視点を持つことです。
安さだけ、価格だけに注目するのは要注意です。
②リスクを把握する
十分に資力のある人が過度な生命保険に入るのは馬鹿げている。生命保険とは、病気や死亡によって収入が確保できなくなるかもしれない不確実性に賭ける投資である。それゆえ、病気やケガをしても確実に生活できるだけのお金がある人にとって、月々の保険料をわざわざ払う意味はない。
闇雲に保険に加入するのではなく、あなたの不安(将来のリスク)をあなたなりに定量化し、その不安に保険料(オプション価格)が見合うか否かをいつも念頭に置いて欲しい。
みんなが生命保険に入ってるから、自分も入っておこう。
家族や友達が生命保険には入っておいた方がいいと言っていたから。
等々、よくある話だと思います。
生命保険に入る、入らない、といった選択も、正しく価値判断をしてから選ぶべきです。
闇雲に保険に加入するのではなく、生命保険であれば、自分が死ぬリスク(普段の生活状況、食生活、健康状態、など)、金融資産の状況、収入と将来見込めるキャッシュフロー、などを考慮した上で、
将来のリスクと、そのリスクに対して保険料が見合うかどうかを判断すべきです。
リスクをある程度コントロールすることもできます。
睡眠や食生活が乱れていたら病気になるリスクは高いですが、健康的な生活に改善すれば、リスクは少なからず下げることもできます。
また、金融資産が1000万円ある人が、100万円の生命保険に加入することもかなり微妙な選択です。手持ちの金融資産で100万円は賄えるので、わざわざ生命保険に加入して保険料を払うよりは、その保険料を投資に回した方がよいと言えます。
逆に金融資産が100万円で、妻と子供がいる男性であれば、自分が死亡した時に100万円では残された家族が困るから生命保険に入ることは正しい選択と言える場合もあります。
なんとなく安心だから、なんとなく生命保険には加入するものでしょ、といった判断をしていたら要注意です。
③サンクコストよりも現在の価値の方が重要
例えば、1年前に100万円で買ったA社の株が、1年後の現在30万円になっていたとします。
売るか、持ち続けるか、の選択に迫られた場合、100万円で買ったという過去にとらわれてしまっていると、70万円の損が確定するのが嫌だしまた上がるかもしれないから持ち続けようという選択をするかもしれません。
この時あなたがすべき選択は、現在のあなたはA社の株を30万円で買う価値があると思うかどうか。
A社はこれから成長が見込めるし30万円は過小評価されていると思うのであれば持ち続けるべきだし、むしろ30万円の価値もない会社で30万円で買おうとは到底思えないのであれば今すぐ売るべきです。
このような過去に投下したお金や時間、労力のことを、「サンクコスト(埋没費用)」と言い、正しい選択を誤ってしまう原因の1つでもあります。
これは、株だけでなく、あらゆることに当てはまります。
自動車が発明された時代でも、今まで何十年も家業で馬車の荷物運搬の仕事をしてきたんだから、これからも続ける、と言っても、すぐに荷物運搬はほぼ自動車に置き換わってしまいます。
いかに、サンクコストに捉われずに、現在の価値を見極めるかが重要です。
④すべての価値はそれが将来に稼ぐキャッシュフローの総額で決まる
すべてのモノの価値を金銭的価値に置き換えるファイナンスが採用するのが、「キャッシュフロー・アプローチ」である。
キャッシュフロー・アプローチとは、「モノの価値はそれが生み出すお金の量によって決まる」という考え方である。
キャッシュフロー・アプローチをとると、世の中の見え方が大きく変わってくる。パンダや芸術作品、果ては人間まで、一見すると評価不可能と思われるものでさえも、その価値を測ることが可能になるのだ。
モナリザが稼ぐキャッシュフローに着目すると、その価値が見えてくる。モナリザが貢献する年間のキャッシュフローを計算すると、15ユーロ×モナリザ目当ての入館者数90万人と仮定)=1350万ユーロとなる。今後モナリザ人気が少なくとも50年続くとすれば、総キャッシュフローは6億7500万ユーロだ。1ユーロ125円で換算すれば、ざっと840億円。
モノの価値はそれが生み出す将来のキャッシュフローの総和で決まる。これがファイナンスの最も基本的かつ重要な考え方だ。ここで混同しないでほしいのは、価値を決めるのが「キャッシュ(現金)ではなく、キャッシュフロー(お金の流れ)」だという点である。
コストアプローチでは、本来の価値を見失いがちです。
将来生み出すキャッシュフローに注目することが、モノの正しい価値を見抜くために重要な考え方。
どれだけのリターンがあるのか?リスクも考慮して将来的にキャッシュフローの総和はどの程度になるのか?
例えば、 赤字続きのAmazonが、赤字なのに時価総額がどんどん増えていっていた状況は、株式市場ではAmazonが将来的に生み出すキャッシュフローに大きな評価がついていたからです。
⑤自分の判断基準を持つこと
オークションは絶対に損する買い物。
最終的にあなたが落札できたとしたなら、あなた以外の全ての市場参加者は「いやいや、そんな大金を出すほどの価値はないよ」と考えているからだ。つまり、オークションの落札者は常に、みんなが考える適正価格よりも割高な買い物をしていることになる。
これは面白い視点です。
オークションの落札者は常に高値をつかまされていて、誰も買わない割高な買い物をしていると。
ある意味ではあっていますが、「モノの価値は人や状況によって様々である」という視点では間違っていると言えます。
オークションで、自分が10万円で落札したときに、元々の価値判断で自分では20万円の価値があると判断していたとすれば、非常に良い買い物になるし、10万円と判断していたとしても、納得のいく買い物だったと言えます。
ただし、10万円の価値しかないと判断していたにもかかわらず、オークションの結果、20万円に価格が釣り上がっていった末に落札した場合は、間違った買い物と言わざるをえません。
それは、みんなが10万円以上の価値があると、適正価格が10〜20万円の間にあると判断されていたとしても、自分にとっては10万円の価値しかないので、20万円で買ったことは10万円分損をしている状況です。
要は、「モノの価値は人や状況によって様々である」ことを念頭に、周囲や世間の判断に惑わされずに、自分の判断基準をもつべきなのです。
正しい価値判断、正しい選択をするために
転職するか、転職しないか、どうやって決めたらいいのか?
ここまでに紹介してきた5つのポイントを踏まえて、
転職をするか、転職をしないか、の選択に当てはめてみましょう。
①見かけの価格に騙されないこと
現時点での年収、転職後の年収、など価格や目先の利益だけで判断しないこと。
例えば、年収が100万円アップするからといって、仕事内容を重要視せずに転職するのは非常に危険です。
5年後、10年後、20年後と長期的な視点で考えれば、目先の年収100万円アップよりも、自分の資産となる経験ややりがいが積める仕事を選び、目先の利益に惑わされずに自己投資をした方が、長期的に年収が100万円以上にアップする可能性は高いと言えます。
②リスクを把握する
転職したときのアップサイドリスクとダウンサイドリスク、
転職しないときのアップサイドリスクとダウンサイドリスク、
選択したときの想定し得るリスクを洗い出し、見極めること。
③サンクコストよりも現在の価値の方が重要
今までどれだけ今の職場で頑張ってきたかは関係ありません。
「2年頑張ってきたからあと1年頑張って3年は続けてみよう」といった考え方がは、過去に支払ったコスト(サンクコスト)に引きずられたコストアプローチの考え方です。
サンクコストよりも、現在の価値(未来のキャッシュフローも含めた)で判断する必要があります。
④すべての価値はそれが将来に稼ぐキャッシュフローの総額で決まる
転職したときに将来に稼ぐキャッシュフロー、
転職しないときに将来に稼ぐキャッシュフロー、
を見極める必要があります。
この選択をすることで、将来どれだけの価値が生まれるのか?
想定し得るリスクも考慮したときに、将来的に手にし得るリターンの価値はどれくらいなのか?
⑤自分の判断基準を持つこと
その選択の価値があなたの人生にとって、どれだけ重要かを踏まえて判断することが大切です。
例えば、大幅に金銭的なリターンが増える転職の選択だとしても、自分にとってまったく魅力的ではない仕事に転職したとしたら、精神的に幸せになることは難しいと思います。
すべての価値は、人や状況によって違ってくるので、あなたが大切にする判断基準を持って、転職するか、しないかを最終的に判断することが大切です。
「リスクだけが価値を高めてくれる」というファイナンスの真理
生きていくうえで大切なのは、ただリスクを避けて逃げ回ることではなく、コントロールすることです。投資家が誰もリスクを取ろうとせずに、国債に投資するようになれば、その国の経済はまったく成長しません。僕たちの人生だって、リスクがあるから、不確実だから、振れ幅があるから面白いのではないでしょうか。
最後に、リスクの話。
リスクとは、結果のばらつきの大きさであるので、不確実性のことを指します。
リスクを恐れて避けるのではなく、コントロールすることで、リスクを抑えつつ、不確実性も楽しむ。
これから先の未来がどうなるかわからないから人生は楽しい。
うまくリスクをコントロールすることが、人生の秘訣かもしれませんね。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
実際に人生は選択の連続です。
この本を買おうか、買わないか。
この仕事を受けるべきか、断るべきか。
どこに住むか。
直感が正しいときも往々にしてありますが、今回ご紹介したポイントを踏まえて、将来のリターンやリスクを見極めた上で選択することで、後悔のない人生が送れる可能性は高まるのではないでしょうか。
今回ご紹介した本、とてもおすすめなのでぜひ一読ください。
人生の選択関連でこちらの記事もぜひご覧ください。
人生は「選択」の連続。後悔しない、正しい「選択」をするために必要な4つのポイント。
『モバイルボヘミアン』は人生の選択肢を広げるために最適な良書でした(著者:本田直之&四角大輔)
情報が氾濫する現代社会において必須のスキルを学ぶ『「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法』中室牧子&津川友介
以上、「人生のあらゆる選択で正しい選択をするために必要な5つのポイントを考える『あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』野口真人」でした!
それではまた!