AIがWebアプリケーションを自動生成する。そんな夢のようなツール「Lovable」に、多くの開発者や起業家が注目しています。
自然言語で指示するだけで、モダンな技術スタックのアプリが数分から数時間で完成する手軽さは、まさに革命的です。
しかし、その一方で「本当に何でもできるのか?」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
強力なツールであるほど、その能力の限界と「できないこと」を正確に理解しておくことが、プロジェクト成功の鍵を握ります。
そこでこの記事では、あえてLovableの「できないこと」や技術的な制約に焦点を当てて、正直に、そして詳しく解説していきます。
この記事を読めば、Lovableを導入してから「こんなはずじゃなかった」と後悔することを防ぎ、そのポテンシャルを最大限に引き出すための現実的な活用戦略を描けるようになるでしょう。
なお、Lovableの基本的な機能や料金プラン、使い方に関する全体像については、先に「【2026年完全版】Lovable(ラバブル)とは?AIでWebアプリを自動生成する使い方・料金・特徴を徹底解説」の記事をお読みいただくと、より理解が深まります。
技術スタックのカスタマイズに関する制約
Lovableが「AIソフトウェアエンジニア」として高速な開発を実現できる最大の理由の一つは、標準化されたモダンな技術スタックを採用している点にあります。しかし、これは裏を返せば、技術選定の自由度に制約があることを意味します。
採用されている技術スタック(2026年1月時点)
まず、Lovableがデフォルトで生成するアプリケーションの構成を確認しておきましょう。
- フロントエンド: React 18 + TypeScript + Vite
- UIコンポーネント: shadcn/ui + Radix UI
- スタイリング: Tailwind CSS
- バックエンド: Lovable Cloud (SupabaseベースのPostgres DB, 認証, ストレージ, Edge Functions)
この構成は非常に現代的で、多くのWebアプリケーション開発においてベストプラクティスと言えるものです。しかし、もしあなたのプロジェクトで以下のような特定の要件がある場合、Lovableは直接対応できません。
Lovableでは「選べない」技術
具体的に、Lovableに自動生成を任せる段階では、次のような技術スタックへの変更はできません。
- フロントエンドフレームワークの変更: 「Vue.jsで構築して」「Angularでお願いします」といった指示は通りません。Next.jsやSvelteKitのような特定のReactフレームワークを指定することも、現時点では困難です。あくまでReact(Vite)がベースとなります。
- データベースの変更: バックエンドはSupabaseベース、つまりデータベースはPostgreSQLです。「MySQLを使いたい」「MongoDBのようなNoSQLデータベースで」という要件には応えられません。
- バックエンド言語の変更: サーバーロジックはLovable CloudのEdge Functions(DenoランタイムのTypeScript/JavaScript)で記述されます。「バックエンドはGoやPythonで書きたい」という場合、Lovableの自動生成範囲外で自前で構築し、API連携する必要があります。
【独自の視点】制約がもたらす「意思決定の高速化」というメリット
これらの制約は、一見するとデメリットに聞こえるかもしれません。しかし、視点を変えれば、これは「技術選定の迷いをなくし、本質的な価値創造に集中させる」という強力なメリットにもなります。
通常、Webサービス開発の初期段階では、「どのフレームワークが良いか」「DBは何を選ぶべきか」といった議論に多くの時間が費やされがちです。Lovableは、このプロセスを「現在のベストプラクティス」で標準化することで、開発者がインフラや環境構築ではなく、ユーザーに提供する機能そのものの開発に注力できる環境を提供してくれます。
まずはLovableの標準スタックでMVP(Minimum Viable Product)を高速で立ち上げ、市場の反応を見る。そして、ビジネスがスケールし、技術的な要件が明確になった段階で初めて、GitHub経由でコードをエクスポートし、自社のエンジニアが特定の技術への移行を検討する。このアプローチは、特にスタートアップや新規事業において、非常に合理的と言えるでしょう。
複雑なバックエンドロジックと外部API連携の限界
Lovableは認証、データベースのCRUD(作成、読み取り、更新、削除)、基本的なサーバーロジックまでを自動生成できる非常に強力なツールです。しかし、エンタープライズレベルの複雑なバックエンド処理や、特殊な外部サービスとの連携には限界があります。
Lovable Cloudで難しい処理の具体例
Lovableのバックエンド基盤であるLovable Cloud(Supabaseベース)は非常に高機能ですが、以下のような処理は苦手、あるいは専門的な手動実装が必要となります。
- 長時間のバッチ処理: 数時間にわたるデータ集計や動画エンコーディングなど、タイムアウト時間がシビアなサーバーレス関数(Edge Functions)では実行が難しい処理。これらは別途仮想サーバーや専用のバッチ処理サービスを契約して実装する必要があります。
- 高度なリアルタイム通信: Lovable CloudはSupabaseのリアルタイム機能を持っていますが、大規模なマルチプレイヤーゲームや金融系のトレーディングシステムで求められるような、低遅延かつ複雑な状態管理を伴うWebSocketサーバーの構築は、専門のバックエンド実装が必要です。
- 機械学習モデルのホスティング: Pythonなどで開発した独自の機械学習モデルを直接デプロイし、推論APIとして利用するような機能はありません。モデルは別の環境(Hugging Face, GCP Vertex AIなど)にホスINGし、そのAPIをLovableから呼び出す形になります。
外部API連携における注意点
「〇〇(外部サービス)と連携して」という指示で、Lovableはある程度のAPI連携コードを生成してくれます。特にStripeのような主要なサービスとの連携は得意です。しかし、すべてのAPI連携が魔法のようにうまくいくわけではありません。
- 複雑な認証フロー: OAuth 1.0aのような古いながらも現役で使われている認証方式や、企業独自のSAML認証など、単純なAPIキー認証でない場合は、手動での実装や調整が必要になる可能性が高いです。
- SDKの導入が必須な連携: 多くのサービスが提供する公式SDK(Software Development Kit)の導入や設定は、AIエージェントだけでは完結しないことがあります。依存関係の解決や特定のビルド設定が必要な場合、開発者がコードを直接編集する必要があります。
【独自の視点】Lovableは「0→1開発のブースター」と捉える
ここでも重要なのは、Lovableの位置付けを正しく理解することです。Lovableは、あらゆるバックエンド処理をこなす万能執事ではありません。むしろ、「面倒な初期設定や定型的なコードを9割終わらせてくれる、超優秀なアシスタント」と捉えるのが適切です。
例えば、SaaSの管理画面を作る場合、ユーザー管理、テナントごとのデータ分離、権限設定、請求処理など、考えるべきことは山積みです。Lovableを使えば、このうちユーザー管理の基盤や基本的なデータ表示画面を数時間で構築できます。開発者はその土台の上で、最もビジネス価値に直結する「テナントごとのデータ分離」や「Stripeと連携した請求ロジック」といった、より高度な部分の実装に集中できるのです。
Lovableは開発の「終わり」までを担うのではなく、最も大変な「始まり」を劇的に加速させるブースターの役割を果たします。残りの1割の複雑な部分は、GitHub連携を通じてプロのエンジニアが引き継ぐ、というハイブリッドな開発スタイルこそが、Lovableの真価を発揮する使い方と言えるでしょう。
フロントエンドの特殊な要件とピクセルパーフェクトなデザイン
Lovableが生成するフロントエンドは、ReactベースのSPA(シングルページアプリケーション)として非常に高品質です。しかし、パフォーマンス要件が極めて高いサイトや、デザインの完全な再現性を求める場合には、いくつかの制約を理解しておく必要があります。
SEOやパフォーマンスに関する高度な要求
- SSR/SSGへの完全対応: Lovableが生成するのは、クライアントサイドでレンダリングされるSPAが基本です。Next.jsやAstroのように、サーバーサイドレンダリング(SSR)や静的サイト生成(SSG)を前提とした、ページの表示速度(FCP/LCP)を極限まで最適化するような構成は自動では組まれません。もちろん、GitHubにエクスポートした後にNext.jsなどに移行することは可能ですが、それは手動の作業になります。
- バンドルサイズの厳密な最適化: 「このページのJavaScriptは50KB以下に抑えて」といった、パフォーマンスバジェットに関する厳密な指示は困難です。自動生成されるコードはモダンで効率的ですが、極度の最適化には手動でのコードレビューや分割戦略の調整が必要になります。
デザインの再現性における制約
Lovableの「Visual Edits」機能は、プレビュー画面を見ながら直感的にUIを修正できる画期的な機能です。しかし、これも万能ではありません。
- ピクセルパーフェクトの限界: Figmaなどのデザインツールで作成したデザインを、1ピクセルの狂いもなく完全に再現することは期待できません。Lovableが採用するshadcn/uiとTailwind CSSは、あくまでデザインシステムの上でコンポーネントを組み立てる思想です。そのため、「このボタンの角丸は3pxで」「このテキストの字間は0.08emで」といった細かすぎる指定よりも、「全体のデザインテーマに沿ってコンポーネントを配置する」という方が得意です。
- 複雑なアニメーションやインタラクション: GSAPやFramer Motionのようなライブラリを使った、Webサイトの体験をリッチにするための高度なアニメーションや、Canvas APIを利用したインタラクティブなコンテンツの生成は、手書きのコードで実装する必要があります。AIに期待できるのは、基本的なUIの表示・非表示や遷移までです。
【独自の視点】「破綻しないデザイン」を高速に手に入れる価値
ここでも、制約はメリットの裏返しです。ピクセルパーフェクトな再現が難しいということは、逆に言えば、デザインの専門家でなくても、ある一定の品質が担保された「破綻しないUI」を誰でも作れることを意味します。
Tailwind CSSやshadcn/uiという「ガイドレール」があるからこそ、AIは統一感のあるインターフェースを生成できます。これは、デザインシステムを持たないチームや、手早くプロトタイプを作りたい個人にとって、非常に大きな価値があります。
完璧なデザインを追求するのではなく、「ユーザーが目的を達成できる、クリーンで使いやすいUI」を最速で手に入れるためのツールとしてLovableを捉えることが重要です。細部の作り込みは、ユーザーからのフィードバックを得た後、GitHub上でエンジニアやデザイナーが担当すれば良いのです。
まとめ:制約を理解し、Lovableを賢く使いこなそう
この記事では、AIソフトウェアエンジニア「Lovable」の技術的な制約、つまり「できないこと」に焦点を当てて解説しました。
主なポイントを振り返りましょう。
- 技術スタックは固定: React + Supabaseベースが基本。VueやMySQLなどへの変更はできず、これが高速開発の源泉となっている。
- 複雑なバックエンドは手動: 長時間バッチ処理や特殊なAPI連携など、高度なロジックは手動での実装が必要。Lovableは「0→1の土台作り」に特化している。
- デザインは完全自由ではない: ピクセルパーフェクトな再現や複雑なアニメーションは苦手。その代わり、誰でも統一感のある「破綻しないUI」を高速に作れる。
Lovableは魔法の杖ではなく、明確な得意・不得意を持つ専門ツールです。その制約は、裏を返せば「標準化による高速化」「本質への集中」という大きなメリットをもたらします。
大切なのは、Lovableに「すべて」を任せようとするのではなく、開発プロセスのどこで活用するのが最も効果的かを見極めることです。MVP開発の初期段階で圧倒的なスピードを享受し、サービスが成長するにつれて人間(プロのエンジニア)が引き継いでいく。このハイブリッドなアプローチこそが、現代のソフトウェア開発における賢い選択と言えるでしょう。
今回解説した制約を踏まえた上で、Lovableが持つ真のポテンシャルや具体的な使い方、料金体系についてさらに詳しく知りたい方は、すべてを網羅した「Lovable完全ガイド記事」もぜひご覧ください。
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