請求書、契約書、レポートなど、ビジネスシーンではPDF形式のファイルが頻繁にやり取りされます。
その中のテキストデータを手作業でコピー&ペーストして、別のシステムに入力する、という作業に時間を取られていませんか。
もしあなたがそのように感じているなら、業務自動化ツール「n8n」がその悩みを解決してくれるかもしれません。
n8nを使えば、PDFからテキストを自動で抽出し、後続のタスクに連携するワークフローを構築できます。
しかし、PDFからのテキスト抽出は一筋縄ではいかないことも事実です。
特に「バイナリデータ」の扱いや、日本語特有の「文字化け」でつまずいてしまう方が少なくありません。
そこでこの記事では、2026年2月時点の情報に基づき、n8nでPDFからテキストデータを正確に抽出するための基礎知識から、具体的なワークフロー、そして多くの人が直面する文字化け問題への実践的な対策まで、丁寧に解説していきます。
この記事を読めば、あなたもPDF処理の自動化マスターへの第一歩を踏み出せるはずです。
n8nにおけるPDFデータ処理の仕組み:なぜ「バイナリ」を理解する必要があるのか
n8nでPDFを扱う上で、最初の関門となるのが「バイナリデータ」という概念です。これを理解することが、安定したワークフローを構築する鍵となります。なぜなら、n8nは基本的にデータをJSON形式で扱いますが、PDFのようなファイルはJSONで表現できない複雑な構造を持っているからです。
JSONの世界とバイナリの世界
n8nのワークフローを流れるデータの多くは、テキストベースのJSON(JavaScript Object Notation)形式です。これは「キー」と「値」のペアで構成される、人間にも機械にも分かりやすいデータ構造です。しかし、PDF、画像、音声ファイルなどは、単なるテキストの集まりではありません。書式、フォント情報、画像データ、圧縮情報などが複雑に組み合わさった「バイナリデータ」の塊です。
このバイナリデータをJSONの世界で無理に扱おうとすると、データが破損したり、意味不明な文字列に変換されたりしてしまいます。n8nでファイルを扱う際は、「これはJSONで扱える情報か、それともバイナリデータとして特別に扱うべきか」を意識することが非常に重要です。
縁の下の力持ち、「Move Binary Data」ノード
そこで登場するのが「Move Binary Data」というノードです。このノードは、バイナリデータをn8nのワークフロー上で安全に受け渡しするための重要な役割を担います。主な機能は以下の2つです。
- Set: ファイルなどのバイナリデータを、後続のノードが参照できる専用の領域に一時的に保存します。
- Get: Setで保存されたバイナリデータを、必要なタイミングで取り出します。
例えば、Google DriveからダウンロードしたPDFファイルを、テキスト抽出ノードに渡す場合を考えてみましょう。ダウンロード直後のデータはバイナリ形式です。これを「Move Binary Data」ノードで一度「Set」し、次の「Extract from File」(ファイルから抽出)ノードでそのデータを参照することで、ファイルの中身を正しく処理できるようになります。この一手間が、データの破損を防ぎ、確実な処理を実現するのです。
実践!n8nでPDFからテキストを抽出する基本ワークフロー
それでは、実際にn8nを使ってPDFファイルからテキストを抽出する基本的なワークフローを構築してみましょう。ここでは、手動でワークフローを開始し、指定したファイルからテキストを読み込む簡単な例をご紹介します。
ステップ1:ワークフローの全体像
今回のワークフローは、以下の4つのノードで構成されます。
- Manual (Start): ワークフローを手動で開始するためのトリガー。
- Read Binary File: ローカルにあるPDFファイルをバイナリデータとして読み込むノード。
- Move Binary Data: 読み込んだバイナリデータを後続のノードで使えるようにセットするノード。
- Extract from File: バイナリデータからテキスト情報を抽出するノード。
この流れを構築することで、「PDFファイルを読み込み、中身のテキストを取り出す」という基本的な自動化が完成します。
ステップ2:各ノードの設定方法
各ノードを具体的に設定していきましょう。
- Manual (Start)ノード
これはトリガーなので、特別な設定は不要です。ワークフローの起点となります。 - Read Binary Fileノード
「File Path」に、テキストを抽出したいPDFファイルの場所を指定します。n8nをPCにインストールして使っている場合は、PC内のファイルパスを直接指定できます。 - Move Binary Dataノード
このノードが非常に重要です。デフォルトでは「Operation」が「Get」になっていることが多いので、ここを「Set」に変更します。「Source Key」には、前のノード(Read Binary File)から渡されたバイナリデータを示すキー(通常は`data`)を指定します。これで、PDFのバイナリデータがワークフロー内で安全に持ち運べる状態になります。 - Extract from Fileノード
最後に、テキスト抽出の本丸であるこのノードを設定します。特別な設定は不要で、前の「Move Binary Data」ノードから渡されたデータを自動的に認識し、テキストの抽出を試みます。
ワークフローを実行すると、「Extract from File」ノードの出力結果に、PDFから抽出されたテキストデータがJSON形式で表示されるはずです。抽出したデータは、さらに後続のGoogle SheetsノードやSlackノードに渡して、記録や通知に活用できます。
PDFテキスト抽出の最大の壁「文字化け」を乗り越える実践的アプローチ
基本ワークフローを試した方の中には、「テキストは抽出できたけど、日本語がめちゃくちゃに表示される…」という「文字化け」問題に直面した方もいるかもしれません。これはPDFのテキスト抽出において非常によくある課題です。ここでは、その原因と具体的な対策について掘り下げていきます。
なぜ日本語は文字化けしやすいのか?
文字化けの主な原因は、PDFファイルの内部構造にあります。
- 原因1:フォントの埋め込み方式
PDFは、どの環境でも同じように表示されるよう、ファイル内にフォント情報を持っています。しかし、そのフォントの持ち方(エンコーディング)が特殊な場合、単純にテキストを抜き出そうとすると正しく文字を認識できません。 - 原因2:画像ベースのPDF
PDFの中には、紙の書類をスキャンして作成された「画像」そのもののファイルがあります。この場合、ファイル内にはテキスト情報が存在しないため、「Extract from File」ノードでは何も抽出できません。見た目は文字でも、データ的には一枚の絵と同じなのです。
n8nの標準機能である「Extract from File」ノードは、比較的シンプルな構造のPDFからテキスト情報を抜き出すことは得意ですが、上記のような複雑なケースには対応しきれないのが実情です。
【独自の視点】標準機能の限界とOCRという解決策
では、標準機能で文字化けが解決しない場合、どうすればよいのでしょうか。ここでおすすめしたいのが、OCR(光学的文字認識)ツールとの連携です。OCRは、画像データの中から文字を識別し、テキストデータに変換する技術です。
n8nは外部のWebサービス(API)と簡単に連携できるのが強みです。Google Cloud Vision AIやAWS Textractといった高精度なOCRサービスとn8nを組み合わせることで、文字化け問題を根本から解決できます。
具体的な流れは以下のようになります。
- n8nでPDFファイルを読み込む。
- 「HTTP Request」ノードを使い、PDFデータを外部のOCRサービスのAPIに送信する。
- OCRサービスがPDF(画像含む)からテキストを抽出し、結果をn8nに返す。
- n8nで受け取ったテキストデータを後続の処理で利用する。
この方法であれば、スキャンされた画像ベースのPDFであっても、高確率で正確なテキストデータを取得できます。セットアップには少し手間がかかりますが、手作業での転記や文字化けの修正作業から解放されるメリットは非常に大きいと言えるでしょう。安定した自動化を目指すなら、OCR連携は必須のテクニックです。
まとめ:PDF処理自動化で、次のステージへ
この記事では、n8nを使ってPDFからテキストを抽出する方法について、バイナリデータの基本から実践的なワークフロー、そして文字化け対策までを解説しました。重要なポイントを振り返りましょう。
- PDFなどのファイルは「バイナリデータ」として扱い、「Move Binary Data」ノードで安全に受け渡す。
- 「Read Binary File」→「Move Binary Data」→「Extract from File」がテキスト抽出の基本フロー。
- 標準機能で文字化けが起こる場合は、PDFの内部構造が複雑な可能性が高い。
- 画像ベースのPDFや頑固な文字化けには、外部のOCRサービスとの連携が最も効果的な解決策となる。
PDFからのデータ転記のような単純作業は、自動化に最も適した領域の一つです。今回の内容を参考に、ぜひあなたの業務フローに組み込んでみてください。手作業から解放されることで、より創造的な仕事に集中できるようになるはずです。
n8nの可能性は、もちろんこれだけにとどまりません。n8nの基本的な使い方から、さまざまなサービスとの連携応用例までを網羅したn8n完全ガイド記事も用意していますので、さらなる業務効率化を目指す方は、ぜひそちらもご覧ください。
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