「自分のお店を持ちたい」。
多くの人が夢見る飲食店やカフェの開業。
しかし、その夢を実現するためには、情熱や料理の腕前だけでなく、多くの複雑な手続きを乗り越える必要があります。
特に、開業準備を進める中で多くの人が最初にぶつかるのが、「保健所の営業許可」と「税務署への開業届」という2つの大きな手続きです。
「これって、どっちを先にやればいいの?」、「順番を間違えたらどうなるの?」そんな不安を感じていませんか。
ご安心ください。
この記事では、飲食店・カフェの開業における正しい手続きの順番を明確にし、それぞれのステップで何をすべきかを具体的に解説します。
この記事を最後まで読めば、手続きの流れが明確になり、自信を持って開業準備の第一歩を踏み出せるようになります。
結論:飲食店・カフェ開業では「保健所の営業許可」が先!
早速、核心の疑問にお答えします。飲食店やカフェを開業する場合、手続きの順番は「①保健所の営業許可申請」が先、その後に「②税務署への開業届提出」が正解です。
なぜなら、飲食店営業は、公衆衛生を守る観点から、施設の基準などを定めた「食品衛生法」に基づき、都道府県知事の許可を受けなければ開始できないと定められているからです。つまり、保健所から「この施設で営業してOKです」というお墨付き(営業許可)がなければ、そもそも飲食店として食べ物や飲み物をお客様に提供し、お金をいただく「営業」をスタートすることができません。無許可での営業は法律違反となり、厳しい罰則の対象となります。
一方、税務署へ提出する「開業届」は、正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、「私はここで、こういう事業を始めました」という事実を税務署に知らせるための書類です。所得税法により、事業を開始した日から1ヶ月以内の提出が義務付けられています。こちらはあくまで税務上の手続きであり、営業そのものの許可ではありません。
この2つの関係を時系列で整理すると、以下の流れが理想的です。
- 店舗物件の契約
- 内装設計・工事業者選定
- 【重要】設計図の段階で保健所に事前相談
- 内装工事・厨房設備の搬入
- 工事完了後、保健所に営業許可を申請
- 保健所の担当者による施設検査
- 営業許可証の交付
- 税務署に開業届を提出(青色申告承認申請書も一緒に)
- 営業開始!
このように、「営業の許可」を得てから、「事業開始の届出」をするのが論理的かつ法的に正しい順序です。開業届に記載する「事業開始日」も、営業許可が下りて実際に営業できる状態になった日以降の日付を記入するのが一般的です。まずは目の前の最重要関門である、保健所の営業許可取得に全力を注ぎましょう。
ステップ1:最重要関門「保健所の営業許可」を取得する全手順
飲食店開業における最大のハードルとも言えるのが、保健所の営業許可です。この許可なくして、営業は始まりません。ここでは、申請から取得までの具体的な手順と、つまずかないためのポイントを詳しく解説します。(※この記事は2026年1月時点の情報です。最新の情報や地域ごとの詳細な基準は、必ず管轄の保健所にご確認ください。)
最重要プロセス!設計図段階での「事前相談」
営業許可取得の成否は、この「事前相談」にかかっていると言っても過言ではありません。内装工事を始めてしまう前に、必ず店舗の設計図を持って管轄の保健所に相談に行きましょう。多くの自治体では事前相談を強く推奨しています。
なぜなら、営業許可を得るためには、シンクの数や大きさ、手洗い場の設置場所、床や壁の材質、換気設備の性能、トイレの仕様など、非常に細かい施設基準をすべてクリアする必要があるからです。もし工事が終わった後に「この設備では基準を満たせません」と指摘されれば、最悪の場合、追加工事や設計のやり直しが必要になり、余計な費用と時間がかかってしまいます。事前相談は、そうした手戻りリスクをなくすための命綱です。
相談時には、店舗の平面図や厨房設備の配置図など、具体的な資料を持参すると話がスムーズに進みます。担当者から具体的なアドバイスをもらい、設計に反映させてから工事に着手しましょう。
忘れずに取得!「食品衛生責任者」の資格
営業許可を申請するには、各店舗に必ず1名「食品衛生責任者」を置かなければなりません。これは、施設における食品衛生の管理・運営を担う重要な役割です。オーナー自身がなる場合も、従業員がなる場合もあります。
資格を取得するには、各都道府県の食品衛生協会などが実施する「食品衛生責任者養成講習会」を受講する必要があります。講習は1日で終わり、受講すれば基本的に資格を取得できます。ただし、人気の講習はすぐに満席になることもあるため、開業スケジュールに合わせて早めに申し込みを済ませておきましょう。
なお、調理師、栄養士、製菓衛生師などの資格を持っている場合は、講習会を受けなくても食品衛生責任者になることができます。
申請から検査、交付までの流れ
事前相談と食品衛生責任者の準備が整い、店舗の内装工事が完了する約10日〜2週間前になったら、いよいよ申請です。以下の書類を揃えて保健所に提出します。
- 営業許可申請書
- 施設の構造及び設備を示す図面(平面図など)
- 食品衛生責任者の資格を証明するもの(手帳や修了証など)
- (法人の場合)登記事項証明書
- 水質検査成績書(貯水槽の水や井戸水を使用する場合)
- 申請手数料
申請が受理されると、保健所の担当者と施設検査の日程を調整します。検査当日は、申請者(あなた)が立ち会いのもと、図面通りに設備が整っているか、施設基準を満たしているかを担当者が隅々までチェックします。特に、シンクや手洗い設備が正しく機能するか、冷蔵庫に温度計は設置されているか、食器棚に扉はあるかといった点が細かく見られます。もし不備があれば改善後に再検査となります。
無事に検査をクリアすれば、後日「営業許可証」が交付されます。この許可証を受け取って初めて、あなたの店は正式に営業を開始できるのです。
ステップ2:税務署への「開業届」提出と青色申告のメリット
保健所の営業許可という大きな山を越えたら、次に行うのが税務署への手続きです。事業主として納税の義務を果たすための第一歩であり、大きな節税につながる重要な手続きでもあります。ここでは、開業届の提出方法と、同時に申請すべき「青色申告」の絶大なメリットについて解説します。
開業届はいつ、どこに提出する?
開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」。これは、事業を開始した日から1ヶ月以内に、あなたの納税地(一般的には住民票のある住所)を管轄する税務署に提出する必要があります。
提出方法は以下の3つです。
- 窓口に持参: その場で内容を確認してもらえる安心感があります。控えにも受付印をもらえます。
- 郵送: 税務署に行く時間がない場合に便利です。必ず控えと、切手を貼った返信用封筒を同封しましょう。
- e-Tax(電子申告): 自宅からオンラインで提出できます。マイナンバーカードとカードリーダーが必要です。
提出自体は難しいものではありませんが、この開業届を出すことで、あなたは正式に「個人事業主」となり、屋号での銀行口座を開設したり、融資を申し込んだりする際の証明書として利用できるようになります。
絶対に活用したい「青色申告」の大きな節税効果
開業届を提出する際に、絶対に忘れてはならないのが「所得税の青色申告承認申請書」の提出です。これを提出することで、確定申告の際に「青色申告」という特別な方法で申告できるようになり、税制上の様々な優遇措置を受けられます。
青色申告の主なメリットは以下の通りです。
- 最大65万円の特別控除: 所得から最大65万円を差し引くことができ、所得税や住民税が大幅に安くなります。
- 赤字の3年間繰り越し: 開業当初の赤字を、翌年以降3年間の黒字と相殺できます。
- 家族への給与を経費にできる: 一定の条件下で、配偶者や親族に支払った給与を全額経費に算入できます(青色事業専従者給与)。
- 30万円未満の減価償却資産を一括経費に: 本来なら数年に分けて経費にする高額な備品(厨房機器など)を、購入した年に一括で経費にできます。
これらのメリットは、事業のキャッシュフローを大きく改善してくれます。この青色申告の承認を受けるには、原則として開業日から2ヶ月以内に申請書を提出する必要があります。そのため、開業届と同時に提出するのが最も確実で効率的です。
面倒な開業届の作成は無料ツールで賢く時短
開業届や青色申告承認申請書は、国税庁のサイトからダウンロードできますが、専門用語が多く、どの項目に何を書けばいいのか分かりにくいと感じる方も少なくありません。
そんなときに非常に便利なのが、会計ソフト会社などが提供している開業支援ツールです。例えば「マネーフォワード クラウド開業届」のような無料サービスを使えば、画面の質問に答えていくだけで、必要な書類が自動で作成されます。印刷して提出するだけで済むので、時間と手間を大幅に節約できます。
個人事業主としての開業手続き全般について、書類の書き方から提出方法まで、より詳しく知りたい方は、以下のガイド記事が非常に参考になります。画像付きで丁寧に解説されているので、ぜひご覧ください。
参考記事:【開業準備ガイド】個人事業主になるには?無料の「マネーフォワード クラウド開業届」で書類作成から提出まで完全サポート!
忘れてはならない!飲食店開業に必要なその他の手続き
保健所と税務署への手続きは、開業における二大巨頭ですが、事業の形態によっては、他にも必要な手続きが存在します。見落としがちな重要な届け出をここで確認しておきましょう。
消防署への手続き
人が集まる施設である飲食店は、火災予防に関する手続きも必要です。内装工事を始める7日前までに、管轄の消防署に「防火対象物工事等計画届出書」を提出します。さらに、お店が完成したら「防火対象物使用開始届出書」を提出します。
また、お店の収容人数(従業員+客席数)が30人以上になる場合は、「防火管理者」を選任し、「防火管理者選任届」を提出する義務があります。防火管理者も食品衛生責任者と同様、講習を受けることで資格を取得できます。
税務関係(開業届以外)
従業員を雇って給与を支払う場合は、「給与支払事務所等の開設届出書」を開設から1ヶ月以内に税務署へ提出します。また、従業員が常時10人未満の場合、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出しておくと、毎月納付が必要な源泉所得税を年2回(7月と1月)にまとめて納付できるようになり、事務負担を軽減できます。
労働保険・社会保険の手続き
正社員・パート・アルバイトを問わず、従業員を1人でも雇う場合は、労働保険(労災保険・雇用保険)への加入が義務付けられています。
- 労働保険関係成立届: 最初の従業員を雇った日の翌日から10日以内に、管轄の労働基準監督署へ提出します。
- 雇用保険適用事業所設置届: 設置の日の翌日から10日以内に、管轄のハローワークへ提出します。
さらに、法人の場合、または個人事業主でも常時5人以上の従業員がいる場合は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入も義務となります。「健康保険・厚生年金保険新規適用届」を、事実発生から5日以内に年金事務所へ提出する必要があります。
これらの手続きは非常に複雑で、提出先も多岐にわたります。社会保険労務士などの専門家に相談することも検討しましょう。
まとめ:正しい手順を理解して、スムーズな開業を実現しよう!
今回は、飲食店・カフェの開業における「保健所の営業許可」と「税務署への開業届」の正しい順番と、それぞれの具体的な手続きについて解説しました。
要点をまとめると以下の通りです。
- 順番は最重要!まずは「保健所の営業許可」を取得する。
- 保健所の手続きは「事前相談」が成功のカギ。工事着手前に必ず行う。
- 営業許可が下りたら、1ヶ月以内に「開業届」を税務署に提出する。
- 開業届と同時に「青色申告承認申請書」を提出し、大きな節税メリットを得る。
- 消防署や労働保険など、その他の手続きも見落とさないように注意する。
開業準備は、やるべきことが多くて目が回りそうになるかもしれません。しかし、一つひとつの手続きを正しい順番で着実にクリアしていくことが、夢の実現への一番の近道です。
特に、面倒な開業届や青色申告の書類作成は、無料で使えるマネーフォワード クラウド開業届を活用すれば、専門知識がなくても驚くほど簡単かつ正確に完了できます。貴重な時間を、お店のコンセプト作りやメニュー開発など、あなたにしかできないクリエイティブな作業に使いましょう。
この記事が、あなたの素晴らしい船出の一助となれば幸いです。夢の実現に向けて、頑張ってください!