家族がWISEの口座を持っていたことを、亡くなってから初めて知った。
そんな状況に直面している方は、決して少なくありません。
海外送金サービスとして利用者が増え続けているWISEですが、口座名義人が亡くなった場合にどう手続きすればよいのか、日本語で詳しく解説された情報はまだまだ少ないのが現状です。
国内の銀行口座であれば、金融機関の窓口で相談できますが、WISEのような海外に拠点を置くオンライン金融サービスの場合、問い合わせ先や手続きの流れがわかりにくく、不安を感じる方が多いでしょう。
WISEの口座名義人が亡くなったとき、なぜ早めの対応が重要なのか
海外送金サービス特有の注意点
WISEは日本の銀行とは異なり、イギリスに本社を置くグローバルな送金・マルチカレンシーサービスです。日本国内の銀行であれば、死亡届の提出後に金融機関が口座を凍結し、相続人が窓口で手続きを進められます。しかしWISEの場合、以下のような海外サービス特有の事情があります。
- 問い合わせは基本的にオンライン(メールまたはチャット)で行う必要がある
- 手続きに必要な書類の英語翻訳が求められる場合がある
- 口座内に複数通貨の残高がある場合、通貨ごとの処理が必要になることがある
- 長期間放置すると「休眠口座」扱いとなり、残高の取り扱いが変わる可能性がある
特に注意すべきなのが、放置によるリスクです。WISEの利用規約では、一定期間アクティビティがない口座について、各国の法令に基づいた休眠口座処理が行われる可能性があります。口座名義人の死亡を把握した時点で、速やかにWISEへ連絡することが最も重要な第一歩です。
相続財産としてのWISE口座残高
WISEの口座に残っている資金は、日本の法律上、被相続人(亡くなった方)の相続財産に該当します。これは国内の銀行預金と同じ扱いです。つまり、相続税の申告対象となる可能性があり、遺産分割協議の対象にもなります。
ここで見落としがちなのが、WISEのマルチカレンシー機能です。WISEでは日本円だけでなく、米ドル、ユーロ、英ポンドなど複数の通貨で残高を保有できます。相続財産として評価する際には、被相続人が亡くなった日の為替レート(TTB:対顧客電信買相場)で日本円に換算する必要があります。
また、故人がWISEを通じて海外の取引先への支払いや、海外在住の家族への仕送りを行っていた場合、定期的な送金が突然停止することで相手方に影響が出ることもあります。こうした点も含めて、全体像を把握してから手続きに入ることをおすすめします。
遺族が直面する3つの壁
実際にWISEの相続手続きを行った方の声を集めると、共通して以下の3つの課題が浮かび上がります。
- 口座の存在自体を知らなかった(ログイン情報が不明)
- 英語での問い合わせに不安がある
- 海外サービスの残高を相続税申告にどう反映すればよいかわからない
これらの課題を一つずつクリアしていくための具体的なステップを、次のセクションで詳しく解説します。
WISE口座の相続手続き:5つのステップを時系列で解説
ステップ1:WISEカスタマーサポートへの連絡
口座名義人が亡くなったことを、まずWISEのカスタマーサポートに連絡します。連絡方法は以下の通りです。
- WISEのヘルプセンターから「口座名義人の死亡」に関する問い合わせを送信
- 故人のアカウントにログインできる場合は、アカウント内のチャットサポートも利用可能
- ログインできない場合でも、WISEのウェブサイトからメールで問い合わせが可能
連絡時には以下の情報を伝えましょう。
- 故人の氏名(WISEに登録されている名前)
- 故人のWISE登録メールアドレス(わかる場合)
- 死亡日
- 連絡者(相続人)の氏名と故人との関係
なお、WISEのサポートは日本語にも対応しています。ただし、対応スタッフや時間帯によっては英語での返信になることもあるため、その点は心構えをしておくとよいでしょう。私の経験上、日本語で問い合わせれば日本語で返信が来ることがほとんどです。
ステップ2:必要書類の準備と提出
WISEから指示される必要書類は、一般的に以下の通りです。ただし、個別の状況によって追加書類を求められることがあります。
- 死亡診断書(または死亡届の記載事項証明書)のコピー
- 相続人であることを証明する書類(戸籍謄本など)
- 相続人の本人確認書類(パスポートまたは運転免許証)
- 遺産分割協議書(複数の相続人がいる場合)
ここで重要なポイントが2つあります。
1つ目は、書類の英訳についてです。WISEから英訳を求められた場合、公証人による認証付き翻訳(Certified Translation)が必要になることがあります。費用は1通あたり5,000円〜15,000円程度が相場です。ただし、まずは日本語の原本を提出し、WISEの判断を仰ぐのが効率的です。近年はWISE側で日本語書類を受け付けるケースも増えています。
2つ目は、戸籍謄本の取得です。相続手続きでは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要になることがあります。本籍地の市区町村役場で取得できますが、転籍を繰り返している場合は複数の自治体から取り寄せる必要があり、時間がかかります。早めに着手しましょう。
ステップ3:口座残高の確認と凍結
WISEに連絡が完了すると、口座は凍結され、新たな送金や出金ができなくなります。この段階でWISEから口座残高の明細が提供されます。
確認すべきポイントは以下の通りです。
- 各通貨の残高金額
- 処理中の送金がないか
- WISEデビットカードに紐づいた未決済の取引がないか
- 定期送金(Scheduled Transfer)が設定されていないか
複数通貨で残高がある場合、相続税の評価額を算出するために、死亡日時点の為替レートを記録しておくことが大切です。国税庁のウェブサイトや主要銀行の公表レートを参照するのが一般的です。
ステップ4:残高の引き出し(口座解約)
必要書類の審査が完了し、相続人が確定すると、WISEから残高の送金手続きに関する案内が届きます。通常、指定した日本国内の銀行口座への振込という形で残高を受け取ります。
この際に注意すべき点があります。
- 複数通貨の残高は、原則として1つの通貨に両替してから送金されることが多い
- 両替時のレートはWISEのミッドマーケットレート(実際の為替レート)が適用される
- 送金手数料が発生する場合がある
- 日本の受取銀行側で被仕向送金手数料(リフティングチャージ等)がかかることがある
残高が少額の場合と高額の場合で、手続きの複雑さが変わることがあります。おおむね100万円以下の残高であれば比較的シンプルに処理されますが、高額の場合は追加の本人確認や書類提出を求められることがあります。
口座解約が完了すると、WISEからアカウント閉鎖の確認メールが届きます。この確認メールは、相続税申告の際の証拠書類として保管しておきましょう。
ステップ5:相続税申告への反映
WISEの口座残高は、被相続人の相続財産として相続税の申告に含める必要があります。具体的な申告のポイントは以下の通りです。
- 財産の種類は「預貯金等」または「その他の財産」として計上
- 評価額は死亡日時点の為替レートで日本円に換算した金額
- WISEから受け取った残高明細書を証拠書類として保管
- 為替レートの根拠資料(銀行の公表レート等)も併せて保管
相続税の基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」です。WISE口座の残高を含めた相続財産の総額がこの基礎控除額を超える場合は、死亡日の翌日から10か月以内に相続税の申告・納付が必要です。
海外資産の申告漏れは税務調査で指摘されやすい項目の一つです。WISEのようなオンライン金融サービスの口座は見落としがちですが、適正に申告することが重要です。
よくある失敗と回避方法
失敗1:口座の存在に気づかないまま相続税を申告してしまう
故人のメールアカウントにアクセスできる場合は、WISEからの通知メールがないか確認しましょう。また、故人のスマートフォンにWISEアプリがインストールされていないかもチェックポイントです。最近は「デジタル遺産」として、オンライン口座やデジタルウォレットの把握が相続手続きの重要な一部になっています。
失敗2:英語でのやり取りに苦戦して手続きが長期化する
前述の通り、WISEは日本語サポートに対応していますが、書類のやり取りで英語が必要になる場面もあります。不安な場合は、国際相続に詳しい弁護士や行政書士に相談することも選択肢です。費用はかかりますが、手続きの長期化による精神的負担を考えれば、専門家への依頼は合理的な判断といえます。
失敗3:為替差損益の処理を忘れる
故人がWISE口座に外貨を保有していた場合、入金時のレートと死亡日のレートに差があれば、為替差損益が発生している可能性があります。これは準確定申告(故人の死亡年の所得税申告)に影響する場合があるため、税理士に相談することをおすすめします。
WISEの相続手続きと国内銀行の相続手続きの比較
以下に、WISEと国内銀行の相続手続きの主な違いを整理します。
問い合わせ方法について、国内銀行は店舗窓口での対面相談が可能ですが、WISEはオンライン(メール・チャット)が基本です。対面で相談できない分、やり取りに時間がかかる傾向があります。
必要書類について、基本的な書類(戸籍謄本、死亡診断書など)は共通していますが、WISEの場合は英訳が必要になるケースがある点が異なります。
手続き期間について、国内銀行は通常2週間〜1か月程度で完了しますが、WISEの場合は書類の確認に時間がかかることがあり、1〜3か月程度を見込んでおくとよいでしょう。
残高の受け取り方について、国内銀行は相続人の口座への振替で完了しますが、WISEの場合は海外送金扱いとなるため、受取銀行側の手数料が発生する場合があります。
WISEの手続きは国内銀行に比べて手間がかかる面がありますが、WISEのミッドマーケットレートでの両替は、国内銀行の為替手数料と比べて有利な場合が多いというメリットもあります。
こんな方は専門家への相談を検討しましょう
- WISEの口座残高が高額(数百万円以上)の場合
- 相続人が複数おり、遺産分割協議が必要な場合
- 故人がWISE以外にも海外口座や海外資産を保有していた場合
- 英語でのコミュニケーションに不安がある場合
- 相続税の申告が必要かどうか判断がつかない場合
特に、海外資産を含む相続税の申告は専門性が高く、一般の方が独力で対応するにはハードルが高い分野です。相続に強い税理士を探すなら、税理士ドットコムのような紹介サービスを利用するのも一つの方法です。税理士ドットコムは東証プライム上場企業が運営する日本最大級の税理士紹介サービスで、登録税理士数は7,300名以上、累計実績は43万件を超えています。専門のコーディネーターが無料で最適な税理士をマッチングしてくれるため、「海外資産の相続に詳しい税理士を探したい」といった具体的な希望にも対応可能です。税理士の選び方や費用相場について詳しく知りたい方は、税理士ドットコム完全ガイド記事も参考にしてみてください。
まとめ:WISE口座の相続手続きで押さえるべきポイント
WISEアカウント所有者が亡くなった場合の手続きを振り返ります。
- 口座名義人の死亡が判明したら、速やかにWISEカスタマーサポートへ連絡する
- 死亡診断書、戸籍謄本、本人確認書類など必要書類を早めに準備する
- 複数通貨の残高がある場合は、死亡日の為替レートで評価額を記録する
- 口座解約後の残高は日本の銀行口座で受け取る
- 相続財産として相続税申告に正しく反映する
デジタル化が進む現代において、WISEのようなオンライン金融サービスの口座も立派な「資産」です。生前にアカウント情報を家族と共有しておくことが、いざというときの手続きをスムーズにする最も効果的な備えといえるでしょう。
WISEの口座開設や基本的な使い方について知りたい方は、WISE個人口座の完全ガイド記事で登録方法から初めての海外送金まで詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
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