海外に住む親や親族から、生前贈与としてまとまったお金を受け取ることになった。
あるいは、海外で暮らしていた家族が亡くなり、遺産の一部を日本で受け取る必要が出てきた。
そんなとき、多くの方が最初に直面するのが「どうやって海外から日本にお金を移すのか」という問題です。
銀行の国際送金は手数料が高く、手続きも煩雑で、着金までに何日もかかることがあります。
そこで選択肢として注目されているのが、WISE(旧TransferWise)を使った海外送金です。
しかし、贈与や遺産の受け取りとなると、単なる海外送金とは異なる注意点があります。
税金の申告は必要なのか、WISEで受け取って問題はないのか、税務署から問い合わせが来たらどうすればいいのか。
海外からの贈与・相続で多くの人がつまずくポイント
「海外からのお金だから日本で課税されない」は誤解
まず最も重要な前提として、日本の税法では、お金を「受け取る側」が日本に住んでいる場合、贈与税や相続税の納税義務が発生します。これは送金元が海外であっても変わりません。つまり、海外に住む親がアメリカやヨーロッパから送金してきた場合でも、日本に住むあなたには贈与税または相続税の申告義務が生じる可能性があるのです。
「海外からの送金だから日本の税務署にはバレない」と考える方もいますが、これも誤りです。100万円を超える海外からの送金は、金融機関から税務署に「国外送金等調書」として報告される仕組みになっています。WISEを含む資金移動業者も同様の報告義務を負っているため、一定額以上の送金は税務署に把握されると考えてください。
贈与と相続では手続きがまったく異なる
海外の家族からお金を受け取るケースは、大きく2つに分かれます。一つは存命の家族からの「生前贈与」、もう一つは亡くなった家族からの「遺産相続」です。どちらもWISEで送金を受け取ること自体は可能ですが、税務上の扱いはまったく異なります。
生前贈与の場合、年間110万円の基礎控除を超える金額を受け取ると、贈与税の申告が必要になります。一方、相続の場合は、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える遺産総額に対して相続税が課されます。
さらに、海外資産が5,000万円を超える場合には「国外財産調書」の提出義務もあります。このように、受け取る金額や状況によって必要な手続きが変わるため、自分のケースがどれに該当するのかを正確に把握することが第一歩です。
送金手段の選択が記録の質に影響する
贈与や相続に関連する送金では、「いつ、誰から、いくら、何の目的で」受け取ったのかを明確に記録しておくことが極めて重要です。税務調査が入った際に、送金の経緯を証明できなければ、意図せず追徴課税を受けるリスクがあります。この点において、送金手段の選択は記録管理の観点からも重要な意味を持ちます。
WISEで海外からの贈与・遺産を受け取る具体的な手順
ステップ1:WISE個人口座を開設する
WISEで海外からの送金を受け取るには、まずWISEの個人口座(Personal Account)が必要です。口座開設はオンラインで完結し、本人確認書類(マイナンバーカードやパスポート)を提出すれば、通常数日以内に利用開始できます。
WISEの口座開設から初めての送金までの詳しい手順については、「【完全ガイド】WISE個人口座の登録から初めての海外送金まで徹底解説!手数料を抑えるコツも紹介」で分かりやすくまとめていますので、初めての方はそちらも参考にしてください。
口座を開設すると、USD、EUR、GBPなど主要通貨の受け取り用口座情報(銀行口座番号に相当するもの)が発行されます。送金する側の家族に、この口座情報を伝えることで、海外の銀行口座からWISEへの入金が可能になります。
ステップ2:送金元の家族と事前に確認すべきこと
実際に送金を行う前に、以下の点を送金元の家族と確認しておきましょう。
- 送金の目的(生前贈与なのか、遺産分割なのか、立替金の返済なのか)
- 送金金額と通貨(為替レートの変動で受取額が変わるため、基準日を決めておく)
- 送金の時期(贈与税は1月1日〜12月31日の暦年で計算されるため、年末年始の送金は特に注意)
- 贈与契約書や遺産分割協議書の準備(後述する税務対策として不可欠)
特に生前贈与の場合、口頭の約束だけで送金してしまうと、後から「本当に贈与だったのか」を証明するのが難しくなります。簡単な書面でもよいので、贈与者と受贈者の氏名、贈与の日付、金額、贈与の意思を明記した贈与契約書を作成しておくことを強くおすすめします。
ステップ3:WISEでの受け取りと円への両替
送金元の家族がWISEまたは銀行から送金を行うと、あなたのWISE口座に外貨が着金します。WISEの場合、通常1〜3営業日で着金しますが、金額が大きい場合や初回の送金では、WISEから追加の本人確認や送金目的の確認を求められることがあります。
着金した外貨は、WISE上でそのまま保有することも、日本円に両替して日本の銀行口座に出金することもできます。円への両替はWISEのミッドマーケットレート(実際の為替市場の中間レート)で行われるため、銀行の為替手数料と比較して有利な条件で両替できるのが大きなメリットです。
たとえば、10万ドル(約1,500万円相当)を受け取る場合、大手銀行の国際送金では為替マージンだけで15万〜30万円程度の差が出ることも珍しくありません。WISEでは両替手数料が明示されるため、実際にいくら受け取れるのかが事前に分かる透明性も魅力です。
ステップ4:税務申告に必要な書類を整える
送金を受け取ったら、以下の書類を必ず保管してください。税務申告や、万が一の税務調査に備えるためです。
- WISEの取引明細(送金者名、送金日、送金額、両替レート、受取額が記載されたもの)
- 贈与契約書または遺産分割協議書のコピー
- 送金元の家族の身分証明書のコピー(関係性を証明するため)
- 戸籍謄本など親族関係を証明する書類
- 海外の遺産の場合は、現地の裁判所や弁護士による遺産証明書(Probate Certificate等)
WISEの取引履歴はアカウントにログインすればいつでも確認・ダウンロードできますが、念のためPDFなどで手元にも保存しておくと安心です。
ステップ5:贈与税・相続税の申告
生前贈与で年間110万円を超える金額を受け取った場合、翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の確定申告を行います。相続の場合は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告が必要です。
海外からの贈与や相続は、国内のケースと比べて計算が複雑になりがちです。外貨建ての財産は、原則として贈与日または相続開始日のTTB(対顧客電信買相場)で日本円に換算して評価します。WISEで受け取った日と贈与の成立日が異なる場合は、贈与成立日のレートで評価する点に注意が必要です。
申告に不安がある場合は、国際税務に詳しい税理士に相談することをおすすめします。特に相続の場合は、現地の税制との二重課税を避けるための「外国税額控除」の適用なども検討する必要があり、専門家の助けを借りたほうが結果的に節税につながるケースが多いです。
よくある失敗と回避方法
実際に海外からの贈与・相続の送金で起きやすいトラブルをいくつか紹介します。
まず、複数回に分けて少額送金するケースです。年間110万円の基礎控除内に収めようと、贈与を複数年に分割して送金する方がいますが、最初から分割する計画があった場合は「定期贈与」と見なされ、総額に対して贈与税が課される可能性があります。分割して贈与する場合は、毎年あらためて贈与契約書を作成し、金額や時期に意図的な規則性を持たせないことが重要です。
次に、送金目的の説明不足です。WISEや銀行から「送金の目的は何ですか」と問い合わせが来た際に、適切に回答できないと、送金が保留・キャンセルされることがあります。贈与契約書や遺産分割協議書を手元に準備しておけば、スムーズに対応できます。
また、為替レートの確認不足も要注意です。海外の家族が送金した日と、あなたがWISEで円に両替した日では為替レートが異なります。税務上の評価額と実際の受取額に差が出ることを理解しておかないと、申告時に混乱するもとになります。
WISEと他の送金手段の比較
銀行の国際送金との違い
従来の銀行間国際送金(SWIFT送金)とWISEを比較すると、以下のような違いがあります。
- 手数料:銀行は送金手数料(3,000〜7,500円)+中継銀行手数料+為替マージンが発生。WISEは両替手数料のみで、総コストは一般的に銀行の3分の1〜5分の1程度
- 送金速度:銀行は3〜5営業日が一般的。WISEは通貨ペアにもよるが1〜2営業日で着金するケースが多い
- 為替レート:銀行は独自の為替レートに1〜3円程度のマージンを上乗せ。WISEはミッドマーケットレートを使用し、手数料は別途明示
- 透明性:銀行は最終的な受取額が着金するまで分からないことがある。WISEは送金前に受取額のシミュレーションが可能
WISEを使う際の注意点
一方で、WISEにも留意すべき点はあります。WISEは1回あたりの送金上限額が設定されており、2026年4月時点では通貨や送金方法によって異なります。数千万円規模の遺産を一度に送金することは難しい場合があるため、事前に上限額を確認してください。
また、WISEは個人間の送金サービスであり、相続手続きそのものを代行するサービスではありません。海外の銀行口座から遺産を引き出す手続き(プロベート等)は別途必要です。WISEが活躍するのは、あくまで「海外で確保した資金を日本に移す」段階です。
大きな金額の送金を予定している場合は、WISEのカスタマーサポートに事前に相談しておくと、スムーズに手続きが進むことがあります。送金目的や金額を伝えることで、必要な書類の案内を受けられます。
どんなケースにWISEが向いているか
WISEでの受け取りが特に適しているのは、数十万円〜数百万円程度の生前贈与を定期的に受け取るケース、あるいは遺産分割で確定した金額を数回に分けて日本に送金するケースです。手数料の透明性が高く、取引記録も明確に残るため、税務申告の際の根拠資料としても使いやすいのがWISEの強みといえます。
一方、数千万円以上の大口送金を一括で行う場合や、複雑な遺産分割が絡むケースでは、国際送金に強い銀行やプライベートバンクのサービスを併用することも検討してください。
まとめと次のステップ
海外の家族からWISEで生前贈与や遺産を受け取る際のポイントを整理します。
- 日本に住んでいる限り、海外からの贈与・遺産にも日本の贈与税・相続税が適用される
- WISEは手数料の透明性と送金速度に優れ、贈与や遺産の送金にも活用できる
- 贈与契約書や遺産分割協議書を必ず作成し、送金記録とあわせて保管する
- 税務上の評価は送金日ではなく贈与成立日・相続開始日の為替レートで行う
- 年間110万円超の贈与は確定申告が必要。相続は10か月以内に申告
まだWISEの口座をお持ちでない方は、まずWISEの個人口座開設ガイドを参考に口座を準備しておきましょう。実際に送金が必要になった段階で慌てないよう、事前に口座開設と少額のテスト送金を済ませておくのがおすすめです。
税務面で不安がある場合は、国際税務を取り扱っている税理士への早めの相談が、結果的に最もコストを抑える方法です。国税庁のウェブサイトでも贈与税・相続税の基本的な情報が公開されていますので、あわせて確認してみてください。