FTPやSFTPを使ったファイル転送は、多くのビジネスシーンで今なお欠かせない業務の一つです。
しかし、この単純な作業を手動で行うことには、多くの時間と手間が費やされています。
「毎日同じファイルをサーバーにアップロードしている」「ファイルのアップロード忘れや、間違ったファイルを送ってしまうミスが怖い」といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
もし、これらの定型的なファイルアップロード作業を完全に自動化できるとしたら、あなたのビジネスはどのように変わるでしょうか。
この記事では、iPaaS(Integration Platform as a Service)と呼ばれるノーコード自動化ツールの一つである「n8n」を使って、FTP/SFTPサーバーへのファイルアップロードを自動化する具体的なワークフロー設定方法を、ステップバイステップで詳しく解説します。
プログラミングの知識がなくても、この記事を読み終える頃には、あなたも面倒な手作業から解放され、業務の正確性と効率を劇的に向上させるための一歩を踏み出しているはずです。
なぜFTP/SFTPファイルアップロードの自動化が重要なのか?
多くの企業で、日次レポートの送信、バックアップデータの保管、ウェブサイトコンテンツの更新など、さまざまな目的でFTP/SFTPが利用されています。一見すると簡単な作業ですが、手動での運用には見過ごせない課題が潜んでいます。ここでは、自動化がなぜ重要なのか、その理由を深掘りしていきましょう。
手動アップロードが抱える3つの課題
手動でのファイルアップロードには、主に3つの大きな課題があります。
- 時間の浪費と生産性の低下: ファイルを選択し、サーバーに接続し、アップロードが完了するのを待つ。この一連の作業は、1回あたりは数分でも、毎日、毎週と繰り返されることで膨大な時間となります。本来、もっと付加価値の高い、戦略的な業務に使うべき貴重な時間が、単純な繰り返し作業に奪われてしまっているのです。
- ヒューマンエラーのリスク: 「急いでいたために、古いバージョンのファイルをアップロードしてしまった」「複数のファイルのうち、一つをアップロードし忘れた」といったミスは、人間が作業する以上、残念ながらゼロにはできません。こうした小さなミスが、ビジネス上の大きな損害や信用の失墜につながる可能性も否定できません。
- 業務の属人化: ファイルアップロードの手順を知っているのが特定の担当者だけ、という状況は非常に危険です。その担当者が不在の場合に業務が滞ってしまったり、退職によってノウハウが失われてしまったりするリスクを常に抱えることになります。
自動化がもたらす絶大なメリット
これらの課題は、n8nのようなツールでファイルアップロードを自動化することで、劇的に改善できます。自動化は単に「楽になる」だけではなく、ビジネスに多大な好影響をもたらします。
まず、生産性の飛躍的な向上が挙げられます。定型業務から解放された従業員は、データ分析、顧客とのコミュニケーション、新しい企画の立案といった、より創造的で思考力が求められる業務に集中できるようになります。これは、従業員のモチベーション向上にも繋がるでしょう。
次に、業務の確実性と信頼性の確保です。ワークフローは設定されたスケジュールとルールに従い、24時間365日、正確にタスクを実行します。夜間や休日であっても、ミスなく自動でファイルが転送されるため、ヒューマンエラーは根本から排除されます。これにより、ビジネスプロセスの安定性が格段に向上します。
さらに、将来的な事業拡大にも柔軟に対応できるスケーラビリティの向上も見逃せません。扱うデータ量が増えたり、転送先サーバーが増えたりしても、ワークフローの設定を少し変更するだけで対応可能です。手動作業のように、作業量が人のキャパシティを超える心配がありません。
n8nで自動化ワークフローを構築する前の準備
n8nを使ってFTP/SFTPのファイルアップロードを自動化するワークフローの作成は非常に直感的ですが、スムーズに進めるためにはいくつかの準備が必要です。ここでは、事前に揃えておくべきものと、セキュリティに関する重要な注意点について解説します。(2026年1月時点の情報)
ワークフロー作成に必要なものリスト
実際に作業を始める前に、以下の3つを手元に準備しておきましょう。
- n8nアカウント: n8nを利用するにはアカウントが必要です。n8nには、手軽に始められるクラウド版と、自社のサーバーにインストールして利用するセルフホスト版があります。まずは機能制限のない無料プランから試せるクラウド版がおすすめです。以下のリンクからサインアップできます。
>>n8nで自動化を始める - FTP/SFTPサーバーの接続情報: 自動化ワークフローがサーバーにアクセスするために必要な情報です。通常、以下の情報が必要になります。これらの情報は、サーバーの管理者から提供してもらってください。
- ホスト名 (例: ftp.example.com)
- ポート番号 (FTPは通常21, SFTPは通常22)
- ユーザー名
- パスワード (または、より安全なSSHキー)
- アップロードするファイル: どこにある、どのファイルをアップロードしたいのかを明確にしておきます。例えば、「Google Driveの特定のフォルダに保存されたCSVファイル」や「ローカルネットワーク上の共有フォルダにある日次レポート」など、ファイルの取得元とファイル名を具体的に決めておくと、後の設定がスムーズです。
最も重要なセキュリティに関する注意点
自動化ワークフローでサーバーの認証情報などを扱う際は、セキュリティに最大限の注意を払う必要があります。特に、パスワードなどの機密情報をワークフロー内に直接書き込むことは絶対に避けるべきです。
n8nには、Credentialsという機能があり、APIキーやパスワードなどの認証情報を暗号化して安全に保存できます。ワークフローを設定する際は、必ずこのCredentials機能を利用してください。一度設定すれば、ワークフローからはCredential名を選択するだけで、安全に認証情報を呼び出すことができます。
また、セキュリティの観点から、可能な限りFTPよりもSFTP(SSH File Transfer Protocol)の利用を強く推奨します。FTPは通信が暗号化されていないため、悪意のある第三者に通信内容(ユーザー名、パスワード、ファイルデータ)を盗聴されるリスクがあります。一方、SFTPは通信全体が暗号化されるため、はるかに安全です。
加えて、サーバー側で可能であれば、n8nのクラウドサーバーが使用するIPアドレスからの接続のみを許可するIPアドレス制限を設定すると、さらにセキュリティレベルを高めることができます。
【実践】n8nでFTP/SFTPアップロードワークフローを作成するステップバイステップガイド
準備が整ったら、いよいよn8nで実際にワークフローを構築していきます。ここでは、最も一般的な「毎日決まった時刻に、特定のファイルをSFTPサーバーにアップロードする」というシナリオを例に、具体的な手順を解説します。この基本をマスターすれば、さまざまな応用が可能です。
ステップ1: ワークフローのトリガーを設定する
すべてのn8nワークフローは「トリガー」から始まります。トリガーとは、ワークフローを起動するきっかけのことです。
- 新しいワークフローを作成し、最初のノード(Startノード)をクリックします。
- 検索ボックスで「Schedule」と入力し、スケジュールトリガーを選択します。
- 「Trigger Interval」を「Daily」に設定し、「Hour」にワークフローを実行したい時刻(例えば、深夜の2時)を入力します。
これで、「毎日午前2時にワークフローを開始する」というトリガーが設定できました。他にも、特定のURLにアクセスがあったら起動する「Webhook」や、Google Driveにファイルが追加されたら起動する「Google Drive Trigger」など、様々なトリガーがあります。
ステップ2: アップロードするファイルを取得する
次に、サーバーにアップロードしたいファイル自体をワークフロー内に読み込みます。ファイルの取得方法は様々ですが、ここでは例として「HTTP Request」ノードを使って、Web上にあるファイルをダウンロードする方法を紹介します。
- プラス(+)ボタンをクリックし、「HTTP Request」ノードを追加します。
- 「URL」に、ダウンロードしたいファイルのURLを入力します。
- 「Options」を開き、「Response Format」を「File」に設定します。これにより、n8nはダウンロードしたデータをファイルとして扱えるようになります。
もしファイルがGoogle DriveやDropboxにある場合は、それぞれの専用ノードを使うことで、より簡単にファイルを取得できます。
ステップ3: SFTPノードでファイルをアップロードする
いよいよ核心部分である、SFTPサーバーへのファイルアップロードです。
- プラス(+)ボタンをクリックし、「SFTP」ノードを追加します。(FTPの場合は「FTP」ノードを選択)
- 「Credential for SFTP API」の項目で、「Create New」をクリックします。
- Credentialの作成画面が開くので、準備しておいたサーバーの「Host」「Port」「User」「Password」を入力し、「Save」をクリックして保存します。これで認証情報が安全に保管されました。
- 「Operation」を「Upload」に設定します。
- 「File Path」に、サーバー上のどこにファイルを保存したいか、フルパスで入力します。(例:
/home/user/reports/daily_report.csv) - 「Binary Property」には、アップロードするファイルデータが入っているプロパティ名を指定します。前のステップでHTTP Requestノードを使った場合、通常は「data」という名前になっています。
これで基本的な設定は完了です!ワークフローを有効化(Activate)すれば、指定した時刻に自動でファイルがアップロードされるようになります。
【独自の視点】エラーハンドリングでより堅牢なワークフローに
自動化で忘れてはならないのが、エラーが発生した際の対処です。例えば、サーバーがダウンしていたり、ネットワークに問題があったりしてアップロードに失敗する可能性も考えられます。そんな時、失敗したことに気づけなければ意味がありません。
n8nでは、SFTPノードの「Settings」タブにある「Continue on Fail」をオンにすることで、エラーが発生してもワークフローを停止させないようにできます。そして、SFTPノードの失敗時の出力(赤いコネクタ)から「Slack」ノードや「Send Email」ノードに繋げることで、「ファイルアップロードに失敗しました」という通知を自動で送信する仕組みを簡単に構築できます。このようなエラーハンドリングを追加することで、ワークフローの信頼性が格段に向上し、安心して運用できるようになります。
まとめ
この記事では、n8nを活用してFTP/SFTPサーバーへのファイルアップロードを自動化する具体的な方法を、準備段階から実践的なワークフロー構築、さらにはエラーハンドリングという応用的な視点まで含めて解説しました。
手動で行っていたファイルアップロード作業を自動化することで、貴重な時間を節約し、ヒューマンエラーをなくし、より付加価値の高い業務に集中できるようになります。n8nのようなノーコードツールを使えば、専門的なプログラミング知識がなくても、このような強力な業務改善が実現可能です。
今回ご紹介したのはn8nの機能のほんの一部に過ぎません。n8nには、ここで紹介した以外にも無数の可能性があります。より体系的にn8nを学びたい方は、基本から応用までを網羅したこちらのn8n完全ガイド記事もぜひご覧ください。
まずは小さな定型業務からで構いません。あなたのビジネスにも、きっと自動化できるプロセスが眠っているはずです。ぜひ、この機会にn8nであなたの最初の自動化ワークフローを構築してみてください。
