「自分のアイデアでビジネスを始めたい」。
そんな熱い思いを持つ10代が増えています。
2022年の民法改正で成人年齢が18歳に引き下げられましたが、「18歳になる前に起業することはできないのだろうか」と考える方もいるでしょう。
結論から言うと、18歳未満の未成年者でも起業し、個人事業主になることは可能です。
しかし、そのためには特有の法的手続き、特に「親権者の同意」という重要なステップをクリアする必要があります。
この記事では、起業を目指す未成年者とその保護者の方々に向けて、開業届の提出に必要な手続き、親権者同意書の準備、そして知っておくべき注意点を具体的に解説していきます。
未成年者の起業は法律上可能?知っておくべき基本ルール
「未成年でも社長になれるの?」と疑問に思うかもしれません。まず、未成年者の起業に関する法律上の位置づけと、なぜ親権者の同意が重要になるのか、その基本を理解しておきましょう。
2026年2月時点の「成人」の定義と契約行為
2022年4月1日に民法が改正され、成人年齢は20歳から18歳に引き下げられました。これにより、18歳になれば親の同意なく、様々な契約(例えば、スマートフォンの契約やクレジットカードの作成など)を自分一人で行えるようになりました。事業を始める上でも、18歳以上であれば自分の意思で開業届を提出し、個人事業主として活動を開始できます。
一方で、18歳未満の人は「未成年者」と位置づけられます。未成年者が法律行為、つまり権利や義務を発生させるような契約などを行う場合、原則として法定代理人(多くの場合は親権者)の同意が必要と定められています。これは、社会経験の少ない未成年者を不利な契約から保護するための重要なルールです。
ビジネスの世界では、商品の仕入れ、オフィスの賃貸、ウェブサイトのサーバー契約、銀行口座の開設など、数多くの契約行為が発生します。これらの契約を未成年者が単独で行うことは法律上難しく、親権者の同意が不可欠となるのです。
なぜ開業届に「親権者の同意」が必要なのか
意外に思うかもしれませんが、税務署に提出する「開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」自体には、法律上の年齢制限は設けられていません。つまり、書類を提出する行為そのものは、極端な話、小学生でも可能です。
しかし、これはあくまで「書類上の話」です。前述の通り、事業運営には契約行為が伴います。そのため、税務署の窓口担当者によっては、未成年者が開業届を提出する際に、事業を継続的に運営する能力と意思を確認する目的で、親権者の同意書の提出を求めるケースが実務上よくあります。
同意書がなく、事業の実態が不明確だと判断された場合、開業届が受理されない可能性もゼロではありません。したがって、「開業届を出す」という目的を達成するため、そして何よりその後の事業活動をスムーズに進めるために、親権者の同意を得ておくことが事実上の必須条件と言えるでしょう。
開業届提出のステップと親権者同意書の準備
親権者の同意を得て、実際に開業届を提出するまでの流れは、大きく3つのステップに分けられます。一つずつ着実に進めていきましょう。
STEP1: 事業計画を立てて親権者を説得しよう
親権者に「起業したい」と伝える前に、まずあなた自身の熱意と本気度を形にして示すことが重要です。その最も効果的な方法が、具体的な事業計画書を作成することです。
いきなり完璧なものである必要はありませんが、以下の点を整理して説明できるように準備しましょう。
- 事業内容:どのような商品やサービスを、誰に提供するのか?
- 収益計画:どのようにして利益を上げるのか?料金設定や目標売上は?
- 資金計画:初期費用はどれくらい必要か?どうやって調達するのか?
- 事業のリスク:考えられる失敗や困難は何か?それに対してどう対策するのか?
- 学業との両立:事業にどれくらいの時間を使い、どのように学業とバランスを取るのか?
これらの計画を具体的に示すことで、単なる思いつきではないこと、真剣に事業と向き合おうとしている姿勢が伝わります。保護者の方が持つ「学業は大丈夫か」「失敗して借金を背負わないか」といった不安を解消することが、同意を得るための第一歩です。
STEP2: 親権者同意書の作成方法と記載事項
無事に同意が得られたら、「親権者同意書」を作成します。この同意書に法的に定められた決まったフォーマットはありませんが、以下の項目は必ず盛り込むようにしましょう。
- 日付:同意書を作成した年月日
- 未成年者の情報:氏名、生年月日、住所
- 親権者(法定代理人)の情報:氏名、住所、本人との続柄
- 同意する事業内容:「上記の者が行う下記の事業活動について同意します」といった文言と、具体的な事業内容(例:Webデザイン、イラスト制作、プログラミング)
- 同意の証明:親権者の自署(手書きの署名)と捺印
この同意書は、開業届と一緒に提出するほか、銀行口座の開設時など、様々な場面で必要になる可能性があるため、コピーを取っておくと安心です。
STEP3: 開業届の作成と提出
いよいよ開業届を作成します。開業届の用紙は、国税庁のウェブサイトからダウンロードするか、最寄りの税務署で直接受け取ることができます。しかし、初めての方にとっては記入項目が多く、どこに何を書けばよいか迷ってしまうかもしれません。
そこでおすすめなのが、会計ソフト会社などが提供する無料の開業届作成サービスです。例えば「マネーフォワード クラウド開業届」は、画面の案内に沿って質問に答えていくだけで、必要な情報が入力された開業届が自動で作成されます。専門知識がなくても、ミスなく簡単に書類を準備できるため、未成年で起業する方にとって心強いツールとなるでしょう。
開業届の作成から提出までの詳しい手順については、こちらの「【開業準備ガイド】個人事業主になるには?無料の「マネーフォワード クラウド開業届」で書類作成から提出まで完全サポート!」で網羅的に解説していますので、ぜひ参考にしてください。
作成した開業届は、納税地を管轄する税務署に持参、郵送、またはe-Tax(電子申告)で提出します。提出時には、作成した親権者同意書と、本人確認書類(マイナンバーカードなど)を忘れずに持参しましょう。
未成年起業家が直面する可能性のある壁と対策
開業届を無事に提出できても、それがゴールではありません。特に未成年者の場合、成人起業家とは異なる特有の壁に直面することがあります。事前に知っておくことで、冷静に対処できるでしょう。
契約の壁:銀行口座開設や賃貸契約
事業用の資金を管理するためには、プライベート用とは別の銀行口座があると便利です。「屋号付き口座」といって、屋号(お店や事業の名前)を口座名義に入れることもできます。しかし、未成年者が事業用の口座を開設しようとすると、多くの金融機関で親権者の同意書の提出や、窓口への同席を求められます。事前に必要書類を金融機関に確認しておきましょう。
また、事務所や店舗を借りる際の賃貸借契約は、未成年者一人で結ぶことは極めて困難です。高額な保証金や長期の契約期間が伴うため、ほぼ全てのケースで親権者に連帯保証人になってもらう必要があります。これも事前に相談が必須の重要事項です。
税金の壁:扶養から外れる?確定申告の義務
個人事業主として事業所得(売上から経費を引いた利益)が発生すると、税金の問題が関わってきます。特に注意したいのが、親の扶養から外れる可能性です。
2026年2月時点の税法では、あなたの年間の合計所得金額が48万円を超えると、親はあなたを扶養控除の対象にできなくなります。これにより、親が支払う所得税や住民税が増える可能性があります。また、国民健康保険料についても、所得に応じて支払い義務が発生します。税金の仕組みは複雑ですが、家計に直接影響を与える重要な問題ですので、「稼いだら扶養から外れる可能性がある」という点は、必ず事業を始める前に親権者と共有し、理解を得ておきましょう。
そして、事業で利益が出た場合は、翌年に「確定申告」を行い、所得税を納める義務があります。確定申告には、簡易な「白色申告」と、帳簿付けが複雑な代わりに最大65万円の特別控除が受けられる「青色申告」があります。青色申告は節税メリットが大きいため、起業当初から挑戦することをおすすめします。
学業との両立の壁
事業が軌道に乗り始めると、楽しくて夢中になってしまうものです。しかし、あなたはまだ学生であるということを忘れてはいけません。期末試験の勉強やレポート提出など、学生としての本分をおろそかにしないよう、タイムマネジメントを徹底することが成功の鍵です。
また、学校によっては校則でアルバイトや営利活動が禁止・制限されている場合があります。後でトラブルにならないよう、事業を始める前に必ず生徒手帳や校則を確認するか、先生に相談しておくと安心です。
まとめ:夢への第一歩は、正しい準備と周囲の理解から
18歳未満の未成年者が起業することは、決して不可能なことではありません。
しかし、法律上の制約や社会的な信用を得るために、親権者の理解と協力が不可欠であることをご理解いただけたかと思います。
事業計画をしっかりと立てて熱意を伝え、同意書を準備し、開業届を提出する。
この一連のプロセスは、あなたの夢を社会的に認めさせ、ビジネスパーソンとしての一歩を踏み出すための重要な儀式です。
また、契約や税金といった、これまで触れることのなかった大人の世界のルールを学ぶ絶好の機会でもあります。
何から手をつけていいかわからない、と感じるなら、まずは無料で使えるツールを使って、開業届がどのようなものかを作成してみることから始めてみてはいかがでしょうか。
マネーフォワード クラウド開業届なら、専門知識がなくても、スマホやPCから簡単かつ無料で必要な書類を作成できます。
この記事が、あなたの「起業したい」という情熱を具体的な行動へと変えるきっかけになれば幸いです。
