経理を外注したいけど「全権限を渡すのが怖い」という悩み
個人事業主やフリーランスとして事業が軌道に乗ってくると、日々の記帳作業に追われる時間がもったいないと感じる場面が増えてきます。
「記帳代行サービスや外注スタッフに経理を任せたい」と考えるのは自然な流れです。
しかし、いざ外部に任せようとすると、「自分のアカウントのログイン情報をそのまま渡すのは不安」「勝手に設定を変更されたらどうしよう」「銀行口座の連携情報まで見られてしまうのでは」という心配が頭をよぎります。
実はマネーフォワード クラウドには、こうした不安を解消するための「メンバー追加」と「権限設定」の機能が用意されています。
なぜ経理の外注に「権限管理」が不可欠なのか
アカウント共有がもたらす3つのリスク
経理を外注する際、もっとも手軽な方法は自分のログインIDとパスワードをそのまま共有することです。しかし、この方法には以下のような深刻なリスクが潜んでいます。
第一に、データの改ざん・削除リスクです。管理者としてログインした状態では、仕訳の入力だけでなく、過去データの修正や削除、口座連携の解除まで自由に行えてしまいます。悪意がなくても、操作ミスで重要なデータが消えてしまう可能性は十分にあります。
第二に、情報漏洩リスクです。管理者権限があれば、売上や経費の詳細はもちろん、取引先情報や銀行口座の連携状況まですべて閲覧できます。外注先との契約が終了した後もパスワードを変更し忘れれば、データへのアクセスが残り続けます。
第三に、操作履歴の不透明さです。同一アカウントでログインしている場合、誰がどの操作を行ったのかを区別できません。税務調査の際に「この仕訳は誰がいつ入力したのか」を説明できない状況は避けたいところです。
個人事業主こそ権限管理が重要な理由
法人であれば経理担当者が社内にいることが多く、対面でのコミュニケーションや社内規定による管理が可能です。一方、個人事業主の場合は外注先とのやり取りがオンライン中心となり、物理的な監視が難しくなります。
総務省の「令和5年通信利用動向調査」によると、クラウドサービスを業務に利用している企業のうち、セキュリティに不安を感じている割合は約35%に上ります。個人事業主の場合はセキュリティ担当者もいないため、ツール側の権限管理機能を活用することがもっとも現実的な対策となります。
また、2024年1月から完全義務化された電子帳簿保存法への対応においても、「誰がデータにアクセスできるか」を明確にしておくことは、適正な記録管理の観点から重要です。
筆者自身の失敗談
筆者も以前、記帳代行を依頼した際にメインアカウントの情報を共有してしまい、意図しない勘定科目の設定変更に気づくまで2か月かかった経験があります。幸い大きな実害はなかったものの、確定申告の直前に修正作業が発生し、余計な手間がかかりました。この経験から、権限を適切に分離することの大切さを痛感しました。
マネーフォワード クラウドで閲覧・入力権限のみを付与する具体的な手順
ステップ1:メンバーの追加
マネーフォワード クラウドでは、事業所に対して複数のメンバーを追加し、それぞれに異なる権限を設定できます。まずはメンバーを追加する手順を確認しましょう。
マネーフォワード クラウド確定申告にログインしたら、画面左側のメニューから「各種設定」を選択し、「事業所の設定」に進みます。続いて「メンバー追加」タブを開き、「新しいメンバーを追加する」をクリックします。
追加したい外注スタッフのメールアドレスを入力すると、招待メールが送信されます。相手がまだマネーフォワードのアカウントを持っていない場合は、無料でアカウントを作成できるため、費用面の負担を心配する必要はありません。
ステップ2:権限レベルの設定
メンバーを追加する際に、もっとも重要なのが権限レベルの選択です。2026年4月時点の情報として、マネーフォワード クラウドでは主に以下の権限レベルが用意されています。
「管理者」権限は、事業所のすべての設定変更やメンバー管理を含む全機能にアクセスできます。この権限は事業主本人のみに限定すべきです。
「編集者」権限は、仕訳の入力・編集・削除が可能ですが、事業所の設定変更やメンバー管理はできません。記帳代行スタッフにはこの権限が適しています。
「閲覧者」権限は、データの閲覧のみが可能で、新規入力や編集はできません。税理士に確認用としてアクセスを提供する場合などに使います。
記帳代行を依頼する場合は、「編集者」権限を付与するのが一般的です。これにより仕訳の入力と編集はできますが、口座連携の追加・解除や勘定科目体系の変更といった管理者レベルの操作は制限されます。
ステップ3:サービスごとのアクセス制限
マネーフォワード クラウドは確定申告だけでなく、請求書、経費、給与など複数のサービスで構成されています。メンバーに権限を付与する際は、必要なサービスのみにアクセスを限定することが大切です。
たとえば記帳代行スタッフに依頼する範囲が仕訳入力のみであれば、「クラウド確定申告」のみに編集者権限を付与し、「クラウド請求書」や「クラウド経費」へのアクセスは無効にしておきます。こうすることで、請求書に記載された取引先情報や、経費精算の個人的な支出内容が外部に見られる心配がなくなります。
ステップ4:運用ルールの策定
権限設定だけでなく、運用面でのルール策定も安全な外注に欠かせません。筆者が実際に取り入れているルールを紹介します。
まず、仕訳入力の対象範囲を明確にすることです。「銀行口座の自動取得データの仕訳登録のみ」「手入力の仕訳は事前確認が必要」など、作業範囲を具体的に文書化しておきます。
次に、定期的な確認サイクルの設定です。週次または月次で入力内容をチェックする日を決めておくと、誤りの早期発見につながります。筆者の場合は毎週金曜日に15分程度の確認時間を設けており、これだけで大きなミスの見落としを防げています。
さらに、契約終了時のアカウント削除手順もあらかじめ決めておきましょう。外注契約が終わったら、速やかに該当メンバーを事業所から削除します。この作業を忘れると、退任後もデータにアクセスできる状態が続いてしまいます。
よくある失敗と回避方法
権限設定で陥りがちなミスとして、「面倒だから管理者権限を付与してしまう」パターンがあります。記帳代行側から「管理者権限がないと作業できない」と言われることがありますが、通常の仕訳入力であれば編集者権限で十分対応可能です。管理者権限を求められた場合は、具体的にどの機能が必要なのかを確認し、本当に管理者権限が必要なケースかどうかを見極めましょう。
もうひとつの失敗例は、「テスト用にフル権限を付与し、そのまま戻し忘れる」ケースです。初期設定時に一時的に広い権限を付与した場合は、作業完了後に必ず適切な権限レベルに戻すことを習慣づけてください。
他の会計ソフトとの権限管理の比較
freeeとの比較
freee会計にも「メンバー招待」と「権限設定」の機能があり、管理者・一般・閲覧者などの権限レベルを設定できます。機能面ではマネーフォワード クラウドと大きな差はありませんが、freeeでは権限のカスタマイズが細かくできる反面、設定画面がやや複雑になる傾向があります。マネーフォワード クラウドはシンプルな権限体系で直感的に設定できるため、ITに詳しくない個人事業主でも迷いにくいのがメリットです。
弥生オンラインとの比較
やよいの青色申告オンラインにもデータ共有機能はありますが、外部スタッフへの権限付与という点ではマネーフォワード クラウドやfreeeに比べて柔軟性がやや劣ります。記帳代行の利用を前提に会計ソフトを選ぶなら、権限管理機能が充実したクラウド型サービスを選択するのが賢明です。
どんな人にマネーフォワード クラウドの権限管理がおすすめか
以下のような状況にある方には、マネーフォワード クラウドの権限管理機能が特に有効です。
- 記帳代行サービスやオンライン秘書に経理を委託したい個人事業主
- 税理士と会計データを共有しながら日常の記帳は自分で行いたい方
- 複数の事業を運営しており、事業ごとに異なるスタッフに記帳を任せたい方
- 将来的に法人化を見据え、経理体制を段階的に整備したい方
マネーフォワード クラウド確定申告の基本的な機能や料金体系について詳しく知りたい方は、「【完全ガイド】マネーフォワード クラウド確定申告とは?使い方・評判・料金まで個人事業主向けに徹底解説」の記事で網羅的にまとめていますので、あわせてご覧ください。
まとめ:権限設定で「安心して任せられる経理体制」をつくろう
記帳代行や外注スタッフにマネーフォワード クラウドのアクセス権を付与する際のポイントを整理します。
- 自分のアカウント情報は絶対に共有せず、メンバー追加機能を使う
- 外注スタッフには「編集者」権限を基本とし、管理者権限は事業主本人に限定する
- アクセスできるサービス範囲を必要最小限に絞る
- 運用ルールを事前に文書化し、定期的にチェックする仕組みをつくる
- 契約終了時にはメンバー削除を速やかに行う
これらを実践すれば、外部に経理を委託しながらもデータの安全性を確保できます。経理作業から解放された時間を、本業の売上向上や新規事業の検討に充てることができるのは、個人事業主にとって大きなメリットです。
まだマネーフォワード クラウド確定申告を導入していない方は、まずは無料プランから試してみることをおすすめします。権限管理機能の使い勝手を実際に確認してから、記帳代行の活用を検討するとスムーズです。
