この記事は https://workspaceupdates.googleblog.com/ の記事をもとに作成しています。
元記事の作成年月日:2026年3月11日
日本のGoogle Workspaceユーザーの皆様、こんにちは。
そして、これからGoogle Workspaceの導入を検討されている皆様も、当ブログをご覧いただき誠にありがとうございます。
オンライン会議(Google Meet)中にチャットで共有された重要なリンクや資料、質疑応答の履歴が、会議終了と同時に消えてしまって困った経験はありませんか。
Googleは昨年、この課題を解決するため、会議中のチャット履歴がGoogle Chat上の専用スペースに自動保存され、会議終了後もそのまま会話を続けられる「継続的会議チャット(Continuous meeting chat)」機能を発表しました。
この機能は、会議の前・中・後をシームレスに繋ぐ画期的なアップデートとして多くのユーザーに歓迎されています。
しかし一方で、企業のIT管理者やコンプライアンス担当者にとっては、「外部の参加者がいる会議のチャット履歴が、社内システムにどう残るのか?」「機密情報を含むチャットの保持期間はどう管理すべきか?」といったセキュリティ上の懸念が生じることも事実です。
今回Googleから発表されたのは、まさにこの管理者の懸念を払拭し、組織のセキュリティポリシーに合わせて継続的チャット機能を柔軟に制御できる「新しい管理コントロール」の導入です。
本記事では、この管理機能の具体的な設定方法と、コンプライアンス要件を満たすための活用シナリオを分かりやすく解説いたします。
組織の安全なコミュニケーション環境を構築するために、IT部門や情報セキュリティ担当の皆様はぜひ最後までお読みいただき、社内の運用ルールの見直しにお役立てください。
1. 「継続的会議チャット」機能のおさらいと現状
本題に入る前に、まずは「継続的会議チャット」の基本機能とその展開スケジュールについて確認しておきましょう。
これまでのGoogle Meetでは、会議中のチャットメッセージは「その場限り」のものでした。会議から退室すると、それまでやり取りされたメッセージは二度と見ることができず、議事録の作成や後日の振り返りに不便が生じていました。
そこで実装されたのが、Google MeetとGoogle Chatの強力な連携です。会議をスケジュールすると、同時にGoogle Chat内にその会議専用のチャットスペースが自動生成されます。会議の前からアジェンダを共有し、会議中はそのスペースで議論を交わし、会議が終わった後も、不参加だったメンバーを交えて「あの件はどうなりましたか?」と会話を継続できるという、非常に生産性の高い機能です。
この機能は現在、段階的にリリースされており、計画的リリースドメインをご利用のお客様への展開は、2026年3月23日の週から本格的にスタートする予定です。
つまり、多くの企業でこの機能が本格稼働する「直前」のタイミングで、今回の強力な管理者コントロール機能が提供されたことになります。
2. 今回のアップデート:管理者が設定できる「2つの新しいコントロール」
Google Workspaceの管理者は、管理コンソールの「Meetの安全設定(Meet Safety Settings)」から、この継続的会議チャットの挙動を組織単位で細かく制御できるようになりました。具体的には、以下の2つの軸でポリシーを設定できます。
① 機能のデフォルト状態(ONかOFFか)の決定
組織全体の基本方針として、この連携機能を最初から有効にしておくか、それとも無効にしておくかを選択できます。
設定は組織全体(ドメイン)だけでなく、部署ごとの組織部門(OU)、プロジェクト単位の構成グループ、あるいは個別のユーザー単位で適用可能です。
例えば、「営業部門は顧客とのやり取りが多いのでデフォルトでOFFにしておくが、社内開発チームはデフォルトでONにする」といった柔軟な運用が可能です。
② 会議の主催者(ホスト)に設定変更を「許可する」か「ロックする」か
管理者が決めたデフォルト状態に対して、各会議の主催者が、自分の会議ごとに「今回はチャットを残す」「今回は残さない」と自由に設定を変更できるかどうかを制御します。
・「主催者は変更可能(Hosts can modify)」:
管理者の設定はあくまで初期値であり、現場のユーザーの判断で柔軟にオンオフを切り替えられます。
・「主催者は変更不可(Hosts cannot modify)」:
管理者の設定が強制的にロックされます。主催者は機能のオンオフを操作できなくなり、組織の定めたポリシー(常にチャットを残す、または絶対にチャットを残さない)が確実に守られます。
3. コンプライアンスとセキュリティを守る「活用シナリオ」
この管理コントロールが導入されたことで、企業は自社のセキュリティ要件に合わせた様々な運用ポリシーを実現できるようになります。
シナリオA:新しいツールの導入を「組織のペース」で進めたい場合
新機能が突然リリースされると、現場のユーザーが混乱し、ヘルプデスクへの問い合わせが殺到することがあります。
この場合、管理者はまず全社で「デフォルトOFF(かつ主催者は変更不可)」に設定して機能を封印します。その後、マニュアルの整備や社内研修(トレーニング)を行い、準備が整った部署(OU)から順次機能を「ON」に解放していくことで、計画的でスムーズなツール浸透を図ることができます。
シナリオB:外部とのチャットによる「情報漏洩」を防ぎたい場合
社外のゲスト(クライアントやパートナー企業)が参加する会議において、会議終了後もチャットスペースが残り続けると、意図しない社内情報の流出(データスプロール)や、外部からの不適切なメッセージ受信のリスクが生じます。
このようなコンプライアンス上の懸念が強い組織では、外部との接点が多い部門に対して「デフォルトOFF(かつ主催者は変更不可)」を適用することで、チャットは従来通り「その場限り」とし、安全性を担保することができます。
シナリオC:法的要件を満たすために「すべてのチャット記録を保持」したい場合
金融機関や医療機関など、監査対応や法的コンプライアンスのために「社内で行われたすべてのコミュニケーション履歴を、改ざん不可能な状態で一定期間保存しなければならない」という厳格なルールを持つ企業があります。
この場合、管理者は「デフォルトON」に設定した上で、さらに「主催者は変更不可」でロックをかけます。
これにより、社内で行われるすべてのGoogle Meet会議のチャット履歴が、Google Chat上に確実に保存されるようになり、Google Vault(電子情報開示ツール)の保持ポリシーを適用して一括管理することが可能になります。
4. ご利用の準備と確認事項(※Google Chatの有効化が必須)
本機能を利用するにあたり、管理者およびエンドユーザーが注意すべきポイントは以下の通りです。
管理者の皆様へ(初期設定について)
この新しい管理コントロールは、デフォルト(初期状態)で「デフォルトON(Default on)」かつ「主催者は変更可能(Hosts can modify)」に設定されています。
つまり、管理者が何も操作しなければ、現場のユーザーはこれまで通り自由に機能の恩恵を受けることができます。もし組織のポリシー上、この状態が好ましくない場合は、早急に管理コンソールへログインし、設定を調整してください。
【重要】継続的会議チャット機能を組織で利用(構成)するためには、大前提として「Google Chat」自体が組織内で有効(ON)になっている必要があります。Chat機能が無効になっている環境では、この連携機能は動作しませんのでご注意ください。
エンドユーザーの皆様へ
会議の主催者(ホスト)は、管理者が「主催者は変更可能」の設定を許可している場合のみ、会議が始まる前にGoogle カレンダーの「ビデオ通話のオプション」から、継続的会議チャット機能のオン・オフを自由に切り替えることができます。
もし管理者が「主催者は変更不可(ロック)」を選択した場合、ユーザーのオプション画面からこのオン・オフの切り替えボタン(ホストコントロール)自体が消え、操作できなくなります。
5. 展開スケジュールと対象となるエディション
この強力な管理機能は、すでにすべての対象環境に向けて展開が完了しています。
展開スケジュール
本機能は、即時リリースドメインおよび計画的リリースドメインの両方において、現在すでに利用可能(Available now)となっています。管理者はすぐにコンソールから設定を確認・変更していただけます。
対象となるお客様
この変更は、以下のGoogle Workspaceをご利用の企業・団体様が対象となります。
- Business:Starter、Standard、Plus
- Enterprise:Starter、Standard、Plus
- Frontline:Starter、Standard、Plus
- Essentials:Starter、Enterprise Essentials、Enterprise Essentials Plus
- Google Workspace for Nonprofits(非営利団体向け)
※なお、Education(教育機関向け)エディションには、現時点で本機能は提供されていません。
6. まとめ:利便性とガバナンスの完璧な両立
本日は、Google Meetの「継続的会議チャット」に関する新しい管理者向けコントロール機能について解説いたしました。
新しいコラボレーションツールが導入される際、「便利になるのは嬉しいが、管理の手間やセキュリティリスクが増えるのは困る」というのは、すべてのIT管理者が抱えるジレンマです。
Google Workspaceは、こうしたエンタープライズ(企業)特有の悩みを深く理解しており、ユーザーの利便性を高める新機能をリリースする際には、必ずセットで「強力な管理とガバナンス(統制)の仕組み」を提供してくれます。
今回のアップデートにより、組織は「情報をシームレスに残して生産性を高める」というメリットと、「情報を適切にコントロールしてリスクを防ぐ」というセキュリティの両立を、自社のペースで実現できるようになりました。
すでにGoogle Workspaceを導入され、3月下旬からの本格展開を控えている管理者の皆様は、ぜひこの機会に自社のチャット・アーカイブに関するポリシーを見直し、最適な設定(OUごとの出し分けなど)を検討してみてください。
そして、これからクラウドツールの導入を検討されている方は、こうした「ただ便利なだけでなく、企業のコンプライアンスを裏側からしっかりと支える設計思想」が息づいているGoogle Workspaceのエンタープライズ品質を、ぜひご評価いただければ幸いです。
