「会社を作ったけど、結局まったく動かしていない」。
「事業をたたむつもりだけど、解散手続きが面倒でそのままにしている」。
「売上がゼロなのに、毎年税理士に数万円払うのがもったいない」。
こうした悩みを抱えている法人の代表者は、実は少なくありません。
特に副業目的で設立した法人や、コロナ禍以降に事業を縮小してそのまま放置している会社など、いわゆる「休眠会社」の問題は年々増加しています。
2026年5月時点の情報として、国税庁の統計では申告義務がありながら無申告の法人は相当数にのぼるとされています。
「年間の維持コストを限りなくゼロに近づけたい」という方にとって、すぐに行動に移せる内容をお伝えします。
売上ゼロ・休眠状態でも法人の確定申告が必要な理由
法人税法上の申告義務は「売上の有無」で決まらない
結論から言えば、法人が存在する限り、原則として毎年の確定申告(法人税・消費税・地方税)は必要です。これは売上がゼロであっても、事業活動を完全に停止していても変わりません。
個人事業主の場合、所得が一定額以下であれば確定申告が不要になるケースがあります。しかし法人は異なります。法人税法第74条では、すべての内国法人に対して各事業年度終了後2か月以内に確定申告書を提出する義務を定めています。ここに「売上がある場合に限る」といった例外規定はありません。
つまり、登記簿上に法人が存在している限り、申告義務は自動的に発生し続けるのです。
「休眠届」を出しても申告義務は消えない
よくある誤解が「税務署に休眠届(異動届出書)を出せば、申告しなくてよくなる」というものです。確かに、税務署や都道府県税事務所に「休業している」旨の届出を提出すると、税務署からの申告書の送付が止まることがあります。しかし、これは税務署側の事務処理上の対応であって、法的な申告義務が免除されたわけではありません。
実際に、休眠届を出して数年間申告をしていなかった法人が、事業を再開した際に過去の無申告分をまとめて指摘されるケースは珍しくありません。
無申告を放置するとどうなるか ― 具体的なリスク
「どうせ売上ゼロだから税金も発生しない。申告しなくても問題ないだろう」と考える方は多いのですが、実際には以下のようなリスクがあります。
- 青色申告の取り消し:2期連続で期限内に申告しないと、青色申告の承認が取り消されます。青色申告には欠損金の繰越控除(最大10年間)という大きなメリットがあり、これを失うと事業再開時に過去の赤字を活用できなくなります。
- 法人住民税の均等割が蓄積:たとえ売上がゼロでも、法人住民税の均等割(東京都23区の場合、最低でも年間約7万円)は原則として発生します。自治体によっては休眠届の提出により減免や免除を認めるケースもありますが、申告しなければそもそも減免の適用を受けることすらできません。
- みなし解散のリスク:最後の登記から12年以上経過した株式会社は、法務局の職権でみなし解散の対象になります。みなし解散されると、事業の継続や会社の復活に多大な手間と費用がかかります。
- 融資・取引への影響:将来的に銀行融資を受けたい、新しい取引先と契約したいとなった場合、過去の申告書(決算書)の提出を求められます。無申告期間があると、信用面で大きなマイナスになります。
このように、売上ゼロの会社が申告をしないことで「得をする」ことはほぼなく、むしろ将来の選択肢を狭めるリスクの方が圧倒的に大きいのです。
休眠・売上ゼロ法人の確定申告にかかる費用の実態
一般的な税理士費用の相場
通常、法人が税理士に確定申告を依頼する場合、顧問契約を結ぶのが一般的です。中小法人の顧問料は月額1万5,000円〜3万円、決算申告料は別途10万円〜20万円が相場とされており、年間で30万円〜60万円程度のコストがかかります。
売上ゼロの会社にとって、これは大きな負担です。「何も動いていない会社に年間数十万円も払うのは納得できない」と感じるのは当然でしょう。
休眠会社の申告を引き受けてくれる税理士は少ない
実はもう一つの問題があります。多くの税理士事務所は、売上がゼロまたはごくわずかな法人の申告業務を積極的には引き受けたがりません。理由は単純で、報酬額が小さいにもかかわらず、法人税申告に必要な作業量(決算書作成、申告書作成、電子申告など)は通常の法人とほぼ同じだからです。
そのため、休眠会社の代表者が「安くやってくれる税理士を探しているのに見つからない」という状況に陥りがちです。
税理士費用を最小限に抑える5つの具体的な方法
方法1:決算・申告のみのスポット契約を探す
毎月の顧問契約ではなく、年に1回の決算・申告業務だけをスポットで依頼する方法です。売上ゼロの法人であれば、仕訳数もほぼゼロに近いため、対応できる税理士が見つかれば3万円〜5万円程度で引き受けてもらえることがあります。
ただし、前述のとおり「割に合わない」と判断する税理士も多いため、複数の税理士に声をかける必要があります。ここで活用したいのが、税理士紹介サービスです。
税理士ドットコムは、登録税理士数7,309人、累計実績43万件以上を誇る日本最大級の税理士紹介サービスです。専門のコーディネーターが予算や条件をヒアリングした上で最適な税理士を紹介してくれるため、「売上ゼロの法人のスポット申告を安く引き受けてくれる税理士」というピンポイントな条件でも、効率的にマッチングしてもらえます。相談からマッチングまで完全無料で、面談後に断ることも自由です。
方法2:自分で申告する(ゼロ申告)
売上ゼロ、経費もほぼゼロという状態であれば、自力で申告書を作成することも不可能ではありません。いわゆる「ゼロ申告」と呼ばれるもので、以下の書類を作成して提出します。
- 法人税の確定申告書(別表一、別表四、別表五(一)、別表五(二)が最低限必要)
- 決算報告書(貸借対照表・損益計算書)
- 法人事業概況説明書
- 地方税(都道府県民税・市町村民税)の申告書
売上も経費もない場合、損益計算書はほぼ白紙に近い状態になり、貸借対照表も前期と変動がないため、記載内容はシンプルです。国税庁のe-Taxを利用すれば、電子申告で完結させることも可能です。
ただし注意点があります。法人税の申告書は個人の確定申告書と比べて複雑で、初めて取り組む方にはハードルが高いのが実情です。別表の記載方法を間違えると、税務署から問い合わせが来たり、修正申告が必要になるケースもあります。「本当にゼロ」の状態であっても、最初の1回は税理士に依頼して申告書の「型」を作ってもらい、翌年以降はそれを参考に自力で作成するという方法がおすすめです。
方法3:会計ソフトの法人申告機能を活用する
近年は、freeeやマネーフォワードクラウドなどの会計ソフトが法人税の申告書作成機能を提供しています。月額数千円のプランでも申告書の作成が可能で、税理士に依頼するよりも大幅にコストを抑えられます。
特に売上ゼロの法人の場合、日々の記帳作業がほぼ発生しないため、申告時期だけ短期間利用するという方法も検討できます。年間のソフト利用料を考えても、税理士への依頼費用と比較すれば数分の一に抑えられるでしょう。
方法4:法人住民税の均等割の減免制度を活用する
費用を抑えるという観点では、申告にかかる費用だけでなく、税金そのものを減らすことも重要です。法人住民税の均等割は、赤字でも休眠中でも原則として課税されますが、自治体によっては休業届を提出した法人に対して均等割の減免や免除を認めている場合があります。
例えば、東京都の場合は、事業活動を行っていない法人が「均等割申告書」を提出し、一定の条件を満たせば均等割が課されないケースがあります。ただし、この取り扱いは自治体ごとに異なるため、必ず管轄の都道府県税事務所・市区町村の税務課に確認してください。
この手続きを知っているかどうかで、年間7万円前後の差が生まれる可能性があります。
方法5:そもそも法人を閉じるべきか検討する
「今後も事業を再開する見込みがない」「維持するメリットが見当たらない」という場合は、法人を解散・清算するという選択肢も真剣に検討すべきです。
解散・清算には登記費用(登録免許税で約4万1,000円)や税理士への依頼費用がかかりますが、毎年の申告義務や均等割の負担から解放されることを考えれば、長期的にはコスト削減になるケースが多いです。
目安として、今後3年以上事業を再開する予定がないのであれば、解散手続きを進めた方が経済的に合理的です。逆に、1〜2年以内に再開の見込みがあるなら、法人を維持したまま最小コストで申告を続ける方が得策でしょう。
こうした判断は状況によって異なるため、まずは税理士に相談してみることをおすすめします。税理士ドットコムでは、解散・清算に詳しい税理士の紹介にも対応しており、「法人を維持すべきか閉じるべきか」という相談から始めることもできます。24時間Web受付で最短即日の返信体制が整っているため、忙しい方でも気軽に問い合わせが可能です。
自力申告 vs 税理士依頼 ― どちらを選ぶべきか
コスト比較
売上ゼロの法人が確定申告を行う場合の年間コストを比較すると、おおよそ以下のようになります。
- 自力申告(会計ソフト利用):年間約1万円〜3万円(ソフト利用料のみ)
- 税理士にスポット依頼:年間約3万円〜8万円
- 税理士と顧問契約:年間約15万円〜30万円
コストだけを見れば自力申告が圧倒的に安いですが、判断基準はそれだけではありません。
自力申告が向いている人
- 売上・経費ともに完全にゼロ(銀行口座の動きもない)
- 過去に法人税の申告書を作成した経験がある、または前年の申告書が手元にある
- 簿記や税務の基礎知識がある
- e-Taxの操作に抵抗がない
税理士への依頼が向いている人
- 法人税の申告書を作成した経験がない
- わずかでも経費の支出がある(事務所家賃、携帯電話代など)
- 将来の事業再開を視野に入れており、青色申告や欠損金の繰越をきちんと管理したい
- 税務リスクを最小限にしたい
- 解散するか維持するかの判断も含めて相談したい
私の経験上、最もバランスが良いのは「初年度だけ税理士に依頼し、翌年以降は前年の申告書をベースに自力で作成する」というハイブリッド型です。初年度のコストは数万円かかりますが、その後の年間コストを大幅に削減できます。
税理士選びで失敗したくない方は、税理士ドットコム完全ガイド記事で費用相場や選び方のポイントを詳しくまとめていますので、あわせて参考にしてみてください。
よくある失敗パターンと回避方法
失敗1:「休眠届を出したから大丈夫」と思い込む
前述のとおり、休眠届は申告義務を免除するものではありません。特に問題になるのが、数年後に事業を再開した際です。過去の無申告分について延滞税や無申告加算税を課されるだけでなく、青色申告の承認が取り消されていれば、過去の欠損金をまったく使えない状態からのスタートになります。
回避方法は明確で、休眠届を出していても毎年の申告は必ず行うことです。
失敗2:均等割の減免申請を忘れる
申告はきちんと行っているのに、均等割の減免申請をしていないために、毎年7万円前後を支払い続けているケースです。自治体によっては申請すれば免除されるにもかかわらず、制度の存在を知らないために損をしている法人は少なくありません。
管轄の自治体の税務課に「休業中の法人の均等割減免制度はありますか」と問い合わせるだけで確認できますので、必ず一度は確認しましょう。
失敗3:安さだけで税理士を選んでしまう
費用を抑えたいあまり、価格だけで税理士を選んでしまうと、対応が遅い、質問に答えてもらえない、申告期限ギリギリになって慌てるといったトラブルに発展することがあります。特にスポット契約の場合、税理士側の優先度が低くなりがちなので注意が必要です。
この問題を回避するには、複数の税理士から見積もりを取り、費用だけでなく対応スピードやコミュニケーションの質も比較することが重要です。税理士ドットコムのようなコーディネーター型の紹介サービスを利用すれば、条件に合わない税理士を事前にフィルタリングしてくれるため、「安いけど対応が悪い」というミスマッチを防ぎやすくなります。納得できるまで何人でも紹介を受けられ、面談後に断ることも自由なので、比較検討がしやすいのもメリットです。
まとめ ― 売上ゼロでも「申告しない」という選択はリスクが大きい
この記事のポイントを整理します。
- 法人は売上ゼロ・休眠状態でも、原則として毎年の確定申告が必要
- 無申告のまま放置すると、青色申告の取り消し、均等割の蓄積、融資時の信用低下など多くのリスクがある
- 税理士費用を抑えるには、スポット契約の活用、会計ソフトの利用、均等割の減免申請が有効
- 「初年度は税理士に依頼、翌年以降は自力」というハイブリッド型が最もコストパフォーマンスに優れる
- 3年以上再開の見込みがなければ、解散・清算も選択肢として検討すべき
まず最初に取るべきアクションは、自社の現状を正確に把握することです。現在の申告状況、青色申告の承認状況、均等割の未納がないかを確認し、その上で「維持するか・閉じるか」「自力でやるか・税理士に頼むか」を判断しましょう。
自分だけでは判断が難しいと感じたら、まずは無料で相談できる税理士ドットコムに問い合わせてみてください。コーディネーターに状況を伝えれば、最適な税理士の紹介だけでなく、法人を維持すべきかどうかの相談にも乗ってもらえます。また、税理士の費用相場や選び方について事前に理解を深めておきたい方は、税理士ドットコム完全ガイド記事もあわせてご覧ください。
年間数万円のコストと少しの手間で、将来の事業再開時に大きな差が生まれます。「何もしていないから何もしなくていい」ではなく、「何もしていない今だからこそ、最小限のコストで守りを固めておく」という発想が、結果としてあなたの会社と選択肢を守ることにつながります。
