こんにちは、小松由和です。
これまで年間100冊程度のペースで本を読んでいる私がおすすめしたい本をご紹介する書評コーナー。
今回は、今月2016年10月1日に発売した堀江貴文氏の本のご紹介です。
常に独自の鋭い視点で意見やメッセージを発信している堀江氏のお店、飲食店について、飲食店が抱えている問題点に関しての解決策や考えを書籍にまとめています。
今回のお店、飲食店についても、飲食店の中にいると目の前の業務で客観的に見れない、俯瞰的に物事を考えれないことが多いですが、堀江氏は飲食店の中の人ではなく、外の人であることと豊富なビジネス経験によって鋭い示唆を与えてくれます。
飲食店経営者はもちろん、飲食店で働く人は全員読んだ方が勉強になると思います。
飲食店に限らず、
店舗商売をしている人なら自分の働くお店に当てはめて考えれる内容がほとんどなのでおすすめです。
本に書いてあることが全部正しいとか、鵜呑みにするという話ではなく、堀江氏のビジネス経験(説明するまでもなく)、お客側の経験(365日外食とのこと)はまさに日本でもトップクラスの人の意見を、一意見として参考にするだけでも、書籍の値段を考えたら破格の値段かと。
100年続くお店にするにはどうしたら?の回答とか、お店に限らず、どんなビジネス、商売でも共通する内容だったりするので、仕事でも十分活かせる本の内容です。
内容は、これまで堀江氏がメディアやSNSなどで発信してきた情報をまとめて整理して少し付け加えたような内容ですが、文字数もそこまで多くないので短い時間でさらっと読めて、内容自体はわかりやすいけど濃いめの印象で読後感は良いです。
今回も特に気になった内容を少しピックアップしてご紹介したいと思います。
アイディアを出すには経験を積むのがいちばん
アイディアを出すには経験を積むのがいちばんだ。成功しているお店のシェフは、本当によく食べ歩いている。自分とは違うジャンルのお店に出かけ、人と会い、世界中を旅行する。世界一のレストランと呼ばれるデンマークの「NOMA」には、「食べ歩き担当」がいて、世界中の星付きレストランを食べ歩いてはレポートを書く仕事をしているという。僕が言いたいのはまさにそれだ。
世界一のレストランNOMAでさえも、常にインプットは欠かしていません。
加えて、
時間は有限であるから、インプットする内容は上質であること。(星付きレストランのレポートであること。人気のないビストロや定食屋のレポートではないということ。)
一般的な、というか、ほとんどの個人経営の飲食店のオーナーシェフ、料理人は、週6のランチ営業、ディナー営業に追われて、朝から夜遅くまで休む暇なく働いて、週1の休みも仕入れや事務仕事をして、休む暇もなければ、インプットのために外食に行くこともままならない環境で仕事をしています。
お店によって、多少差はあると思いますが、1年中たいして休むことなく働いていることはだいたい共通するのではないかと思います。大手のレストランやチェーン店も労働環境はそんなに変わらなく、簡単に言ってしまうとけっこうブラックです。たちが悪いのがそのブラック具合が中で働いている人たちにとっては普通なことで、常態化してしまっているということ。
そんな環境が飲食業界では当たり前ですが、
そんな環境、状況、常識とは裏腹に、お客さんは新しいものを求めて、美味しいものを求めています。
それらの要望に応えて、結果を出していくには、たくさんインプットをして、アイディアを考えて、行動してアウトプットし続けていく必要があります。
その
インプット→アイディアを考える→アウトプット
の流れの中で、どこかに無理があると、要望に応えきれずに、時間が経つにつれてお客さんが離れてお店が潰れてしまいます。
もちろん、外のお店に食べに行く時間が作れなくてずっと自分のお店で働き続けながら、長く続けている、長く繁盛しているお店もあります。そういうお店のシェフ、料理人は、限られた環境と時間の中で効率良くインプットしていたり(今ではインターネットで世界中の情報が手にはいります。レシピ本や情報誌を取り寄せて読んでいるかもしれません。)、大きいのは来店したお客さんとのやりとりの中でインスピレーションをもらって改善につなげるパターンだと思います。お客さんの感想や満足具合、会話からヒントがあるかもしれません。
センスのいいシェフや料理人、店主は、お客さんとのやりとりを大事にして、常に改善しているお店は繁盛しているお店が多いです。
どんな形にせよ、アイディアを生み出すには、経験、インプットが欠かせないということ。
全員がハッピーな価格設定をする
材料費をかけ、これまで自分が学んできたことに自負があるのなら、思い切って高い値付けをすることもありだと思う。人気店の必須条件である「驚き」を生み続けるには素材や、料理のためのリサーチにお金をかける必要がある。
高い価格をつけても、価格に見合う品質、価値を提供できればお客さんは満足してくれます。
よくあるダメなパターンの1つめは、高級食材を使ったり、都内の一等地に店舗があって家賃が高いなどで、原価や経費が高くなってしまったから、価格も高くして提供して、相応の品質、価値が提供できないパターン。
よくあるダメなパターンの2つめは、お客さんに喜んでもらうために、無理して価格を安く提供して、お客さんは喜んでたくさん買ってくれても、たいして儲けにならず、店主・店員の給与に反映できてない、安い材料を使うようになってしまう、など、どこかに無理が発生してしまうパターン。
個人経営のお店は特に、低価格の競争で資本がある大企業に勝つ可能性は限りなく低いです。
堀江氏も本の中で再三書いていましたが、吉野家があの低価格でそれなりの味の牛丼が提供できるのも資本力があるから。個人経営のお店が真似をして、同じ味の牛丼を同じ価格で出そうとしたら、全然儲けにならずに終了します。もっと美味しい味の牛丼を出そうとしても材料費がかかってしまって値段が高くなってしまい、この値段でこの味なら吉野家の方がいいじゃん、となります。
お店で働く人たちも無理なくハッピーに働けて、お客さんも満足してハッピーになる、全員がハッピーになる価格設定を目指しましょう。
長く続くお店の作り方
10年続くお店にしたいなら進化を止めないこと。
(中略)
100年続くレストランになるには?
革新を続けること。常に革新を続けて、変わり続けることです、いつまでも同じことをやってうまくいく時代はとっくに終わっているし、100年たってもうまくいっているお店は、おそらくなにかしらの革新をさりげなく続けているはずです。
以前私も記事で書きましたが、
長くお店を続けるには、常に革新を続けて、変わり続けることです。
これは、レストラン、飲食店、お店、に限らず、どんな仕事、ビジネスに言えると思います。
いつまでも同じことをやってうまくいく時代はとっくに終わっています。
これは、大企業の動きを見てもわかります。
Appleだって、Macの販売だけではなく、音楽プレイヤーのipodを皮切りにiphone、ipad、apple watchと革新を続けています。
日本企業だと、富士フイルム。デジタルカメラが出始めた頃から本業であった写真フィルム事業に未来はないと危機感をもって考え、複合機、医薬品、化粧品など新たな成長が期待できる事業を展開しています。
どの事例も、現状に満足して、何も改善しなくなってしまったら、長く継続することは非常に難しいということを示唆してくれています。
おわりに
私も個人経営の小さな小さな飲食店を経営している身ですが、
飲食店にありがちな勤務スタイルには明るい未来を想像できていません。(開業前からそう思っていました。)
ので、開業当初から私はかなり変わった(個人の飲食店経営者にはなかなか理解してもらえない)個人経営の飲食店の営業スタイル、勤務スタイルを貫いています。
飲食店にありがちな勤務スタイルとは、
朝からランチの仕込みをして、
ランチタイムはランチ営業で忙しく、
ランチ営業が終わって遅めのお昼休憩、
夕方前からディナーの仕込みをはじめて、
ディナータイムもディナー営業で忙しく、
ディナー営業の途中から終わってからも翌日の仕込みをする、
夜遅くに帰って、翌日のために就寝。
これが週6。
週1の定休日も人によっては仕入れや事務仕事をする。
これがよくある個人経営の飲食店の勤務スタイルです。
ランチがなくて、深夜営業やるお店なら、開始時間と終了時間がずれ込むだけ。
でも、この勤務スタイルの中に、売上をまとめたり、経費をまとめたり、データを分析したり、今後について計画したり、広告宣伝したり、は当然やる時間がありません。
どのお店もこんな状況であるから、各店がそれぞれの状況下で考えて、人を増やして業務を分散したり、事務作業、広告宣伝などは外注したり、創意工夫をしたり、効率化したりしています。
しかし、その分、人が増えれば人件費が増えて儲けが減り、外注が増えれば経費が増えて儲けが減り、となかなか大変なのです。
その一方で、相応の対価をお客さんから頂いて時間にゆとりをもって最高のサービスを提供する個人経営のレストランもありますし、大人気店で儲けまくってて効率化がうまくできているお店ももちろんあって、その勤務スタイルがすべてではありません。
個人経営の飲食店の明るい未来へのヒントはどこにあるのか。
ITやテクノロジーによる効率化によって無駄を徹底的になくすことか、
価格設定を見直すことか、
簡単に答えを出すのは難しいかもしれませんが、今回の書籍はそれらに対してインスピレーションを与えてくれるでしょう。
今回ご紹介した内容は本のごくごく一部です。
他にも、
「行き詰まっている店主が必ず口にすること3つとそれぞれの解決策」
「規制のゆるさが日本の飲食業界を多種多様に発展させた」
など、おもしろい考えが書かれています。
書籍の巻末には堀江氏おすすめの飲食店がジャンル別に掲載されてました。
ぜひ読んでみてください。