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スタートアップ投資における「シリーズA」と「シリーズB」の最大の違いは、投資先企業の「事業検証フェーズ」と「リスク・リターン構造」にあります。
シリーズAは「プロダクトと初期顧客の検証段階」で評価額の中央値が約20億円前後、シリーズBは「ビジネスモデルの再現性確認とスケール段階」で評価額の中央値が約60億〜100億円規模となります(出典:CB Insights、2026年6月時点で参照できる最新調査ベース)。
つまりシリーズAは「化けるか撤退かが分かれる賭け」、シリーズBは「勝ち筋が見えた企業の加速期」という性格を持ちます。
私自身、ベンチャーキャピタル系のアドバイザリー業務を含めて10年以上にわたりスタートアップ投資の現場に関わってきました。その中で痛感したのは、この2フェーズの違いを正しく理解しないまま投資判断をすると、リターンの期待値もリスク許容度も大きくズレてしまうという事実です。
本記事では、シリーズA・シリーズBの定義の違いから、評価額レンジ、投資家が見るべきKPI、現場で実際に起きた失敗事例、そして私が実務で固めた「投資判断3つの視点」や個人投資家が間接的にこの市場へアクセスする方法までを、2026年6月時点の情報を反映してまとめます。
この記事のポイント(2026年6月時点)
- シリーズA=可能性に投資/シリーズB=再現性に投資。検証フェーズが根本的に異なる別物の投資機会
- 国内シリーズA調達額の中央値は約3億円、シリーズBは約8〜10億円(INITIAL)。米国はその4倍前後(Crunchbase)
- シリーズAからシリーズBへ進める企業(グラジュエーション率)は約34%のみ(PitchBook)。3社に2社は次へ進めない
- 10年の実務で固まった投資判断は①PMFの質 ②ユニットエコノミクス ③バリュエーション妥当性の3視点
- 出口はIPOだけではない。VC出口の多数派は実はM&A。M&A倍率中央値3〜5倍に対しIPOは8〜15倍
- 個人がアクセスするなら間接投資が現実的。比率は資産全体の5〜15%以内に
シリーズA・シリーズBとは何か:資金調達ラウンドの全体像
スタートアップの資金調達は、創業期から上場(IPO)に至るまで、段階的にラウンドを重ねていきます。一般的には「シード」「シリーズA」「シリーズB」「シリーズC以降」「レイトステージ」と呼ばれるフェーズに分かれており、各ラウンドで投資家層・調達額・評価額・期待される成果が異なります。
資金調達ラウンドとは、スタートアップが事業の成長段階に応じて外部投資家から資金を調達する区切りのことです。アルファベット順にA・B・Cと進み、後段ほど調達額・評価額・企業の成熟度が上がっていきます。
INITIALの国内スタートアップ調達動向(2025〜2026年)によれば、日本国内のシリーズA調達額の中央値は約3億円、シリーズBは約8〜10億円と、ラウンドが進むごとに約3倍前後に拡大する傾向があります。米国市場では桁が一段上がり、Crunchbaseの最新データ(2026年6月時点)ではシリーズAの中央値が約1,200万ドル、シリーズBが約3,000万ドルとされています。
なお、評価額10億ドル以上の未上場企業を「ユニコーン」、100億ドル以上を「デカコーン」と呼びます。この上位区分の定義や世界ランキングはデカコーン・ヘクトコーンの定義と2026年最新ランキングで整理しているので、規模感を掴みたい方は併せてご覧ください。
シリーズAの定義と典型的な特徴
シリーズAは、シード期に作ったプロダクトが「最初の有償顧客」を獲得し、PMFの手前か、ようやく見え始めた段階で行われる調達です。PMF(プロダクト・マーケット・フィット)とは、製品が特定市場に確かに受け入れられ、放っておいても需要が伸びる状態を指します。
投資家が確認するのは、ARR(年間経常収益)数千万円から1〜2億円程度のトラクションと、ユニットエコノミクス(顧客1人あたりの収益と獲得コストのバランス)が黒字化しうる兆しの有無です。このフェーズの企業は組織でいえば10〜30名規模、CTO・CFOといった主要ポジションがまだ揃っていないケースも珍しくありません。
私が以前関わった国内SaaS企業では、シリーズA調達直前の月次解約率が8%と高止まりしており、調達額を当初想定の半額に減額された経験があります。教科書には「シリーズAは成長加速のラウンド」と書かれますが、現場では「事業の存続をかけた防衛戦」になることも多いのです。
シリーズBの定義と典型的な特徴
シリーズBは、PMFを達成し「同じやり方で売上を3倍・5倍にできる」ことを示すラウンドです。ARRが3〜10億円、年成長率150〜300%といった水準が一つの目安となります。組織は40〜100名規模に拡大し、営業・マーケティング・カスタマーサクセスが部門として確立し始めます。
投資家側のチェックポイントも一段とシビアになります。LTV/CAC(顧客生涯価値÷顧客獲得コスト)が3倍以上、グロスマージン(売上総利益率)70%以上、ネットレベニューリテンション(NRR)110%以上といった、SaaSのゴールドスタンダードと呼ばれる指標が問われます。シリーズAでは「可能性」を買うのに対し、シリーズBでは「再現性」を買う、という違いと言えます。
数値で比較:シリーズAとシリーズBはここが違う
抽象論だけでは判断を誤るので、私が実際の案件評価で使っている比較表を共有します。下記は2025〜2026年6月時点で観測される国内SaaS領域の典型値で、個別企業のばらつきは当然あります。
| 項目 | シリーズA | シリーズB |
|---|---|---|
| 調達額の目安 | 2〜5億円 | 8〜20億円 |
| プレマネー評価額 | 15〜30億円 | 50〜120億円 |
| ARR水準 | 3,000万〜2億円 | 3億〜10億円 |
| 従業員数 | 10〜30名 | 40〜100名 |
| 主要投資家 | 独立系VC | 大型VC・CVC・事業会社 |
| 主な使途 | 採用・PMF達成 | 営業組織構築・海外展開 |
| 失敗確率(IPO到達せず) | 約65〜75% | 約45〜55% |
注目すべきは「失敗確率」です。シリーズAから次のラウンドに進めない企業は半数以上存在し、PitchBookの集計(2026年6月時点で参照できる最新値)ではシリーズB通過率(グラジュエーションレート)は約34%とされています。つまりシリーズA出資の3社に2社は次のステージに到達せず、ダウンラウンド(評価額を下げての調達)かバリューゼロ近くの清算となるリスクを抱えているということです。
なお、シリーズBで主要な出し手となる「CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)」は、財務リターンより事業シナジーを優先する点で個人投資家とスタンスが大きく異なります。この違いはCVCと個人投資家のスタンスの違いで詳しく比較しているので、投資家構成を読み解く際の参考にしてください。
現場で見えた「シリーズBの罠」
意外に思われるかもしれませんが、私の経験上、シリーズBは「シリーズAより安全」とは言い切れません。むしろ、評価額が一気に上がる分、その後にダウンラウンドや評価額横ばい(フラットラウンド)が発生したときの含み損インパクトは深刻です。2022年以降のレイトステージSaaSのバリュエーション調整局面では、ピーク時のシリーズBから50〜70%評価額が下落した事例も散見されました。
以前の私はシリーズBを「成長の証明された安全圏」と捉えていましたが、実際に複数案件をフォローした結果、シリーズBこそ「マルチプル(PSRなどの倍率指標)の検証が最も重要なフェーズ」だと認識を改めました。教科書には載らない現場のリアルです。
シリーズAからシリーズBへ──グラジュエーションに必要な期間とマイルストーン
「34%しか通過できない」という数字だけでは、投資家として保有期間や追加出資のタイミングを設計できません。そこで、シリーズAからシリーズBへ進むまでにどれくらいの期間で、何を達成すればよいのかを、現場の肌感も交えて整理します。
典型的なグラジュエーション期間は18〜36ヶ月です。多くのスタートアップはシリーズA調達時に18〜24ヶ月分のランウェイ(資金が尽きるまでの残存期間)を確保し、その間に次ラウンドの根拠を作りにいきます。達成すべきマイルストーンの目安(国内SaaS基準)は次の通りです。
- MRR(月次経常収益)の月次成長率15〜20%以上を6ヶ月以上継続
- 月次チャーン率(解約率)を3%未満へ改善
- NRR(ネットレベニューリテンション)110%超=既存顧客だけで売上が拡大する状態
- 営業担当者1人あたりARR1,000万円以上=営業の再現性が立証されている
- ARRで概ね3〜5億円規模への到達
逆に言えば、この水準に届かないままランウェイの残り6ヶ月を切ると、ダウンラウンドかブリッジファイナンス(つなぎ調達)の交渉に入る確率が一気に高まります。投資家としては、出資から12〜18ヶ月の時点でこれらの数値が右肩上がりかどうかを点検し、追加投資(フォローオン)の可否を判断するのが定石です。
10年の実務で固まった「投資判断3つの視点」
ここからが本記事の核心です。シリーズA・Bを問わず、私が10年以上の現場で繰り返し使ってきた判断軸は、最終的に3つの視点に集約されました。順に解説します。
視点①:PMFの「質」を数値で検証する
「PMFを達成した」という言葉ほど曖昧なものはありません。私は必ず3つの数値に分解して質を測ります。
- チャーン率:月次チャーン3%未満(年率換算で30%超は赤信号)。さらに「ロゴチャーン(顧客数ベース)」と「レベニューチャーン(金額ベース)」を分けて見る。前者が高くても後者が低ければ、小口顧客の入れ替わりに過ぎず傷は浅い
- NPS(顧客推奨度):30以上が一つの目安。冒頭で触れた月次解約率8%の企業は、NPSもひと桁台でした。これは「使えるが愛されていない」典型例です
- リピート購買サイクル/利用頻度:SaaSならDAU/MAU比(毎日使う度合い)、EC・マーケットプレイスなら再購入までの日数。利用頻度が高いほどPMFは強固です
数字が揃っていても、解約理由のヒアリングログを読むと印象が一変することがあります。定量と定性を往復するのが、教科書に載らないPMF検証のコツです。
視点②:ユニットエコノミクスの損益分岐を確かめる
ユニットエコノミクスとは、顧客1人(1社)あたりで事業が黒字化するかを測る考え方です。中心指標はLTV/CACで、計算式と判定閾値は次の通りです。
- LTV(顧客生涯価値)=顧客あたり平均月額収益 × 粗利率 ÷ 月次チャーン率
- CAC(顧客獲得コスト)=営業・マーケ費用の総額 ÷ 新規獲得顧客数
- 判定閾値:LTV/CAC ≧ 3倍がSaaSの合格ライン。1〜2倍台なら獲得すればするほど資金が溶ける構造
- CAC回収期間(ペイバック):シリーズBは12ヶ月以内、シリーズAでも18ヶ月以内が許容範囲
私はここで必ず「広告依存度」を点検します。CACが見かけ上良好でも、その大半が一過性のキャンペーン由来なら再現性はありません。オーガニック獲得比率が低い企業は、シリーズBで失速しやすいというのが現場の実感です。
視点③:バリュエーションの妥当性をマルチプルで検証する
3つ目は、提示された評価額が「割高か妥当か」をマルチプルで検証する視点です。中心となるのはARRマルチプル(評価額 ÷ ARR)やPSR(株価売上高倍率)です。
- 高成長SaaSのARRマルチプルは2021年のピーク時に20倍超まで膨張しましたが、2026年6月時点では概ね8〜12倍に正常化しています
- 成長率を加味するなら「Rule of 40」を併用します。Rule of 40とは、売上成長率(%)+利益率(%)が40%を超えていれば健全とする経験則です。これを下回る企業に高いマルチプルが付いていれば、それはダウンラウンドの予備軍です
- セクターによって許容レンジは変わります(次章で詳述)
この3視点は、業種を問わず投資判断の骨格になります。とはいえ、KPIの「中身」はセクターごとに置き換える必要があります。
SaaS以外のセクターはKPIが変わる(AI・マーケットプレイス・フィンテック)
ここまでの数値はSaaS(とりわけサブスクリプション型)を前提にしています。AIスタートアップやマーケットプレイスを同じ物差しで測ると判断を誤るため、セクター別の主要KPIを対照表にまとめました。
| セクター | 重視されるKPI | シリーズAの着眼点 | シリーズBの着眼点 |
|---|---|---|---|
| SaaS | ARR・LTV/CAC・NRR | ARR3,000万〜2億円/黒字化の兆し | NRR110%超/粗利70%超の再現性 |
| AI・生成AI | ARR成長速度・推論/GPUコスト効率・粗利率・年間契約額(ACV) | PoC段階の急成長。粗利が低くても許容されやすい | 推論コスト改善による粗利率の上昇曲線が描けるか |
| マーケットプレイス | GMV成長率・テイクレート(3〜15%)・サプライヤー維持率 | GMVの立ち上がりとテイクレートの確立 | ユニット黒字化とリピート取引比率 |
| フィンテック | AUM/融資残高・デフォルト率・規制対応コスト | ライセンス取得と残高の伸び | 与信モデルの健全性とデフォルト率の安定 |
たとえばAIスタートアップは、初期は推論コスト(GPU負荷)が重く粗利率が低くても、契約規模の拡大とモデル最適化で粗利が改善する設計なら高く評価されます。SaaSの「粗利70%」を機械的に当てはめると、有望なAI案件を取りこぼします。視点①〜③の枠組みは共通でも、当てはめる数値はセクターで差し替える──これが実務の勘所です。
出口はIPOだけじゃない──M&A・セカンダリーという現実解
本記事の比較表では便宜上「IPO到達せず=失敗」と表現してきましたが、これは一面的なフレームです。実際にはVC投資の出口(Exit)の多数派はM&Aであり、リターンの主要経路として無視できません。
- M&AによるExit比率:米国ではVCバック企業のExitの件数ベースで約6〜7割をM&Aが占めます(出典:PitchBook、2026年6月時点で参照できる集計)
- 所要期間:シリーズAからM&A Exitまでの平均は5〜8年
- 倍率:M&A倍率の中央値は概ね3〜5倍。これに対しIPO倍率の中央値は8〜15倍と高いものの、IPOに到達できる企業はごく一部です
- 国内動向:日本でもスタートアップM&Aは増加傾向にあり、件数は年200件規模、平均取得額は十数億円規模と各種集計(RECOF等)で報告されています
さらに近年は、上場やM&Aを待たずに保有株を売却するセカンダリー取引も拡大しています。セカンダリーとは、未上場株式を既存株主から第三者へ譲渡する取引のことです。出口の選択肢が「IPO一本足打法」から多様化していることは、投資の時間軸とリターン期待を設計するうえで前提に置くべき事実です。
なお、出口やリスク構造をさらに掘り下げて理解したい方は、返済義務の有無で性質が分かれるベンチャーデットとエクイティ投資の違いも併せて押さえておくと、自分がどのリスクを取っているのかが明確になります。
個人投資家が取るべき具体的アプローチ
「シリーズAやシリーズBに直接投資したい」という相談を頻繁に受けますが、現実には個人投資家がエクイティで直接出資できる機会は極めて限られます。理由は明快で、未上場株式の取引には情報の非対称性、ロックアップ、譲渡制限といった構造的な障壁があるためです。ここからは、現実的な手順をステップ形式で整理します。
ステップ1:自分のリスク許容度を数値で定義する
未上場投資は流動性が低く、5〜10年資金が拘束されます。私が常に勧めているのは、ポートフォリオ全体の5〜15%以内に留め、かつ「最悪ゼロになっても生活に支障がない金額」のみを充てるルールです。3,000万円の金融資産を持つ方であれば、150〜450万円が現実的な上限ラインです。
ステップ2:投資対象の段階を選ぶ
シリーズA中心のファンドはハイリスク・ハイリターン、シリーズB以降はリスクがやや低減する代わりに想定マルチプル(リターン倍率)も縮小します。一般的にシリーズA投資の期待マルチプルは10〜30倍、シリーズBは3〜10倍、レイトステージは1.5〜3倍といった構造になります。テンバガー(10倍)狙いならアーリーステージ寄り、確実性重視ならレイト寄りという基本方針が見えてきます。
ステップ3:間接投資の選択肢を検討する
個人投資家が世界の有望スタートアップに間接的にアクセスする手段として、近年注目度が高まっているのがファンドスキームを活用した投資プラットフォームです。ユニコーン企業とは、企業価値10億ドル以上の急成長未上場スタートアップを指します。中でもHiJoJo.comは、SpaceX・OpenAI・Anthropic・xAIなど世界的に注目されるユニコーン企業を組み入れ実績に持つファンドを、100万円〜200万円単位の小口で提供しています。本ファンドの組成・販売・運用は、国内大手証券会社も出資するHiJoJo Partners株式会社(関東財務局長(金商)第3065号)が一貫して行っています(2026年6月時点)。
会員登録には金融資産3,000万円以上の保有という要件があり、契約期間は1〜5年、日本国内在住者限定という条件も設定されています。未上場株式の流動性リスクや為替リスクを十分に理解した上で、ポートフォリオ分散の一手段として検討する価値があります。登録から本人確認、入金、ファンド申込までの実際の手順や手数料の詳細は、HiJoJo.comの登録・始め方を解説したガイド記事でスクリーンショット付きでまとめているので、検討段階の方は併せて確認してみてください。
また、まとまった金額を継続的に投じるなら、個人口座だけでなく法人スキームの検討余地もあります。利益規模や保有期間によっては、資産管理会社でHiJoJo.comに投資する税務メリットの方が手取りリターンを伸ばせる場面があり、私自身も10年以上この設計で運用してきました。
ステップ4:エンジェル税制を理解して実効リターンを底上げする
国内のスタートアップへ投資する場合、エンジェル税制を使えるかどうかで実効リターンが大きく変わります。エンジェル税制とは、一定要件を満たすスタートアップへ個人が投資した際に、税制上の優遇を受けられる制度です(2026年6月時点の制度概要)。
- 優遇措置A:「対象企業への投資額−2,000円」をその年の総所得金額から控除。控除上限は「総所得金額×40%」と「800万円」のいずれか低い方
- 優遇措置B:対象企業への投資額の全額を、その年の株式譲渡益から控除(上限なし)
- プレシード・シード特例(2023年度税制改正で創設):設立5年未満の一定要件を満たす企業への投資は、譲渡益からの控除に加え、20億円までを非課税(従来の課税繰延から非課税へ拡充)
適用には、対象企業または認定された投資事業有限責任組合(認定VCファンド)経由での投資であること、確定申告時に企業や中小企業基盤整備機構が発行する「確認書」を添付することなどが要件になります。
注意点(重要):エンジェル税制はあくまで国内の対象スタートアップへの投資が前提です。HiJoJo.comのような海外ユニコーン中心のファンドは、原則としてエンジェル税制の対象外と考えるべきです。要件や金額は改正の影響を受けやすいため、実際の適用可否は国税庁・中小企業庁の最新情報を確認し、税理士に相談したうえで判断してください。
ステップ5:よくある失敗パターンを避ける
個人投資家が陥りがちな失敗を3つ挙げます。第1に「特定企業だけに集中投資する」こと。私が見てきた限り、未上場で確実に勝てる企業を事前に当てるのは至難の業で、ポートフォリオ全体での期待値設計が不可欠です。第2に「流動性を軽視する」こと。1〜5年の拘束を「短期で売れるはず」と誤解してしまうケースが目立ちます。第3に「為替リスクを織り込まない」こと。米国ユニコーン中心のファンドでは円安・円高で評価が10〜20%振れることもあります。
シリーズA投資・シリーズB投資・上場株投資の比較
最後に、3つの投資選択肢を整理します。
| 項目 | シリーズA投資 | シリーズB投資 | 上場株投資 |
|---|---|---|---|
| 期待マルチプル | 10〜30倍 | 3〜10倍 | 1.2〜3倍 |
| 失敗確率 | 65〜75% | 45〜55% | 銘柄次第(元本割れリスク) |
| 最低投資額(間接) | 100万円〜 | 100万円〜 | 数万円〜 |
| 拘束期間 | 5〜10年 | 3〜7年 | 随時売却可(流動性高) |
| 難易度 | 高 | 中 | 低〜中 |
おすすめの使い分けとしては、上場株でコア資産を構築しつつ、余剰資金の一部をシリーズB寄りのファンドで「実証フェーズの企業群」に分散、さらに少額をシリーズA寄りで「テンバガー狙い」に振る、というバーベル戦略が現実的です。コスト面では、未上場ファンドは申込手数料・管理報酬・成功報酬を含め6種類前後の手数料が発生するため、契約締結前交付書面で必ず実質コストを確認してください。
よくある質問
- シリーズAとシリーズBの一番分かりやすい違いは何ですか?
- シリーズAは「プロダクトが市場に受け入れられるかを検証する段階」、シリーズBは「受け入れられた後にスケール(規模拡大)できるかを証明する段階」です。前者は可能性、後者は再現性に投資すると理解すると分かりやすいです。
- シリーズAからシリーズBに進むにはどれくらいの期間と条件が必要ですか?
- 典型的には18〜36ヶ月です。国内SaaSの目安では、MRR月次成長15〜20%を6ヶ月以上継続、月次チャーン3%未満、NRR110%超、営業1人あたりARR1,000万円以上、ARR3〜5億円規模への到達が問われます。これらを満たせるのは全体の約34%(PitchBook)に過ぎません。
- 個人投資家がシリーズAやシリーズBに直接投資することは可能ですか?
- 直接出資は機関投資家や一部富裕層に限定されるのが一般的です。個人投資家はファンドスキームを活用したプラットフォーム経由で間接的に参加するのが現実的で、未上場株式の流動性リスクを踏まえた投資判断が必要です。
- シリーズBの方が安全と聞きましたが本当ですか?
- シリーズAより倒産リスクは低下しますが、評価額が高くなる分、ダウンラウンドやバリュエーション調整による含み損リスクは無視できません。2022年以降には50〜70%の評価額下落事例も観測されており「安全圏」と捉えるのは危険です。
- 投資判断の「3つの視点」とは具体的に何ですか?
- ①PMFの質を数値で検証(チャーン率・NPS・利用頻度)、②ユニットエコノミクスの損益分岐を確認(LTV/CAC3倍以上・CAC回収12〜18ヶ月)、③バリュエーションの妥当性をマルチプルで検証(ARRマルチプル・PSR・Rule of 40)の3つです。業種が変わってもこの枠組みは共通で、当てはめる数値だけを差し替えます。
- スタートアップ投資の出口はIPOだけですか?
- いいえ。件数ベースではM&Aが出口の多数派で、米国ではVCバック企業のExitの約6〜7割を占めます(PitchBook)。倍率はIPO(中央値8〜15倍)の方が高い一方、M&A(中央値3〜5倍)の方が到達確率は高く、近年はセカンダリー売却という選択肢も拡大しています。
- エンジェル税制はファンド投資でも使えますか?
- 国内の対象スタートアップへの投資、または認定された投資事業有限責任組合(認定VCファンド)経由の投資であれば適用余地があります。一方、海外ユニコーン中心のファンドは原則対象外です。要件・金額は改正されやすいため、最新情報を確認し税理士に相談のうえ判断してください。
- 未上場株式投資を始める前にチェックすべき点は何ですか?
- 拘束期間(1〜5年以上)、最低投資額、手数料の総コスト、譲渡制限の有無、為替リスク、運営会社の金融商品取引業者登録の有無の6点を必ず確認してください。これらは契約締結前交付書面で透明に開示されています。
まとめ:フェーズの違いを理解して自分に合った投資戦略を
シリーズAとシリーズBは、調達額・評価額・KPI・投資家構成・期待リターン・失敗確率のすべてが異なる別物の投資機会です。シリーズAは「化ける可能性」に賭ける段階、シリーズBは「再現性が見えた成長」に乗る段階と整理すると判断軸が明確になります。そのうえで、①PMFの質、②ユニットエコノミクス、③バリュエーション妥当性という3つの視点で個別案件を点検し、出口はIPOだけでなくM&A・セカンダリーまで含めて時間軸を設計するのが実務の流儀です。
個人投資家がこの市場に参加する際は、まず自身の金融資産・リスク許容度・流動性ニーズを数値で定義し、ポートフォリオ内の比率を5〜15%程度に抑えるのが堅実です。次のステップとしては、信頼できる運営会社が組成するファンドの目論見書を読み込み、手数料構造とリスク開示を比較検討してみてください。
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