個人事業主として活動していると、「今月、ちょっと事業用の資金が心もとない…」と感じる場面は少なくありません。
そんな時、とりあえず自分個人の財布や預金口座から事業の支払いを立て替える、という経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。
実はその行為、会計上では「事業主借(じぎょうぬしかり)」という勘定科目で処理する必要があります。
この処理を正しく行わないと、事業の正確な利益が分からなくなったり、融資や税務調査で不利になったりする可能性も。
この記事では、個人事業主なら絶対に押さえておきたい「事業主借」の基本的な考え方から、具体的な仕訳例、そして会計ソフトを使った効率的な管理方法まで、分かりやすく解説します。
この記事を読めば、もう事業主借の処理で迷うことはありません。
そもそも「事業主借」とは?「事業主貸」との違いを理解しよう
確定申告の準備をしていると登場する「事業主借」や「事業主貸」といった勘定科目。法人会計にはない個人事業主特有の科目なので、戸惑う方も多いかもしれません。まずは、この「事業主借」が一体何なのか、基本的な考え方から見ていきましょう。
事業主借の基本的な考え方
事業主借とは、一言でいうと「事業主(あなた個人)から、事業が一時的にお金を借りた」状態を記録するための勘定科目です。
個人事業の場合、事業とプライベートの境界が曖昧になりがちです。例えば、事業で使う事務用品を、個人の財布から出した現金で購入するケースなどがこれにあたります。この時、事業から見れば「オーナー(事業主)からお金を借りて、事務用品を買った」と解釈します。この「借りた」という事実を帳簿に残すのが事業主借の役割です。
法人の「借入金」とは異なり、事業主借には返済の義務や利息の概念はありません。あくまで事業と個人の間のお金の移動を示すもので、会計上は資本金の増減として扱われるのが特徴です。
こんな時に使う!事業主借の具体的な仕訳例
言葉だけでは分かりにくいので、具体的なケースを挙げて仕訳の方法を見てみましょう。ここでは3つの典型的なパターンを紹介します。(※この記事は2026年1月時点の情報です)
ケース1:個人の現金で事業の経費を支払った
例:個人で持っていた現金(ポケットマネー)で、事業で使う1万円分の文房具を購入した。
- (借方)消耗品費 10,000円 / (貸方)事業主借 10,000円
この仕訳により、「消耗品費という経費が1万円発生し、そのお金は事業主個人から借りた」という記録が残ります。
ケース2:個人口座から事業用口座へ資金を移動した
例:事業用の運転資金を補うため、個人名義の預金口座から事業用の預金口座へ10万円を振り替えた。
- (借方)普通預金 100,000円 / (貸方)事業主借 100,000円
これは、事業用の預金が10万円増え、その原資は事業主個人から借りたものであることを示します。
ケース3:プライベートのクレジットカードで事業経費を決済した
例:事業用のサーバー代15,000円を、プライベートで使っているクレジットカードで支払った。
- (借方)通信費 15,000円 / (貸方)事業主借 15,000円
クレジットカードの引き落としは個人口座から行われるため、これも事業主が経費を立て替えたことになり、事業主借で処理します。
「事業主借」と「事業主貸」の違いは明確に
事業主借とセットで登場するのが「事業主貸(じぎょうぬしかし)」です。これは事業主借の全く逆の概念で、「事業から、事業主(あなた個人)へお金を貸した」状態を示します。
例えば、事業用の口座から個人の生活費を引き出したり、プライベートの国民健康保険料を支払ったりした場合に使います。この2つを混同して処理してしまうと、事業のお金の流れが全く分からなくなってしまいます。「事業が借りたら事業主借」「事業が貸したら事業主貸」と、お金の方向を意識して明確に区別することが重要です。この区別が、健全な事業運営の第一歩となります。
事業主借を放置する危険性とは?適切な管理が重要な理由
「どうせ自分のお金だし、事業主借の管理なんて適当でいいや」と考えてしまうのは非常に危険です。事業主借は便利な科目である一方、適切に管理しないと様々なデメリットやリスクを生み出します。ここでは、事業主借の管理を怠ることで起こりうる3つの問題点を解説します。
1. 事業の財政状況が不透明になる
事業主借の金額が帳簿上で膨れ上がっていくと、事業が本当に儲かっているのか、それとも個人資金の投入で何とか成り立っているのか、その実態が分からなくなります。
例えば、年間の利益が50万円だったとしても、その裏で事業主借が200万円計上されていたらどうでしょうか。これは実質的に、事業で稼いだお金だけでは運営が成り立たず、個人の貯蓄を切り崩して赤字を補填している状態です。この状況を把握できていないと、「利益が出ているから大丈夫」と誤った経営判断を下しかねません。価格設定の見直しや経費削減など、本来打つべき手立てが遅れてしまう可能性があります。正確な経営状況を把握するためにも、事業主借の金額は常に意識しておく必要があります。
2. 税務調査で指摘されるリスク
確定申告書に記載された事業主借の金額が不自然に大きい場合、税務調査の際にその資金の出所について詳しく質問される可能性があります。
税務署の視点から見ると、「この多額の資金は本当に事業主個人のものなのか?」「事業の売上の一部を隠していて、それを事業主借として計上しているのではないか?」という疑念を抱くきっかけになり得ます。もちろん、正当な理由(退職金を元手にしたなど)があり、それを証明できれば問題ありません。しかし、出所を明確に説明できないと、売上除外を疑われて追徴課税の対象となるリスクもゼロではありません。
私の経験上、特に生活レベルに見合わない高額な事業主借が毎年継続して発生しているようなケースは、より詳細な説明を求められやすい傾向にあります。万が一の際に慌てないためにも、大きな金額を事業主借として投入した際は、その元となった資金の動きが分かる資料(個人の預金通帳など)を保管しておくと安心です。
3. 融資審査で不利になる可能性
将来、事業を拡大するために日本政策金融公庫や銀行からの融資を検討する際、事業主借の多さが審査の足かせになることがあります。
金融機関は、提出された決算書から「その事業が自力で利益を生み出し、継続していけるか(=返済能力があるか)」を厳しくチェックします。その際、事業主借の残高が多いと、「この事業は収益性が低く、オーナーからの資金補填がなければ回らないのではないか」と判断され、事業の将来性や返済能力に疑問符が付き、評価が下がってしまうのです。
もちろん、開業初期の設備投資などで一時的に事業主借が増えるのは自然なことです。しかし、数年にわたって事業主借が増え続けている、あるいは利益が出ていないのに減らないといった状況は、融資担当者に良い印象を与えません。健全な財務体質をアピールするためにも、事業主借に頼りすぎない事業運営を目指すことが大切です。そのためにも、まずは日々の正確な記帳が不可欠となります。
もう迷わない!会計ソフトを使った事業主借の効率的な管理術
ここまで事業主借の重要性について解説してきましたが、「分かってはいるけど、毎回の仕訳が面倒…」と感じるのが本音ではないでしょうか。特に、プライベートのクレジットカードで経費を立て替えることが多い方は、明細を見ながら一つひとつ手入力するのは大変な作業です。そこでおすすめしたいのが、会計ソフトの活用です。会計ソフトを使えば、これまで手間だと感じていた事業主借の管理を劇的に効率化できます。
なぜ会計ソフトを使うべきなのか?
Excelや手書きの帳簿で管理する場合、以下のような課題があります。
- 入力ミスや転記漏れが発生しやすい
- 借方・貸方といった複式簿記の知識が必要になる
- 後でまとめてやろうとして、膨大な作業量になる
一方、会計ソフトを導入すれば、これらの悩みから解放されます。特に、銀行口座やクレジットカードを連携する機能は非常に強力です。連携するだけで取引明細が自動で取り込まれ、面倒な入力作業がほとんど不要になります。これにより、日々の経理時間を大幅に短縮できるだけでなく、入力ミスも防ぐことができます。
マネーフォワード クラウドでの具体的な管理フロー
ここでは、人気の会計ソフト「マネーフォワード クラウド確定申告」を例に、プライベートのクレジットカードで事業経費を支払った場合の具体的な管理方法を見ていきましょう。
- クレジットカード連携
まずは、プライベートで利用しているクレジットカードをマネーフォワード クラウドに登録・連携します。 - 明細の自動取得
連携すると、利用明細が自動でソフト内に取り込まれます。 - 仕訳の登録
取り込まれた明細の中から、事業経費として支払ったものを選択します。例えば、「Amazon」での購入が事業用の備品だった場合、その明細の勘定科目を「消耗品費」として登録します。この時、プライベート用のカードからの支払いなので、ソフトが自動的に貸方を「事業主借」として処理してくれます。ユーザーは支出の内容(勘定科目)を選ぶだけで、複式簿記を意識することなく正しい仕訳が完了します。
さらに、「自動仕訳ルール」という機能を活用するのもおすすめです。例えば、「サーバー代の支払い元である〇〇社からの請求は、常に通信費/事業主借として登録する」といったルールを設定しておけば、次回以降は完全に自動で仕訳が完了します。このように、一度設定してしまえば、あとはほぼ何もしなくても経理が進んでいく環境を構築できるのが、会計ソフト最大のメリットです。
このように、会計ソフトを使えば事業主借の管理は驚くほど簡単になります。特に個人事業主の方に人気のマネーフォワード クラウド確定申告は、直感的な操作で初心者でも安心して使えます。マネーフォワード クラウドの詳しい使い方や料金、実際のユーザーからの評判については、こちらの「【完全ガイド】マネーフォワード クラウド確定申告とは?使い方・評判・料金まで個人事業主向けに徹底解説」の記事で網羅的に解説していますので、ぜひ参考にしてください。
まとめ:事業主借を正しく制して、健全な事業運営を
今回は、個人事業主にとって重要な勘定科目「事業主借」について、仕訳の方法から管理のポイント、そして放置するリスクまでを解説しました。
事業主借は、資金繰りが厳しい時に助けとなる便利な科目ですが、その管理を怠ると事業の正確な財務状況を見失い、将来の成長機会を逃すことにも繋がりかねません。重要なのは、「事業のお金」と「個人のお金」の貸し借りを、面倒くさがらずに一つひとつ記録していくことです。その地道な作業が、経営状況の正確な把握を可能にし、スムーズな確定申告、そして将来の融資審査にも有利に働きます。
もし、あなたが今、事業主借の管理を手間に感じているなら、それは会計ソフトを導入する絶好の機会かもしれません。特に、マネーフォワード クラウド確定申告は、銀行口座やクレジットカードとの連携機能が非常に優れており、事業とプライベートの支出管理を劇的に効率化してくれます。まずは1ヶ月間無料で全ての機能をお試しいただけますので、この機会にぜひその便利さを体感してみてはいかがでしょうか。
正しい会計処理で、あなたの事業をさらに成長させていきましょう。
