スマートフォンやタブレットを使って、外出先からメールをチェックしたり、資料を確認したり、ビデオ会議に参加したり…。
今や、モバイルデバイスはビジネスに不可欠なツールとなっています。
私のお客様を見ていても、オフィス外での機動的な働き方はますます一般的になっています。
しかし、その利便性の裏側には、端末の紛失・盗難による情報漏洩、不正アクセス、マルウェア感染といったセキュリティリスクが常に潜んでいます。
特に、従業員の私物端末を業務で利用するBYOD(Bring Your Own Device)を許可している場合、その管理は企業にとって大きな課題です。
私も「社員の私物スマホ、業務利用させるのは便利だけど、会社のデータは大丈夫?」といったご相談を、特にBYODを導入・検討されている中小企業の経営者の方から頻繁に受けます。
ご安心ください。Google Workspaceには、これらのモバイルデバイスを安全に管理するためのMDM(モバイルデバイス管理)機能が備わっており、適切な設定とセキュリティポリシーの策定・運用によって、リスクを大幅に低減できます。
この記事では、Google WorkspaceのMDM機能の概要、管理者が行うべき基本的な設定ステップ、そして実効性のあるモバイルセキュリティポリシー策定のポイントについて、分かりやすく解説します。
【ご注意】この記事の情報は2025年5月時点のものです。Google WorkspaceのMDM機能、管理コンソールのUI、利用可能なプランは変更される可能性があります。最新情報は必ずGoogle Workspace管理者ヘルプ等でご確認ください。
なぜモバイルデバイス管理(MDM)とセキュリティポリシーが必要なのか?
MDMと明確なセキュリティポリシーは、モバイルワークの「安心」と「効率」を両立させるために不可欠です。
- 情報漏洩リスクの低減: 端末の紛失・盗難時にも、遠隔でのデータ削除(ワイプ)や端末ロックにより、機密情報の漏洩を防ぎます。
- セキュリティ基準の統一: 会社として最低限守るべきセキュリティレベル(パスコード設定、OSバージョンなど)を全デバイスに適用できます。
- BYODの安全な推進: 従業員の私物端末でも、会社のデータ領域と個人領域を分離(例: Androidの仕事用プロファイル)するなどして、プライバシーに配慮しつつセキュリティを確保できます。
- コンプライアンス対応: 業界や法規制によっては、モバイルデバイスの適切な管理が求められる場合があります。
- 従業員の安心感向上: 明確なルールと保護措置があることで、従業員も安心してモバイルデバイスを業務に活用できます。
Google WorkspaceのMDM機能:基本管理と高度な管理
Google Workspaceでは、主に2段階のモバイルデバイス管理レベルが提供されています。
1. 基本的なモバイル管理(多くの有料プランで利用可能)
Business Starter以上の多くの有料プランで、追加費用なしで利用できる基本的なMDM機能です。主な機能は以下の通りです。
- デバイスの有効化/無効化: 組織のGoogle Workspaceアカウントにアクセスできるモバイルデバイスを管理者が承認・ブロックできます。
- パスワード(画面ロック)ポリシーの適用: デバイスの画面ロック(PIN、パスワード等)を必須にし、その強度(最低文字数など)を設定できます。
- アカウントのリモートワイプ: 紛失・盗難時に、デバイスに保存されているGoogle Workspaceのアカウント情報と関連データのみを遠隔で削除します(デバイス全体の初期化ではありません)。
- デバイス情報の確認: 管理コンソールから、組織のデータにアクセスしているモバイルデバイスの一覧やOSバージョンなどの基本情報を確認できます。
多くの中小企業にとっては、まずこの「基本的なモバイル管理」をしっかり設定・運用するだけでも、モバイルセキュリティは大きく向上します。
2. 高度なモバイル管理(Business Plus, Enterpriseエディション等)
より詳細な制御や強力なセキュリティ機能が必要な場合は、上位プランで提供される高度なMDM機能が有効です。
- より詳細なポリシー設定: デバイス全体の暗号化強制、カメラやBluetoothの使用制限、特定のOSバージョン以下はブロックなど、より多くのセキュリティポリシーを適用できます。
- アプリ管理: 業務に必要なアプリを会社として配布したり、危険性のあるアプリのインストールを禁止したりできます(ホワイトリスト/ブラックリスト方式)。
- ネットワーク設定の配布: 社内Wi-Fiの接続情報やVPN設定などを、管理者がデバイスに一括でプッシュ配信できます。
- デバイス全体のワイプ(主に会社所有端末向け): 会社が支給した端末であれば、アカウントデータだけでなく、デバイス全体をリモートで工場出荷時の状態に戻すことができます。
- Android仕事用プロファイル / iOSユーザー登録: BYOD端末で、仕事用のアプリやデータと個人用の領域を分離。会社は仕事用領域のみを管理し、個人のプライバシーを保護します。
【管理者向け】MDM基本設定のステップ(概要)
MDMの基本的な設定は、Google Workspaceの管理コンソールから行います。
- 管理コンソールでデバイス管理を有効化: [デバイス]メニューから進み、「モバイルとエンドポイント」の「設定」>「全般設定」などで、組織部門(OU)ごとにデバイス管理(例: Androidの同期、iOSの同期)を有効にします。
- 管理レベル(基本/高度)の選択: OUごとに、基本的な管理と高度な管理のどちらを適用するか選択します。(多くの場合、最初は「基本」から始めるのが推奨されます)
- パスワードポリシー(画面ロック)の強制: 「パスワード設定」セクションで、「パスワードを必須にする」をオンにし、パスワードの最低文字数や画面ロックまでの時間などを設定します。
- アカウントのワイプ設定の確認: 「アカウントのワイプ」に関する設定を確認し、従業員が自分でデバイスからアカウント情報を削除できるか、管理者が実行するかなどを把握しておきます。
- ユーザーへのデバイス登録の案内: 設定したポリシーをデバイスに適用するには、ユーザー自身がデバイスをGoogle Workspaceに登録する作業が必要です。
- Androidの場合: 「Google Apps Device Policy」アプリのインストールとセットアップを案内します。
- iOSの場合: Google Device Policyプロファイルのインストールとセットアップを案内します(Apple Push Notification Service (APNs) 証明書の設定が事前に管理者側で必要)。
この手順を分かりやすくまとめた社内マニュアルを用意すると良いでしょう。
詳細な設定手順やOSごとの注意点は、必ずGoogle Workspace管理者ヘルプで最新情報を確認してください。
モバイルセキュリティポリシー策定のポイント
MDMツールの設定と合わせて、社内の「モバイルセキュリティポリシー(規程)」を策定し、従業員に周知徹底することが非常に重要です。
ポリシーに含めるべき主要項目(例)
- 適用対象となるデバイス: 会社貸与端末のみか、私物端末(BYOD)も含むか。
- 必須セキュリティ設定: 画面ロック(パスコード)の必須化、OSの最新版へのアップデート推奨、不審なアプリのインストール禁止など。
- 業務データの取り扱い: 会社のデータを私的なクラウドストレージに保存することの禁止、機密情報の扱いに関する注意点など。
- デバイス紛失・盗難時の報告手順: いつ、誰に、何を報告するかを明確にします。(これが最も重要です!)
- 私物端末利用(BYOD)に関するルール:
- 業務利用を許可する条件(例: MDMへの登録必須)。
- 会社が管理する範囲(仕事用プロファイル内のデータのみなど)と、プライバシーへの配慮。
- 会社がリモートワイプを行う場合の対象範囲(仕事用データのみか、端末全体か – BYODでは通常仕事用データのみ)。
- ポリシー違反時の措置: 規程に違反した場合の対応について。
ポリシー作成と周知の進め方
- 現状把握とリスク評価: まず、自社でモバイルデバイスがどのように使われているか、どんなリスクがあるかを把握します。
- ポリシー案の作成: 上記項目を参考に、自社に合ったポリシー案を作成します。できるだけシンプルで分かりやすい言葉で記述しましょう。
- 関係部署との協議: 法務・人事・IT部門などで内容をレビューし、調整します。
- 従業員への説明と同意: ポリシーを制定したら、従業員に説明会を開くなどして内容を丁寧に説明し、理解と同意を得ます(特にBYODの場合)。Googleフォームで確認書を取得するのも良いでしょう。
- 定期的な見直し: 働き方の変化や新しい脅威に対応するため、ポリシーは定期的に見直し、改訂します。
中小企業がMDMとポリシー運用で成功するコツ
MDM導入やポリシー策定は、中小企業にとっては負担に感じるかもしれません。しかし、以下の点を意識すれば、現実的な範囲で効果的な対策が可能です。
- 「基本管理」+「明確なポリシー」から始めるのが現実的: 多くの中小企業では、Google Workspaceの「基本的なモバイル管理」を有効にし、全ユーザーに画面ロックを必須化し、紛失時のアカウントワイプ手順を整備するだけでも、セキュリティレベルは格段に向上します。 これに、分かりやすいモバイルセキュリティポリシーを1枚加えるところからスタートしましょう。
- BYODの場合は「プライバシーへの配慮」を最優先で丁寧に説明する: 従業員の私物端末を管理対象にする際は、「会社はあなたの個人情報を見たり、勝手に削除したりするわけではありません。あくまで会社のデータを守るため、仕事用の領域だけを管理します」という点を、誤解のないように丁寧に説明し、安心感を与えることが何よりも大切です。透明性が信頼を生みます。
- ポリシーは「生きた文書」として定期的に見直し、従業員に再周知する: 一度作って終わりではなく、最低でも年に一度は見直し、必要に応じて改訂しましょう。そして、改訂したこと、そしてなぜ改訂したのかを従業員に伝えることが重要です。私も、お客様には「ポリシーは額縁に入れて飾るものではなく、皆で実践するものですよ」とお伝えしています。
- 紛失・盗難時の「報告・連絡・相談フロー」を徹底する: デバイスを紛失した際に、「誰に」「すぐに」報告するかというフローを明確にし、訓練しておくことが、被害を最小限に抑えるために最も重要です。報告が遅れると、管理者がリモートワイプなどの措置を取る前に、情報が抜き取られるリスクが高まります。
まとめ:MDMとポリシーで、モバイルワークの「安心」と「生産性」を両立
Google Workspaceのモバイルデバイス管理(MDM)機能と、それに基づいた明確なセキュリティポリシーは、現代の多様な働き方における情報セキュリティを確保し、従業員が安心してモバイルデバイスを業務に活用できる環境を提供します。
基本的な設定からでも大きな効果が期待できますので、「うちは中小企業だから…」とためらわずに、ぜひ導入・運用を検討してみてください。それは、企業の重要な情報資産を守り、持続的な成長を支えるための重要な投資となるはずです。
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