親族の相続手続きを進めていたら、故人の資産一覧に見慣れないファンドの名前が記載されていた。
証券会社の口座には見当たらず、問い合わせ先もすぐにはわからない。
これは、未上場株式に投資するファンド(未上場株ファンド)を保有していた場合に実際に起こり得る状況です。
上場株式や投資信託と異なり、未上場株ファンドは証券取引所で価格が公開されていないため、評価額の算定や名義変更の手続きが格段に複雑になります。
なぜ未上場株ファンドは相続・贈与で問題になるのか
そもそも未上場株ファンドとは
未上場株ファンドとは、証券取引所に上場していない企業の株式を投資対象とするファンドのことです。近年、企業価値10億ドル以上の未上場企業(ユニコーン企業)への投資機会が個人投資家にも開かれつつあり、ファンドスキーム(集団投資スキーム)を通じて100万円程度から参加できるサービスも登場しています。
たとえば、HiJoJo.comは、個人投資家が世界の有望なユニコーン企業に間接的に投資できるプラットフォームとして、国内大手証券会社も出資するHiJoJo Partners株式会社(関東財務局長(金商)第3065号)が運営しています。こうしたサービスの普及に伴い、未上場株ファンドを保有する個人投資家は確実に増えています。
上場株式との決定的な違い
上場株式であれば、相続発生日の終値や月間平均値など、客観的な市場価格をもとに評価額を算定できます。しかし、未上場株ファンドには以下のような特有の問題があります。
- 市場価格が存在しない:証券取引所で売買されていないため、「今いくらなのか」が即座にはわかりません。直近の資金調達ラウンドにおける評価額や、ファンド運営会社が算出する基準価額を確認する必要があります。
- 譲渡制限がある:多くの未上場株ファンドでは、営業者(運営会社)の承諾なしに持分を第三者へ譲渡することができません。相続や贈与であっても、運営会社への届出や所定の手続きが必要になるケースがほとんどです。
- 契約期間が長い:未上場株ファンドの運用期間は一般的に1年から5年程度で、途中解約ができないことが通常です。相続が発生しても、ファンドの償還まで現金化できない可能性があります。
- 情報が分散している:証券会社の特定口座で一元管理される上場株式と異なり、未上場株ファンドはファンド運営会社との直接契約であることが多く、被相続人が契約書類を保管していないと存在自体を把握できない場合があります。
実際にどんなトラブルが起きるのか
筆者が見聞きした範囲でも、次のようなケースが報告されています。相続税の申告期限(被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内)までにファンドの評価額が確定できず、税理士が概算で申告せざるを得なかったケース。贈与税の申告時に未上場株ファンドの存在を申告から漏らしてしまい、後から修正申告が必要になったケース。いずれも「そもそも未上場株ファンドを保有していること」や「その評価方法」についての認識不足が原因でした。
相続・贈与時の未上場株ファンド 具体的な対処ステップ
ステップ1:保有資産の棚卸しと存在確認
- メールボックスの検索:ファンド運営会社からの運用報告書や申込確認メールが残っている可能性があります
- 銀行口座の入出金履歴:ファンドへの出資金の振込記録がないか確認します
- 確定申告書の控え:過去に分配金や償還益を申告していれば記録が残っています
- 自宅の書類整理:契約締結前交付書面や出資契約書が保管されていないか探します
ステップ2:ファンド運営会社への連絡と評価額の確認
保有が確認できたら、速やかにファンド運営会社に連絡します。相続の場合は、死亡診断書や戸籍謄本などの書類を求められることが一般的です。運営会社に確認すべき事項は次のとおりです。
- 相続発生日(または贈与日)時点でのファンド持分の評価額
- 名義変更に必要な手続きと書類
- ファンドの残存運用期間と償還予定時期
- 相続人(または受贈者)が引き続き保有するための資格要件
ここで注意が必要なのが、未上場株ファンドには利用資格が設定されている場合がある点です。たとえば、HiJoJo.comでは金融資産3,000万円以上の保有が会員登録の条件となっています。相続人がこの要件を満たさない場合、ファンド持分の承継方法について運営会社と個別に協議する必要が生じます。
ステップ3:税務上の評価方法を理解する
未上場株ファンドの相続税・贈与税における評価は、国税庁の財産評価基本通達に基づいて行います。一般的には、ファンドが保有する資産の時価をもとに、ファンド持分に応じた評価額を算出します。
具体的には以下の点に注意してください。
- 為替の影響:投資先が海外企業の場合、外貨建ての評価額を相続発生日の為替レート(TTB)で円換算する必要があります
- 評価時点のずれ:未上場企業の評価額は資金調達ラウンドごとに更新されるため、相続発生日時点の「最新の合理的な評価額」がいつのものかを確認する必要があります
- 流動性ディスカウントの検討:譲渡制限がある持分については、一定の評価減が認められる可能性があります。ただし、この判断は税務上の専門知識が必要なため、相続税に詳しい税理士への相談を強く推奨します
ステップ4:遺産分割協議での取り扱い
相続の場合、遺産分割協議書に未上場株ファンドの持分を記載する必要があります。記載にあたっては、ファンド名称、運営会社名、出資口数、評価額を明記します。ファンドの性質上、分割が難しい(一部だけを別の相続人に分けることが困難な)場合は、代償分割(ファンドを取得する相続人が他の相続人に現金で差額を支払う方法)を検討することになります。
よくある失敗と回避方法
最も多い失敗は「申告漏れ」です。未上場株ファンドは証券会社の残高報告書に記載されないことが多いため、税理士に資産一覧を渡す際に漏れてしまいます。これを防ぐには、生前にファンドの保有状況を家族と共有しておくことが最善の策です。
次に多いのが「評価額の過大・過小申告」です。運営会社から提供される評価額をそのまま使用してよいのか、追加の調整が必要なのかは、個別のファンドの契約内容と税務上の取り扱いによって異なります。自己判断で申告するのではなく、必ず専門家に相談してください。
未上場株ファンドと上場投資信託 相続時の比較
相続・贈与における取り扱いの違いを整理すると、以下のようになります。
- 評価の容易さ:上場投資信託は市場価格で即座に評価可能。未上場株ファンドは運営会社への照会が必要で、確定まで数週間かかることもあります
- 換金性:上場投資信託は相続後すぐに売却して納税資金に充てることが可能。未上場株ファンドは償還まで原則として換金できず、相続税の納付資金を別途用意する必要があります
- 手続きの複雑さ:上場投資信託は証券会社での名義変更で完了。未上場株ファンドは運営会社との個別交渉が必要になるケースがあります
- リターンの可能性:未上場株ファンドは流動性が低い代わりに、IPOやM&Aなどの出口イベントで大きなリターンを得られる可能性があります。相続人にとっては、換金の不便さと将来のリターンを天秤にかけた判断が求められます
このように、未上場株ファンドは上場商品に比べて相続時の負担が大きい一方、投資としての魅力は別の次元にあります。世界のユニコーン企業に個人が投資できる機会は依然として貴重であり、相続対策を講じた上で保有を継続する価値は十分にあるといえるでしょう。
生前にやっておくべき3つの備え
相続発生後に慌てないために、未上場株ファンドを保有している方は次の3つの準備をしておくことを強くおすすめします。
1. 保有ファンドの一覧表を作成し、家族と共有する
ファンド名称、運営会社名、連絡先、出資金額、契約日、償還予定日を一覧にまとめ、信頼できる家族に保管場所を伝えておきましょう。デジタル資産と同様に、「存在を知らなければ相続できない」のが未上場株ファンドの最大のリスクです。
2. 契約書類を整理・保管する
契約締結前交付書面、出資契約書、運用報告書などの書類は、相続手続きで必要になります。紙の書類はファイリングし、電子データはクラウドストレージに保存するなど、散逸しない形で管理してください。
3. 相続税の試算に未上場株ファンドを含める
相続税対策を検討する際、未上場株ファンドの評価額を含めた試算を行いましょう。ファンドの評価額は投資先企業の成長に伴い大きく変動する可能性があります。2026年5月時点の情報では、世界のトップユニコーン企業の評価額は数千億ドル規模に達しており、それらに投資するファンドの持分評価も相応の金額になり得ます。定期的な見直しが重要です。
まとめと次のアクション
相続や贈与で未上場株ファンドが問題になるのは、市場価格がない、譲渡制限がある、存在自体が見落とされやすい、という3つの特性が原因です。これらの問題は、生前の情報整理と専門家への早期相談で大部分を回避できます。
具体的に次に取るべきアクションは以下のとおりです。
- 現在保有している、または家族が保有している未上場株ファンドの有無を確認する
- 保有がある場合は、運営会社の連絡先と契約内容を一覧にまとめる
- 相続税に詳しい税理士に、未上場株ファンドを含めた資産全体の評価と対策を相談する
未上場株ファンドへの投資そのものは、ポートフォリオの分散と成長機会の獲得という観点で有効な選択肢です。HiJoJo.comのように、金融商品取引業者として登録された運営会社が一貫してファンドの組成・販売・運用を行うサービスであれば、相続時の問い合わせ窓口も明確です。投資を検討されている方は、HiJoJo.com完全ガイド記事もあわせてご覧ください。