こんにちは、小松由和(@komaty1210)です。
みなさん、外食する機会は数年前に比べて増えていますか?減っていますか?
学生から社会人になった、子供が生まれた、転職した、定年退職した、などステージが変わって、外食の回数や機会が変動することが多いと思いますが、日本全体としては、飲食店で飲食するいわゆる外食の市場規模は年々減っています。(注:飲食店以外の外食を含む外食市場全体としては年々増えています。)
外食する機会が減っている理由としては、若者のアルコール離れや家飲み宅飲みの普及、高齢者の増加(外食していた世代が高齢によって外出する機会が減った)など様々な要因が考えられます。
また、最近、海外でフードデリバリーが熱い!といったニュース記事、国内外問わず、フードデリバリー市場のニュース記事をよく見かけるようになってきました。私自身、フードデリバリー関連の仕事をしているので敏感なのだと思いますが、それを考慮しても、数年前に比べると関連ニュースが多い。
最近の日本では、タクシー配車アプリサービスのUberが運営している「UberEATS」も昨年から東京エリアでサービス開始して話題になりました。「UberEATS」は、webサイト上で登録されている近隣レストランのメニューを購入するとUberEATSスタッフ(配達員も登録制のシステムがおもしろいです)が自宅やオフィスまで届けてくれるサービスです。
Amazonもアメリカでは生鮮食料品配達「Amazon Fresh」を開始していますし、日本でも導入するのは時間の問題でしょう。(アメリカでうまくいかない場合を除いて)
他にも、アメリカや東南アジアでは、フードデリバリー市場で起業するスタートアップが乱立しているといったニュースも多く目にします。
では、日本のフードデリバリー市場の状況はどうでしょうか。
日本のフードデリバリー市場の現状を把握しつつ、日本のフードデリバリー市場の今後を考える上で注目すべきポイントを考えてみたいと思います。
今回の記事で対象とする「フードデリバリー」という言葉は、名の通り、「フード(食べ物)」を「デリバリー(配達)」する意味で捉えます。よって、宅配ピザ、宅配寿司といった定番のフードデリバリーをはじめ、私が専門としているケータリングも含まれますし、生協のような食材配達するサービスも含まれます。
日本人は外食する機会は減る一方、食の外注化は進んでいる
まず、日本のフードデリバリー市場規模の推移を確認してみます。
引用)公益財団法人 食の安全・安心財団 webサイト外食率と食の外部化率の推移
このグラフによると、外食率は年々徐々に減っているものの、食の外部化(=フードデリバリー市場)は横ばいの状態(※1)。
外食産業全体としては、一般社団法人日本フードサービス協会の統計によると、平成26年から2.2%増加して25 兆 1,816 億円と推計されていて(※2)、外食する機会は減っているものの外食市場全体では伸びているので、飲食店などに出向いて外食する機会は減って、フードデリバリーを利用する機会が増えていることを示しています。
もう1つ調査結果を見てみましょう。
2013年2014年のデータになりますが、マーケティング会社の株式会社富士経済が2014年4~9月にかけて、テイクアウト、料飲店、ファストフード、ホームデリバリー・ケータリング、レジャー施設、交通機関の6分野65業態の外食市場について調査した結果です。
引用)株式会社富士経済webサイト 国内の外食産業市場6分野65業態を調査
この調査結果でも、テイクアウト(コンビニ惣菜、量販店惣菜、など)、ファストフード、ホームデリバリー・ケータリングは前年より伸びていて、料飲店(飲食店)の市場規模は前年より下がっていることがわかります。
ファストフードも、多くのお店がマクドナルドや牛丼チェーンのように、店内で食べる、テイクアウト(一部配達も)を併用しているので、フードデリバリーと関連していると言えるでしょう。
上記の統計、調査結果から、日本のフードデリバリー市場は年々微増していることがわかります。
フードデリバリーの3つのジャンル
ここでは、フードデリバリーの今後を予測するために、フードデリバリーをジャンル別に分けて整理しておきたいと思います。
法人向け、個人向け、といった分け方や様々なジャンルの分け方がありますが、今回は食べ物の状態別に分けました。
A:食材配達型
肉、魚、野菜、など食材の配達。
実店舗スーパーで買ったものを配達してくれるのも含まれますし、生協などの食材宅配サービス、ネットスーパー、など。
有名サービスを挙げると、食材宅配サービスであれば「Oisix(オイシックス)」「パルシステム」といったところ、ネットスーパーであれば「イオンネットスーパー」、前述の「Amazon Fresh」も。
B:加工食品配達型(最終調理必要)
温めたり、など最終調理が必要な加工食品の配達。
レトルト食品、惣菜を冷凍処理してあって温めれば食べれる、など、加工食品を配達してくれるサービス。
食品の状態が違うだけで、注文、配送など提供するサービスは同じなので①と一緒に提供する会社が多い。
C:調理済み料理配達型
調理済みの料理を配達するいわゆる出前サービス。
宅配ピザ、宅配寿司などの定番デリバリーから、ケータリングも含まれます。
前述の「UberEATS」もレストランで調理されたメニューを配達するサービスなのでこのジャンルに含まれます。
今後注目したいフードデリバリーの4つのキーポイント
これから日本のフードデリバリー市場はどうなっていくのか。
今後のフードデリバリー市場で注目すべきポイントを4つ挙げます。
①レストランと消費者をつなぐフードデリバリーサービス
上記ジャンルの「C:調理済み料理配達型」に当てはまりますが、「UberEATS」のように、既存のレストランと消費者をつなぐデリバリーサービスは今後注目です。
レストラン側からすると、大変な配送と宣伝を外注することができて売上アップするなら喜んで参入する店舗は多いでしょう。
配送側の事業者からしてみても、美味しいメニュー、バリエーション豊かなメニューを自社で継続して提供するのは困難ですが、既存のレストランたちのメニューを活用することで、消費者に今までにないメリットを提供できるようになります。
消費者側からすると、今までのフードデリバリーはピザ専門、寿司専門のデリバリー会社は専門料理ばかり、ファミリーレストランなどのデリバリーは種類多いけど味がイマイチ、といった課題がありましたが、この課題をうまくクリアできているビジネスモデルです。
課題は、やはり受注と配送を担当する事業者に集中します。
web上の受注だけであれば難易度はそこまでかと思いますが、最近のヤマト運輸の配送問題しかり、レストランに調理済みのメニューを受け取りに行き、注文者のお客様のもとへ、自転車、バイク、車などで人が配送しないといけません。
利益を出しつつ、消費者に満足感高い価格帯で、スムーズに配送を提供できるかが鍵となりそうです。
②すぐに調理開始できる半調理された食材とレシピを提供するサービス
カット済みや計量済みの野菜、肉、などの食材と、レシピがセットになっているサービス。
これは、「A:食材配達型」「B:加工食品配達型(最終調理必要)」の中間に位置するサービスでしょうか。
私も食材宅配「Oisix」のサービスで体験しましたが、野菜のカットや調味料の計量が必要ないので、ちょっと凝った料理が(私が体験したのは韓国ビビンパ)あっという間に自宅で作れてしまいます。
最近では、Amazonも「Amazon Fresh」内のサービスとして、食材をすぐに調理可能な状態に整えて梱包し、顧客に届けるミールキットサービスを開始したとニュースも目にしました。
消費者の自宅で手作り料理を食べたいけど料理はしたくない(料理が苦手、時間をかけたくない、など)ニーズに応えるサービスです。
課題は、提供価格が消費者のニーズに当てはまるかということ。
サービス提供する会社の方で、食材カットや計量して梱包する手間が加わるので、単純に考えればその分料金に上乗せされます。
「Oisix」のミールキットの場合だと、当然それなりの料金でした。料理ができる私からすると、普通に食材買ってきて料理した方がいいなと思ってしまうし、料理ができない人からすると、近くのファストフードの飲食店と比べてしまうと価格は安いので外食した方が安上がり、と選択されてしまうような気がしました。
ただ、これは現状であって、今後、サービス提供側の工夫や努力によって、提供価格が下がり、コストパフォーマンスが上がれば、伸びる可能性はあるのではないかと思っています。
サービス提供側が、いかに提供価格を上げずに、メリット、魅力(凝ったメニューが自宅でつくれる、手軽に美味しい料理が自宅でできる、など)を提供できるかが鍵になりそうです。
③高齢者向けフードデリバリー
3つめは、少子高齢化社会に突入して、世界の中でも高齢化社会のトップを走っている日本では当然注目すべきポイントです。
現在でも、高齢者向けの食事や食品の宅配は確実に増加傾向にあります。今後は年齢層の人口推移からすると、さらに加速していくことは間違いないでしょう。
すでに大手企業が参入していますが、今後は、中小企業やスタートアップも参入していくのか(パイはたくさん増えていくので参入者は増える可能性高い)、どういった食がニーズあるのか(定番の栄養食、健康食なのか、はたまた味を追求したり、美食もニーズが生まれてくるのか)、介護施設はもちろん、これからは介護施設に入れない、入りたくない自宅介護の高齢者も増えていくかと思います。施設向けのフードデリバリー、一般家庭向けのフードデリバリー、どちらも需要はあると思うので、今後注目しています。
④配送代行サービスなどの付随サービス
フードデリバリーのビジネスモデルにおいて、「食品」と「配送」で構成されているので、「配送」は非常に大きなポイントです。
フードデリバリー市場が今後緩やかにでも伸びていくとすれば、自然と関連する配送需要も増えていきます。
現在でもAmazonなどweb注文の増加によりヤマト運輸の配送がパンクするなど、需要に対して供給が追いついておらず、配送の課題は山積みです。
「UberEATS」の配送は登録制の個人配送員と契約して配送を代行しています。
今後そういった個人の配送員が台頭してくるのか、はたまた、ドローンのような無人配送が台頭してくるのか、既存の大手配送会社がうまく変化に対応してくるのか、注目です。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
日本では昔から出前文化がありました。
私が小さい頃は近所の中華料理屋のチャーハンの出前を家庭で頼むことはよくあった覚えがありますが、最近では出前といえば大手のチェーン店ばかり。
小規模で出前をしている飲食店はゼロではありませんが、だいぶ減ってしまった実感があります。
ケータリング事業をしていると常々思いますが、「配送」ってめちゃめちゃ大変です。大変でコストがかかるからみんなやれないし、やりたくないから、どの小規模レストラン、飲食店は出前やデリバリーをやめてしまう(そもそもやらない)流れになっていたのかと思います。
しかし、今またフードデリバリー、出前が注目されてきています。
これから、小規模飲食店のデリバリー、出前が復活するのか、それとも大手企業の便利で質の高いサービスに集約されて、小規模飲食店はフードデリバリー市場で淘汰されていってしまうのか。
今後も継続して注目していきたいと思っているテーマです。
アメリカでは、急速にフードデリバリー市場の規模が拡大しています。
これからの飲食業界はフードデリバリーが注目!アメリカでは2022年までにフードデリバリー市場規模が2倍になる?!
フードデリバリー業界の人手不足について。
今後市場拡大が注目されるフードデリバリー(宅配)業界も人手不足。活路は飲食店舗の省人化にある。
フードデリバリー市場では、フードトラックも注目です。
毎年右肩上がりに増えている「フードトラック(キッチンカー・移動販売車)」の現状と将来性を考える
以上、「これからの日本のフードデリバリー市場で注目すべき4つのキーポイント」でした!
それではまた!
補足、参考サイトなど
※1
このグラフでは、飲食店において、テイクアウトの売上比率が全売上高の 50%未満の場合には、この飲食店の売上高は「外食率」に含まれ、50%以上の場合には「食の外部化率」に含まれている。
※2
一般社団法人 日本フードサービス協会「平成 27 年外食産業市場規模推計について」より
・宅配市場の総市場規模は2兆1,470億円の拡大基調を予測(矢野経済研究所調査)
・加熱するフードデリバリー市場、日、米、東南アジアのそれぞれの事情