最近は、飲食分野の中で、「フードデリバリー(宅配)」の分野に注目しています。
これまで、フードデリバリー(宅配)について、いくつか記事を書いてきましたが、
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少子高齢化の影響で、どの業界も人手不足。フードデリバリー (宅配)業界もご多分に漏れず、人手不足が深刻化していると日経新聞でニュースになっていました。
2018/4/10日本経済新聞電子版「宅配ピザ・すし、届けません 人手不足で持ち帰りに力」
本記事の引用は、すべて上記日経新聞の記事より。
今回は、フードデリバリーの人手不足の現状と、その先の未来について考えてみたいと思います。
フードデリバリーの人手不足の原因と現状
ピザやすしの宅配企業が配達員の人手不足を受け持ち帰りに力を入れ始めている。若者の運転免許保有者が減り配達の担い手確保が難しくなっている。今後、「脱宅配」の動きがじわりと広がる可能性がある。(中略)警察庁によると、17年末の16~24歳の運転免許保有者数は10年前に比べて約2割減の566万人と、配達の担い手は減少傾向にある。
日経新聞の記事では、フードデリバリーの人手不足の原因は、若者の運転免許保有者が減って配達するスタッフが少なくなっていることとしています。
この原因の他にも、そもそもの外食産業全体の人手不足や、最近のヤマト運輸、佐川急便など配送業界の人手不足問題と同様に、インターネットやスマホの普及によって以前に比べてフードデリバリー(宅配)の注文が増加しているにも関わらず対応できる人手が足りないという状況もあるでしょう。
フードデリバリー(宅配)の人手不足の状況をまとめると、
・若者の運転免許保有者が減っている(=雇用できる人材が減っている)
・外食産業全体も人手不足(=雇用できる人材が減っている)
・宅配の注文が増えている
といったところでしょうか。
外食産業は省人化の流れにある
ナポリの窯が持ち帰りに特化する店を出すのは初めて。最新の小型電気窯を活用。細かな焼き上げ温度の調節などを不要にし1人でも運営できる店舗にする。宅配を前提にした従来の店には、調理や配達に最大10人程度のアルバイトが必要だった
宅配ピザ「ナポリの窯」が少人数で店舗運営できるように省人化した例の説明です。
2018年現在ですら外食産業は全体的に人手不足の状況です。
今後、日本の少子高齢化は進むことは間違いなく、当然、外食産業の人手はますます不足していくことが目に見えてわかっています。
要は、今までの経営、運営と同じことをしていると、人手不足は永遠に解消されないですし、上記の宅配ピザ「ナポリの窯」のお店のように創意工夫して店舗運営のコスト構造を改善しているようなお店と競争していったら負ける可能性が高いでしょう。
つまり、今後、外食産業は従来のコスト構造を見直し、テクノロジーの導入やビジネスモデルの変換など、創意工夫をして省人化に踏み切らないと外食産業で生き残っていくことは難しいと思います。
飲食店の省人化の方法
では、飲食店舗の省人化はどのような方法が考えられるでしょうか。ここではいくつか例をあげてみたいと思います。
1つは、前述の宅配ピザ「ナポリの窯」のように、最新のテクノロジー(最新の小型電気窯)を導入して、調理スタッフを減らす方法。
調理や配達に最大10人程度必要だったのが、配達もやめて、1人で運営できるように省人化に成功しています。
次に、複数の店舗を展開しているお店に有効な方法ですが、セントラルキッチン(工場のようなキッチン)の導入です。
大手イタリアンチェーン「サイゼリア」は、大型店舗にも関わらず、店舗では温めるだけの調理オペレーションに効率化しているので、店舗の調理スタッフは1名で運営できるそうです。
複数店舗に納品する料理をセントラルキッチンで半調理して、各店舗では温めるだけなど仕上げだけの調理オペレーションにすることで、店舗の調理スタッフを減らすことができます。各店舗で調理スタッフが調理するより、セントラルキッチンで大量調理する方が断然効率がいいというわけです。
他には、オペレーションの外注化。
宅配も店舗飲食も対応している個人経営的な小規模飲食店であれば、主なオペレーションとして、「調理」「接客サービス」「宅配」があります。
例えば、「調理」を先ほど説明したセントラルキッチンのような外部企業から半調理されている料理を仕入れて温めるだけの提供にして調理時間を減らす(個人経営の飲食店にとって「調理」が一番差別化しやすいポイントなのであまりオススメはできませんが)、「宅配」をUberEATSのようなフードデリバリーサービスを活用して宅配スタッフを外注して、自分のお店のスタッフは「接客サービス」に専念する、など。
ビジネスモデルの変換の例として、前述の宅配ピザ「ナポリの窯」のように「宅配」をやめて「持ち帰り」専門店にすることで宅配スタッフを減らす、他には、店舗内での飲食が基本の飲食店であれば思い切って「宅配」専門店にして接客サービスのスタッフを減らす、など、ビジネスモデルの変換によっても省人化は可能です。
ここで紹介した飲食店の省人化の例はほんの一例ですが、工夫次第で主に人件費のコスト構造を改善することが可能です。
フードデリバリーの未来を考える
女性の社会進出や手軽さを求める消費者の増加で、宅配ピザを中心とした中食市場は伸びている。日本フードサービス協会によると、16年の中食の市場規模は10年前に比べ2割拡大し7兆5414億円となった。
人手不足がさらに深刻化すれば、宅配だけではなく、持ち帰りなどを組み合わせることでニーズを取り込む流れが強まりそうだ。
記事にあるとおり、宅配、デパ地下などの持ち帰り惣菜の中食市場の規模は年々増加しています。
それに比べて、居酒屋やレストランなど外食市場は年々減少しています。
この状況に加えて、外食産業の人手不足、宅配の人手不足の状況。
これらの状況からフードデリバリー業界はどのような未来が待っているのでしょうか。
まず、UberEATSをはじめ、フードデリバリーサービスの登場と普及によって、今後ますますフードデリバリー 市場が拡大していく可能性は高いでしょう。
それに伴って、外食から中食への人材が流れていきます。
例えば、レストランや居酒屋の経営が赤字でスタッフが雇えなくなる。働いていたスタッフは他の飲食店舗の求人を探すけど、どこの飲食店舗も景気が悪く給与など雇用条件が悪い。それに比べて、市場が伸びているフードデリバリーの調理スタッフ、宅配スタッフの求人は人手不足で雇用条件も飲食店舗よりも良い。それなら宅配スタッフとして仕事をしよう。といった具合に。
宅配の人手不足は、運輸業界の人手不足と同じで今後数年は困難な状況(宅配、配送の需要に比べて、供給する人手が足りない状況)に劇的な改善は見られないと思いますが、10年スパンで考えると、ドローン配達、自動運転車の配送、などの登場によって宅配の人手不足が解消される可能性は十分にあると考えています。
これらの考えを踏まえると、フードデリバリーの未来はそれなりに明るく、逆に従来の店舗内で飲食をする飲食店舗は今と比べると確実に数は減少していき生き残るのはますます厳しくなっていくと予想しています。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
これからの時代において、飲食店が生き残っていくには大きく2つのパターンに二極化していくと思っています。
1つは、徹底的な効率化によって安価に提供するなどコストパフォーマンスに優れたお店。
もう1つは、美味しい、人が良い、雰囲気が最高、など何でもありですが、とにかく他にはない価値が提供できるお店。
個性がなく、立ち位置が中途半端な飲食店は厳しい状況に追い込まれる可能性が高いでしょう。
他の記事でも繰り返し言っていることですが、フードデリバリー業界も今後伸びていくとはいえ、競争は厳しく、むしろ、従来の飲食店よりも厳しいものになるかもしれません。
なぜなら、勝負できる要因が従来の飲食店に比べて少ないからです。
従来の飲食店であれば、料理の味だけでなく、接客サービスで勝負もできたし、お店の内装などの雰囲気で、駅前などアクセスしやすい立地だけでも勝負ができました。
それに比べてフードデリバリーでは、接客サービス、お店の雰囲気、立地、などは影響はゼロではないもののあまり関係ありません。
単純に、料理の味や価格で比較されるでしょう。
フードデリバリー業界においても、立ち位置が中途半端なお店は厳しい状況に追い込まれる可能性は高いというわけです。
今後も引き続きフードデリバリー の動向についてチェックしていきたいと思います。
アメリカでは、急速にフードデリバリー市場の規模が拡大しています。
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以上、「今後市場拡大が注目されるフードデリバリー(宅配)業界も人手不足。活路は飲食店舗の省人化にある。」でした!
それではまた!