自宅やオフィスに設置したNAS(Network Attached Storage)は、大容量のデータを一元管理できる非常に便利なストレージです。
しかし、その便利さから外部のネットワーク、例えば外出先のカフェや出張先のホテルからアクセスしようとすると、途端にセキュリティのリスクが頭をよぎりませんか。
ポート開放などの設定は、サイバー攻撃の標的になる危険性を高めてしまいます。
そんな不安を解消し、NASの利便性を最大限に引き出すための鍵が「VPN」の活用です。
この記事では、数あるVPNサービスの中でも特に高速かつ安全なExpressVPNをSynologyやQNAPといった主要なNASに設定し、外部から鉄壁のセキュリティでアクセスするための具体的な手順を、2025年12月時点の最新情報として徹底的に解説します。
大切なデータを守りながら、どこからでも安心してNASに接続できる環境を構築しましょう。
なぜNASへの外部アクセスにVPN、特にExpressVPNが不可欠なのか?
NASを導入すると、次は「どこからでもデータにアクセスしたい」という欲求が生まれるのは自然なことです。しかし、その利便性を追求するあまり、セキュリティを疎かにしてはいけません。ここでは、なぜ標準機能だけでは不十分なのか、そしてExpressVPNがどのようにその問題を解決するのかを解説します。
NASの標準機能だけでは不十分な理由
Synologyの「QuickConnect」やQNAPの「myQNAPcloud」といった公式サービスは、確かに手軽に外部アクセスを実現してくれます。しかし、これらのサービスは手軽さの反面、通信がメーカーのサーバーを経由するため、潜在的なセキュリティリスクがゼロとは言えません。また、より直接的な方法としてルーターの「ポートフォワーディング(ポート開放)」がありますが、これは非常に危険です。
特定のポートをインターネットに公開することは、自宅のドアに「ご自由にお入りください」という看板を掲げているようなものです。攻撃者は常に開放されたポートを探しており、以下のようなリスクに晒されることになります。
- ブルートフォース攻撃: パスワードを総当たりで試され、不正にログインされる。
- ランサムウェア: NAS内のデータが暗号化され、身代金を要求される。
- 情報漏洩: 保存している個人情報や機密データが盗み出される。
これらのリスクを回避するためには、通信経路そのものを保護する仕組みが必要不可欠です。
VPNが提供する強固なセキュリティ
VPN(Virtual Private Network)は、インターネット上に仮想的なプライベートトンネルを構築する技術です。VPNを利用してNASにアクセスすると、あなたのデバイス(PCやスマートフォン)とNASとの間の通信はすべて、軍事レベルの強力な暗号化によって保護されます。
これにより、たとえ公衆Wi-Fiのような安全でないネットワークを利用していても、第三者が通信内容を盗み見ることは事実上不可能です。さらに、あなたの本当のIPアドレスはVPNサーバーのものに置き換えられるため、攻撃者があなたのネットワークを直接特定することも困難になります。つまり、VPNはNASへの安全な「秘密の通路」を作るようなものなのです。
ExpressVPNを選ぶべき独自のメリット
数あるVPNサービスの中で、なぜExpressVPNがNASとの組み合わせに最適なのでしょうか。その理由は以下の通りです。
- 業界最高クラスの通信速度: ExpressVPN独自の「Lightway」プロトコルにより、VPN接続時の速度低下を最小限に抑えます。これにより、大容量のファイル転送や高画質な動画のストリーミングもストレスなく行えます。
- 豊富なサーバーロケーション: 世界105ヶ国に広がるサーバーネットワークにより、常に安定した接続を選択できます。
- 信頼性の高いノーログポリシー: ユーザーの接続ログやアクティビティログを一切保持しないことを第三者機関によって証明済みです。プライバシー保護の観点からも非常に安心できます。
- 主要なNASでの設定実績: SynologyやQNAPのVPNクライアント機能(OpenVPN)に対応しており、手動での設定が可能です。この記事で解説する手順に沿えば、問題なく接続を確立できます。
速度、セキュリティ、プライバシー、そして設定の柔軟性。これらの要素を高いレベルで満たしているからこそ、大切なデータを預けるNASにはExpressVPNが最適なパートナーとなるのです。
【実践】Synology NASにExpressVPNを設定する手順 (OpenVPN)
ここからは、Synology社のNAS(DSM: DiskStation Manager)にExpressVPNを設定する具体的な手順を解説します。この手順により、NASから発信されるすべての通信をExpressVPN経由にすることができます。
準備するもの
- ExpressVPNのアカウント(未契約の方はこちらのリンクからサインアップできます)
- Synology NAS(DSM 7.0以降を推奨)
- ExpressVPNアカウントのOpenVPN用ユーザー名とパスワード
OpenVPN用の認証情報は、ExpressVPN公式サイトのアカウントページにログイン後、手動設定のセクションで確認できます。
ExpressVPNからOpenVPN設定ファイルを取得
まず、NASに設定するためのOpenVPN設定ファイル(.ovpn)をダウンロードします。
- ExpressVPNの公式サイトにログインします。
- 「製品」セクションから「詳細設定」または「手動設定」のページに移動します。
- 「ルーター」または「OpenVPN」のタブを選択します。先に確認したOpenVPN用のユーザー名とパスワードが表示されているはずです。
- 接続したいサーバーロケーションを選択し、対応する「.ovpn」ファイルをダウンロードします。例えば、「Japan – Tokyo」などを選ぶと良いでしょう。
このファイルをPCの分かりやすい場所に保存しておきます。
Synology DSMでのVPNプロファイル作成
次に、ダウンロードした設定ファイルを使ってSynology NASにVPNプロファイルを作成します。
- Synology DSMにログインし、「コントロールパネル」を開きます。
- 「ネットワーク」を選択し、「ネットワークインターフェイス」タブに移動します。
- 「作成」ボタンをクリックし、「VPNプロファイルを作成」を選択します。
- 接続方法の選択画面で「OpenVPN (OVPN ファイルをインポート)」にチェックを入れ、「次へ」をクリックします。
- 以下の情報を入力します。
- プロファイル名: 任意の名(例: ExpressVPN_Tokyo)
- ユーザー名: ExpressVPNのサイトで確認したOpenVPN用ユーザー名
- パスワード: ExpressVPNのサイトで確認したOpenVPN用パスワード
- OVPN ファイルをインポート: 「参照」ボタンを押し、先ほどダウンロードした「.ovpn」ファイルを選択します。
- 「次へ」をクリックし、詳細設定画面に進みます。ここで「VPN 接続が切断された場合、サーバーのゲートウェイを経由して再度接続を試みる」にチェックを入れておくと、接続の安定性が増します。
- 「完了」をクリックしてプロファイル作成を完了します。
接続の確認と自動接続設定
ネットワークインターフェイスの一覧に新しいVPNプロファイルが表示されます。これを選択し、「接続」ボタンをクリックします。ステータスが「接続済み」になれば成功です。
念のため、DSMの「パッケージセンター」から「Docker」などをインストールし、コンテナ内から`curl ifconfig.me`のようなコマンドを実行して、表示されるIPアドレスが自宅のものではなく、ExpressVPNサーバーのものに変わっていることを確認すると確実です。
さらに、このVPNプロファイルを選択した状態で「編集」をクリックし、「起動時に自動的に接続する」にチェックを入れておけば、NASが再起動した際も自動でVPNに接続されるため、常に保護された状態を維持できます。
【実践】QNAP NASにExpressVPNを設定する手順 (OpenVPN)
続いて、QNAP社のNAS(QTS)にExpressVPNを設定する手順です。基本的な流れはSynologyと似ていますが、設定する場所が異なります。
準備するもの
- ExpressVPNのアカウント(未契約の方はこちらのリンクからどうぞ)
- QNAP NAS(QTS 5.0以降を推奨)
- ExpressVPNのOpenVPN用ユーザー名とパスワード
- 接続したいサーバーの.ovpn設定ファイル
認証情報と.ovpnファイルの準備方法は、Synologyのセクションで解説した通りです。
QNAP QTSでのVPNクライアント設定
QNAPでは、「QVPN Service」という専用アプリを使ってVPNを設定します。
- QNAP QTSにログインし、「App Center」を開きます。
- 検索バーで「QVPN」と入力し、「QVPN Service」アプリをインストールします。
- インストールが完了したら、QVPN Serviceを開きます。
- 左側のメニューから「VPNクライアント」を選択し、「VPN接続の追加」ボタンをクリックします。
- 表示されたVPNサービスの一覧から「OpenVPN」を選択します。
- ファイル選択ダイアログが表示されるので、PCに保存しておいた「.ovpn」ファイルを選択します。
- インポート後、以下の情報を入力する画面が表示されます。
- プロファイル名: 自動で入力されますが、分かりやすい名前に変更可能です。
- ユーザー名: ExpressVPNのサイトで確認したOpenVPN用ユーザー名
- パスワード: ExpressVPNのサイトで確認したOpenVPN用パスワード
- 「この接続が確立した後、リモートVPNサーバーをデフォルトゲートウェイとして使用する」というオプションに必ずチェックを入れてください。 これにより、NASからのすべての通信がVPNトンネルを経由するようになります。
- 「作成」ボタンをクリックします。
接続と動作確認
VPNクライアントの管理画面に新しいプロファイルが追加されます。プロファイルの右側にある「接続」スイッチをクリックして接続を開始します。
接続が成功すると、ステータス、受信/送信データ量、IPアドレスなどの情報が表示されます。ここに表示されるIPアドレスが、接続先に選んだVPNサーバーのものであれば設定は完了です。
QNAPでも、NASの起動時に自動的に接続する設定が可能です。作成したプロファイルの設定から自動接続オプションを有効にしておきましょう。
ExpressVPN x NAS 活用術とワンランク上のセキュリティ対策
単にVPNを設定するだけでなく、少しの工夫でNASの利便性と安全性をさらに高めることができます。ここでは、より実践的な活用術とセキュリティ対策を紹介します。
安全なファイル共有・同期環境の構築
VPNでNASに接続している状態であれば、Synology DriveやQsyncといったファイル同期アプリケーションを、LAN内にいるときと全く同じように安全に使用できます。外部のネットワークからでも、ファイルは暗号化されたトンネルを通じて同期されるため、情報漏洩のリスクを気にする必要はありません。
友人や同僚に一時的にファイルを共有したい場合も、ポートを開けることなく、VPNアクセス用の限定的なアカウントを発行する方法がより安全です。これにより、不特定多数からのアクセスを根本的に防ぐことができます。
メディアサーバーへの安全なリモートアクセス
NASをPlexやJellyfinといったメディアサーバーとして活用している方も多いでしょう。通常、これらに外部からアクセスするにはポート開放が必要ですが、VPNを使えばその必要はありません。VPNで自宅のネットワークに入ってしまえば、あとはローカルIPアドレスを指定するだけで、まるで自宅にいるかのように安全に映画や音楽を楽しめます。
キルスイッチの重要性と代替策(独自の視点)
PCやスマートフォンのExpressVPNアプリには「ネットワークロック」というキルスイッチ機能があり、万が一VPN接続が切断された場合にインターネット通信を自動で遮断してくれます。しかし、SynologyやQNAPの標準VPNクライアント機能には、この専用キルスイッチが搭載されていません。
これは、何らかの理由でVPN接続が切れると、NASが通常のインターネット接続(非暗号化)に戻ってしまい、その間の通信が無防備になるリスクを意味します。これを防ぐための上級者向けの対策として、VPN接続を監視し、切断されたら特定の通信を停止するスクリプトを組む方法があります。また、より根本的な解決策として、ExpressVPNに対応したVPNルーター(ASUSの一部モデルなど)を導入し、ルーター自体でVPN接続を行う方法も非常に有効です。これにより、そのルーターに接続するすべてのデバイス(NASを含む)が、キルスイッチを含めたVPNの保護下に置かれます。
ExpressVPNは、その基本的な機能だけでなく、ユーザーの使い方次第で様々な応用が可能です。ExpressVPNのより詳しい機能や料金プラン、他のユーザーの評判などに興味がある方は、総合的な情報をまとめた「【2025年最新版】ExpressVPNとは?使い方・料金・評判を徹底解説!始め方ガイド」もぜひ参考にしてください。あなたのやりたいことに合わせた最適な活用法が見つかるはずです。
まとめ:ExpressVPNでNASを最強のプライベートクラウドに
この記事では、SynologyおよびQNAPのNASにExpressVPNを設定し、外部から安全にアクセスするための詳細な手順を解説しました。
ポート開放による外部アクセスがいかに危険であるか、そしてVPNがいかに堅牢なセキュリティを提供してくれるかをご理解いただけたかと思います。特にExpressVPNは、その圧倒的な速度と信頼性の高いプライバシー保護機能により、NASの性能を損なうことなく、大切なデータを守るための最良の選択肢です。
本記事で紹介した手順を参考にすれば、あなたも数十分で安全なリモートアクセス環境を構築できます。これにより、あなたのNASは単なる家庭用ストレージから、いつでもどこからでも安心してアクセスできる、まさに「自分だけのプライベートクラウド」へと進化するでしょう。
まだVPNを導入していない方は、この機会にぜひ検討してみてください。安全と利便性を両立した快適なデジタルライフがあなたを待っています。
