近年、東京都では毎年フードトラック(キッチンカー・移動販売車)が増加傾向にあります。
飲食店開業の選択肢の1つとして、今までもフードトラック(キッチンカー・移動販売車)は存在していましたが、選択肢として選ぶ人はごく少数でした。
しかし、前述のとおり、東京都で営業許可を取得するフードトラックの数は増加傾向にあります。
その背景については、フードトラックの将来性については別記事「毎年右肩上がりに増えている「フードトラック(キッチンカー・移動販売車)」の現状と将来性を考える」でまとめていますので、あわせてご覧いただくとして、
SNSやインターネット検索の普及によって、飲食店の集客において必ずしも店舗家賃が高い立地に出店する必要がなくなってきていること、フードトラックの一番の課題であった出店場所探しをサポートするwebサービスが登場してきている、等々、
このフードトラックにおいて、ポジティブな状況を考慮すると、今後の飲食店開業の選択肢として、フードトラックはとても魅力的な選択肢となり得ると思っています。
この記事では、飲食店開業におけるフードトラックのメリット、デメリットをまとめておきたいと思います。
フードトラックのメリット
①開業の初期費用が固定店舗に比べて安く済む(廃業時も安く済む)
個人経営の小規模な固定店舗の場合でも、開業の初期費用として1000万円前後かかるのが当たり前ですが、フードトラックの場合は車の大きさや厨房設備にもよりますが150万円〜500万円程度の費用で済みます。
廃業時も固定店舗の場合、居抜きの受け渡しが認められない場合は内装を現状復帰しないといけないので100万円、200万円といった費用がかかります。それに比べて、フードトラックは中古車として売却もしやすいですし、廃車にするにも大した費用はかかりません。
②店舗家賃など毎月かかるランニングコストも固定店舗に比べて安く済む
フードトラックは、駐車場代(場所によりますが1万円〜数万円)、仕込み場所が必要な場合は店舗家賃が発生しますが、集客が必要なく立地は悪くても問題ないので安めの家賃で済む、など、固定店舗の店舗家賃の金額に比べると、かなり大きなメリットがあります。
固定店舗と違って、フードトラックの出店費用が必要になりますが、基本的には出店費用を払っても儲かる(と思う)場所にしか出店しないと思うので、店舗家賃を売上に連動する変動費として捉えることができる点も大きなメリットといえるでしょう。
③基本はテイクアウトのスタイルであるため人件費を抑えることができる
フードトラックは、車内で調理→窓から販売のテイクアウトのスタイルであるため、必要最低限の人手で営業できるため人件費を抑えやすいビジネスモデルです。
オーナー自ら1人で営業しているフードトラックも多いです。
④人がいる場所に移動して出店できる
これは固定店舗には真似ができないメリットであり、オフィス街の中心エリア、音楽フェスやマルシェなどのイベント、など、人が集まる場所に出張ができる点はフードトラックの一番のメリットといえるでしょう。
⑤ フードトラックは席数制限がないので売上上限がない(製造量の限界に応じた売上上限はある)
例えば、1人営業で1日のランチタイムに100食販売できるかどうか。
固定店舗の場合、オフィス街の中心で人が溢れる最高の立地でテイクアウト専門店でない限りはなかなか実現は難しいでしょう。
テイクアウト専門店でない場合は1人では到底接客が間に合わないですし、立地が悪ければテイクアウト専門店でランチタイムに100食販売するのは非常に厳しいでしょう。
フードトラックなら可能性は十分にあると思えます。
フードトラックは基本テイクアウトスタイルなため、1人営業は問題ない。
人が集まる立地に出店ができさえすれば、1人営業でランチタイムに100食販売することは十分可能だと思います。
要は何が言いたいかというと、最大10席の固定店舗の場合、席数に限界があるので、1日に100食200食を販売することは非現実的で、現実的には1日10食20食30食といった数字が売上上限となります。
それに比べて、フードトラックはもちろん車内の設備的に製造能力の限界はありますが、席数という概念が必要ないので、1日100食200食を販売することも現実的。
つまり、フードトラックは売上の上限(限界)が固定店舗よりもなく、ハイリターンを狙える可能性が大きいということです。
⑥外的環境の変化に強い
固定店舗をもたず、移動ができる点は、変化に強いという大きなメリットがあります。
例えば、東京都を拠点に営業している場合に、神奈川県のみなとみらいエリアに来年カジノができる!他の商業施設も次々作られて、今後5年間は激アツなエリアになる!ということになったとしたら、移動が容易なフードトラックであれば拠点を神奈川県に移すといったことも簡単にできます。
固定店舗の場合は、移転費用が大きな金額となるので非常に難しいでしょう。
これは様々な変化にも対応できて、上記のようなエリアの人の流れにも対応しやすいですし、他にも、料理のブームに対応しやすい点もあります。
例えば、パエリア専門のフードトラックとして営業していたけど、最近はパエリアの人気が下火になってきていて、餃子が異常な人気になってブームになっている。そんな時は、思い切って餃子専門のフードトラックにリニューアルしてブームに乗るといったことも十分現実的です。
固定店舗であれば、リニューアルしたとしても同じ立地で集客はできるのか、売上が成り立つのか、といった様々な問題が立ちはだかりますが、フードトラックであれば、餃子がバンバン売れるエリア、出店場所に出店するようにすればいいだけ。
様々なことにおいて、変化がとにかく早い現代において、変化に強いビジネスモデルというのは大きなメリットになります。
フードトラックのデメリット
①出店場所が見つからない、競争が激しい
フードトラックと出店スペースのマッチングサービスが登場してきてはいますが、現状はまだまだ少ない出店場所を、毎年増加している多くのフードトラックが競争してパイを取り合っているような状況です。
人がたくさん集まって、たくさん売れる見込みがある出店場所は当然人気になるので、出店費用の高騰や、出店審査のハードルが高かったり、など、簡単に良い出店場所が見つかるなんてことはなかなかないでしょう。
②販売品目、調理など自治体、保健所の制約が多い
フードトラックは、移動できるメリットの反面、制約が多いです。
例えば、車の大きさや厨房設備、保健所に申請した内容によって、販売できるメニューが1品のみと限られていたり、車内での調理は盛り付け、小分け、簡単な加熱調理のみに限定されていたり、と様々な制約を受けます。
固定店舗に比べると、車ですので物理的なスペースが圧倒的に少ないので、食材や備品の保管に別で倉庫が必要という状況も容易に発生します。
③提供できるメニュー、できることが限られる
通常の飲食店に比べて、②の制約や、物理的なスペースなどの都合で、フードトラックで提供できるメニューやできることはかなり制限されてしまいます。
通常の飲食店であれば、季節に応じてメニューを変えたり、新しいメニューを追加することも難なくできますが、フードトラックの場合、提供できるメニュー数が限られていたり、食材保管できるスペースが少ないので容易に新しいメニューを追加できなかったりと、自由度があまりない点も忘れてはいけません。
④仕込み場所が必要になると家賃など費用が増える
②で前述のとおり、フードトラックの車内での調理は、盛り付け、小分け、簡単な加熱調理のみに限定されており、営業許可を受ける自治体、保健所によって判断は異なってくるのですが、食材をカットするなどの調理は車内では不可で別に仕込み場所を用意しないといけないケースも多々あります。(簡単な調理であれば車内でOKされるケースもあります)
別に仕込み場所を用意するというのは、飲食店営業許可を受けたキッチンスペースで仕込み調理しないといけないということですので、自分でスペースを用意する場合は物件を賃貸する必要があったり、場合によっては、他の飲食店の空き時間を利用させてもらったり、複数のフードトラック事業者でシェアキッチンを借りるケースもあるそうです。
仕込み場所としては、集客が必要な通常の飲食店よりは立地が悪くて家賃が安い物件で問題ないですが、飲食店営業許可を受ける必要があるので厨房設備を用意したり、物件を賃貸したり、毎月の家賃が必要になるなど、それなりの費用が増える可能性があります。
フードトラックを開業したい人向けの参考情報
フードトラックを開業したい人向けの参考情報をまとめておきます。
基本的な流れは、固定店舗の飲食店開業とあまり変わりませんが、フードトラック特有の制限があったりするので、しっかりと保健所に確認をとるなど必要です。
フードトラック開業の流れや概要を知る
以下リンクは、東京都の内容になるので、東京都以外で開業予定の場合は各自治体の保健所に確認必須です。(各自治体によって判断が違うことが多々あります)
「新たに食品に関する営業を始められる皆さんへ〜自動車関係営業許可申請等の手引き〜(PDF)」
参考webサイト
書籍で情報収集
フードトラック専門ではないですが、飲食店開業全般でオススメ本まとめの記事です。
「10年前の飲食店開業前の自分に教えてあげたい。初めて飲食店、カフェ開業するなら読んでおきたい本9冊」
フードトラックとケータリングでは、分野が違いますが、出張販売という面では共通する点も多いので、こちらの私が監修したケータリング開業本も参考になるかと思います。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
フードトラック開業を考えている方、情報を収集している方の参考になれば幸いです。
以上、「飲食店開業の魅力的な新しい選択肢「フードトラック(キッチンカー・移動販売車)」のメリット、デメリット」でした!
それではまた!